23『その名は魔王軍』
久留里はボーダー柄のキャミソールにゆるいパンツで頭にはキャップという、ギャルっぽい女子高生の夏休みというようなファッションだ。いつもモノトーン調ファッションな真希とくらべて色使いが派手で目がチカチカする。
久留里は食べ途中の弁当を覗き込んできた。
「真希ちゃんの手作りお弁当ですかぁ? なになに? ユッピーと真希ちゃんそういう関係?」
「面白い話はなにもないぞ。で、なんかニュースがあるんじゃないのか?」
「そうそう! それで来たんだった! もう大事件でね!」
久留里はスマホを取り出して、画面を俺と真希の方に向けた。
「わ〜い! 私が投稿した写真がめっちゃバズっちゃいましたー! フォロワーも爆増でーす!」
ああ……むっちゃどうでもいい……。
俺は君がいない間の回復係をどうしようかと頭を悩ませてるっていうのに……ん?
久留里が見せてきたバズってるらしい写真は……西新宿ギルドメンバーの写真だった。
中央の久留里が一歩前に出ていて、左右には五郎と真希、俺は久留里の後ろに立っている。
「この前、外苑前ダンジョンを出たあとすぐに撮ったやつ! ひとりひとりの写真も上げてるよー!」
「おいおい、一応みんなの許可撮ってからアップしてくれよ……まあ、別にいいけどさ」
「ユッピーが作ってくれた装備がヤバすぎって盛り上がってるんだよー! ほら見て見て!」
久留里が俺の横にきて身体を押し付けてくる。
俺は一緒に画像へのコメントを読んでみた。
@neko_love2007:『え、くるりんの服ガチで悪魔すぎなんだけど!?』
@ramen_boys:『黒髪のお姉さんの弓、めっちゃ怖えぇぇぇ!』
@minmin2525:『魔界からやってきた人たちだ』
なるほど。ハズレ穴で作った装備がうけたのか。
どこにも同じのは存在しないし、かなり禍々しくて呪われた装備っぽいからインパクトはあるもんな。
「ネットではねえ、西新宿ギルドのこと“魔王軍”って呼ばれはじめてるよ。みんな黒っぽくてちょっと怖い感じだし。ケルベロスのローブを着たユッピーが魔王様って言われてるのめっちゃウケる」
「魔王軍……魔王様……か」
そうなのか……こっちでもそうなるのか。
魔王専用スキルを持っているのだから魔王っぽくなるんだろうなとは思っていたが、しかしこういう形で魔王様と呼ばれることになるのは想定外だった。
「あ〜せっかく注目されてるのに……土日か平日ほんのちょっとしかダンジョンに行けなくなるのが悔しすぎる! うううう、いまがチャンスなのに!」
こればっかりはもうどうしようもなかった。
まあ回復魔法が使える探窟家はどこも人材不足っぽいし、うちは久留里がいるだけマシなのかもしれない。
彼女のおかげでクズ魔石を換金したりハズレ穴で装備を作れたんだしな。
そして九月になった事務所では俺と五郎と真希が、授業が終わった久留里が来るのを待っていた。
今日は全員が揃い次第、今後の運営方針を決める予定だ。
午後3時過ぎ、久留里がやってきた。
夏服ブレザー姿の久留里は、みんなの前まで歩いてくると両手でピースをした。
「今居久留里! 高校……退学してきましたー!」




