22『自己流』
外苑前“ハズレ穴”ダンジョンから外に帰ってきた我ら西新宿ギルドは、8月中はもうダンジョンには潜らないことにした。
休息は必要だ、無理は絶対に良くないからな。
そして今日も事務所には俺と真希だけがいる。
戻ってきてからの昼食は真希と同じ弁当を食べていた。
今日の弁当の主食は「トウモロコシご飯のおにぎり」で、おかずは「鶏むね肉の梅しそロール」「なすとピーマンの味噌炒め」「オクラとミニトマトのおひたし」「枝豆いり卵焼き」だった。
2個のおにぎりはラップに包まれ、おかずは少量づつが弁当箱にみっしりと詰められている。
栄養学なんて知らないけれどバランスが良いように思えたし、メニューも毎日違っていてそれが楽しかった。
1ヶ月ちょっと前までは窓の外に見える向かいのビルの会社にいたんだよな。
あの頃は、こんなにウマいものが昼に食べられるなんて考えもしなかったよ。
俺はいま……転職して良かったと、しみじみ思っている……。
「あ〜、今日もおいしかったよ。料理は誰かから教わったのか?」
「別に誰からも……ただの自己流よ」
「自己流か! 自己流といえば弓の使い方も自分でマスター?」
「ダンジョンに入ったら勝手に出来るようになってたの。きっと私の《瞬射連撃》のスキルに弓の扱い方が含まれているんでしょうね」
「なるほどね」
ダンジョン内は“ゲーム的な世界”だが、職業を選ぶというような概念はない。
とにもかくにも自分に与えられたスキルがすべてだった。
レベルアップによって各ステータスが上がっていくが、それもスキルに関連したものが特に上がっていく。
西新宿ギルドならば、五郎は筋力と耐久、真希は器用さ、久留里は魔力が上がりやすい。
外苑前ダンジョンから戻ってきた俺たちはステータスをすぐに確認している。
◆奥野勇人
Lv.9→15
筋力:16→22 耐久:15→21 魔力:29→44 敏捷:13→18 器用:15→21
スキル
《魔獣創造(★★★★★)》《妖器賜与(★★★★★)》《闇築因子(★★★★★)》《幻界収蔵(★★★★★)》
◆黒波五郎
Lv.42→44
筋力:67 耐久:78 魔力:25 敏捷:40 器用:33
スキル《剛力解放(★★★★)》
◆蛇澤真希
Lv.21→24
筋力:34 耐久:26 魔力:14 敏捷:38 器用:63
スキル《千里眼(★★)》《瞬射連撃(★★★)》。
◆今居久留里
Lv.13→17
筋力:12 耐久:16 魔力:32 敏捷:21 器用:24
スキル《癒昇恩寵(★★★)》
俺は他の三人とくらべてバランスよく数値が上昇している。
そして魔力に関してはすでにギルド内で1位だ……しかしまだ“ひらめき”を得ていないので意味がない。
今後のことを考えると攻撃には参加しない俺が回復魔法の“ひらめき”を得るのがベストではあった……久留里は学校がはじまるとダンジョンに行ける日が限られてくるからな。
「たいへん! たいへん! 大ニュース!」
バンっと事務所のドアを勢いよく開けて、その久留里が息を切らして事務所に入ってきた。




