20『魔王のローブ』
「《闇築因子》!」
俺は土から建造物を出す《闇築因子》でケルベロスを囲む壁を作った。
突然の出来事に対処できなくて閉じ込められてしまったケルベロスの遠吠えが聞こえる。
「これで狼は動けない! どうする!? いまのうちに逃げるか!?」
俺の質問に、回復した五郎は「やらせろ!」と叫び、真希は首を横に降ってから俺を見つめた。
「勇人の新しい装備品、持って帰りましょう」
「よし、じゃあもういっちょ!《闇築因子》!」
俺は今度は土の階段を出した。
ケルベロスを囲んでいる壁の真上で終わるその階段を五郎と真希が猛ダッシュで駆け上がっていく。
俺もふたりのあとに続いた。
「《瞬射連撃》!」
真希は階段の上で弓を構え、壁の内側から外に出ようとしていたケルベロスの計6個の目に次々と魔素の矢を命中させる。
ケルベロスは大気がビリビリと震えるほどの叫び声をあげた。
「くたばれぇぇぇ! 《剛力解放》!」
ケルベロスの真上から五郎が飛び降りた。
五郎は渾身の力をスキルに込め、自分の体重も全部乗せ、ケルベロスの背中に剣を突き刺す。
ケルベロスはドスンと大きな音をたてて倒れ、そのまま動かなくなった。
犬でも狼でもどっちでもいいけど、檻に入れてしまえばなんとかなる……俺たちの勝利だ。
「ふぅ……尻尾に吹っ飛ばされた時に死んだと思ったぜ。この新しい鎧じゃなかったらヤバかったかも知れねぇ」
「ユッピーもはやく作ろうよ! 武器と防具どっちにするの?」
「う〜ん、そうだな。いま着てるこのローブを新しくしたいかな」
俺はケルベロスを囲んでいた壁と階段を地面に戻し、ついさっき息絶えたばかりの巨体に《妖器賜与》を使った。
ケルベロスの体が淡い光の粒子になり、そして集まってローブの形になった。
完成したローブは丈が長く、厚手で真っ黒だった。
表面はケルベロスの太い毛で覆われ、美しい光沢を放っている。
それはもう“防具”というより、“獣そのもの”をまとっているようだった。
誰もが驚くのは、フードと両肩だろう。
フードの表にはケルベロスの目や牙があり、かぶるとケルベロスの口の中に俺の顔があるような感じになっている。
右肩と左肩にもケルベロスの顔があり、合計三個の頭がついた……まさにケルベロスのローブだった。
「すっご! ユッピーめっちゃ強そう! 悪そう! ラスボスっぽい!」
うん、俺も悪そうだと思った。
それは悪の大幹部……いや、魔王にふさわしいようなローブだった。
五郎のドラゴンの骨から作った狂戦士風な黒い剣と黒い鎧。
真希の古代樹モンスターから作ったグロテスクな弓。
久留里のユーレイの布から作った小悪魔っぽいワンピース。
……そして俺のケルベロスのローブ。
これらが”ハズレ穴“への挑戦で手に入れた装備品となった。
全体的に悪っぽい気もするけど、予想以上の出来だ。
「じゃあ帰ろうか。帰路も一泊あるからまだ長いぞ」
────そしてダンジョンを出てスマホをチェックしたら、三法師雪奈からのメッセージが何通も入っていた……どうせ書いてあることは見なくてもわかるけど。




