19『ケルベロス戦』
15階層まで来た。
ひとつ上の14階層はかなり細い通路も通らされたけれど、この15階層は何もない広いフロアだった……節目の数字だし、いかにもボスモンスターが出そうな雰囲気だけど……さて。
12階層より下層は我々しか到着していないので、他のギルドが倒したモンスターの死骸を素材としていただくというわけにはいかない。
自然死したモンスターの死骸でもあればラッキーだな、と話していると真希が険しい顔になった。
「かなり遠く……暗くて《千里眼》でも限界があるけど、六つの光が……目かも」
五郎が一歩前に出て剣を構えた。
「六つの光? 三体のモンスターか?」
いや違う……六つの光は俺にも見えはじめたが、それは三体のモンスターではなく三つの頭を持つを一体のデカい犬というか狼だった。
そいつがこっちに向かって走ってきている。
「ケルベロス……数年前にフランスのギルドが交戦してる記録があるわね」
「それで、そのギルドは勝てたのか?」
「詳しく聞きたい? エグいわよ、グロいわよ」
「エグいのか……じゃあやめときます」
五郎は剣を構えたまま、ゆっくりとケルベロスに向かって歩く。
「へっ、この剣と鎧を試すには絶好の相手だ! 久留里、やられたら回復頼むぞ!」
「りょかい!」
「もしヤバそうだったら、すぐに撤退しよう! 戦闘体勢!」
久留里は両手を前に出して、いつでも五郎に回復魔法が放てる体勢をとった。
真希は弓を構えて弦を引く。魔素が集まり矢の形になる。
「狼が射程距離に入った……《瞬射連撃》!」
玉虫色の矢が光の尾を引きながら一直線に飛んでいく。しかも何本も連射だ。
いくつかの矢がケルベロスに当たったが致命傷にはならず止まらない。
ついに五郎の前まできたケルベロスは、狼というにはあまりに大きくカバくらいのサイズだった。
太い体毛は逆立ち、三つの顔は大きく口を開けて、長い舌と鋭い牙が見える。
ケルベロスが太い爪がついた前脚で、振り払うように五郎を攻撃する。
ガキィィィン! その爪を両手剣で受け止めた音が響く。
「ぐおぉぉぉぉ! 《剛力解放》!」
五郎の剣がケルベロスを押し戻した。すごいぞ……何倍もの大きさの相手に力負けしていない。
しかし、よろめいたケルベロスの首をはねようと剣を振りかぶったその直後、ケルベロスの尻尾が五郎を襲った。
ムチのようにしなる尻尾で五郎は飛ばされる。
久留里は倒れている五郎に回復魔法を放ち、真希は牽制するために矢を連射した。
ケルベロスはいったん後退して、こちらの隙を見計らっている。
「私の腕もそろそろ限界かも……もうあまり打てないと思う」
どうする? また《魔獣創造》でゴーレムを出して踏み潰すか?
たけど、このフロアは中野Cダンジョンほど天井が高くないぞ。
なにか良い方法が…………そうだ!




