18『夏の怪談』
「《闇築因子》!」
俺の4つのスキルの内のひとつ、様々な構造物などを地中から形成するスキルだ。
これを使って13階層に、四角い建造物の野営地を作った。
小さな空気孔以外はまた《闇築因子》を使って埋めてしまったのでモンスターは入ってこれない。
《幻界収蔵》に収納しておいた食料を出した。
中央に置かれたロウソクの灯りによって、車座になって座りながら食事を取る我々の影がまるでユーレイのように壁にユラユラと映っていた。
「くるりんの夏の怪談はじまるよ〜!」
全員が寝袋に潜り込むと、久留里が訳のわからないことを言いはじめた。
「あのね、これは私の友達のおじさんが夜の山道を車で走ってたときの話なんだけどぉ……」
「やめろっ! くだらねぇ……修学旅行じゃねぇんだぞ!」
俺のとなりで横になっている五郎は怒鳴り、久留里に背を向けるようにゴロンと寝返った。
しかし久留里はやめない。
「あれれ? まさかこういうの苦手? それでぇ、そこが、ちょっと曰くつきの場所で……何かを叩く音が後ろからしたらしいの。でね、バックミラーを見てみるとぉ……」
「ややや! やめろって言ってんだろ!」
えええ? マジで苦手なのか?
そのあともしばらく久留里の怪談は続き、となりからは小声で「聞こえない聞こえない……何も聞こえない……」とブツブツ声がした。
その後、外で“サラサラ”と布が擦れるような音が一度だけ聞こえた気がしたが……誰もそれには触れなかった。
起きてから軽い朝食をとって野営地を出た我々は、白無垢のような布を引きずる女の影に追いかけ回された。
エクトプラズム生命体とでもいうのか……ようするにユーレイっぽいやつだ。
「馬鹿野郎! お前があんな話するから本当に出たじゃねえか!」
「ご、ごめんなさ〜い!」
「実態がないからか俺の剣も真希の弓も手応えがねえ! こういう霊体ってのは“浄化”とか“癒し”が効くんだよ! お前の回復魔法は光属性なんだから効くかもしれねぇぞ、やってみろ!」
「りょ! ライトキュア! 成仏してー!」
久留里の《癒昇恩寵》のスキルによって増幅されている癒しの光がユーレイに降り注ぐ。
そしてユーレイは白い布だけを残して消えた。
「ユッピー! この布で私の服作ってー!」
「よし、わかった」
「バズりそうな、可愛いやつお願いねー!」
出来上がった久留里の服は黒を基調にしたフリルたっぷりのワンピースだった。
透け感のある袖に、首元には十字架リボン。
スカートは赤の裏地がちらりと見えて、背中にはレースの小さな黒翼がある。
そのなんとなく悪魔っぽい服を着てみた久留里は、気に入ったようだ。
「う〜ん、ゴス系? ちょっとぴえんとか地雷系も入ってる感じ? ツインテールにしたら可愛いかも! ユッピーありがとー!」
「よし、これでとりあえず全員の装備類はできた。以前のよりは確実にアップグレードされてると思う」
「あれ? ユッピー、自分の装備だけまだじゃない?」
「あっ、そうか! 俺はずっと魔導師っぽい黒のローブのままだ」
「勇人……紺屋の白袴ね。もう少し潜りましょう」
全二泊の予定だったから、あと2階層くらいならばいけそうだな。
俺も自分用のがなにか作れたらいいけど……。
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