17『外苑前“ハズレ穴”ダンジョン』
神宮球場や新国立競技場の近くに出現した外苑前ダンジョンは、都内でも有名な“ハズレ穴”だ。
ダンジョンのサイズと比例する巨石は3階建ビルほどの大きさで、遠くからでも目立った。
《幻界収蔵》に水や食料を収納した後、地下1階へと続く階段を降りながら先頭を歩く五郎が話しかけてきた。
「社長さんよ、このダンジョンの到達記録は11階層だが、どのくらいまで潜るつもりだ?」
「行けるところまで行きたい……ただ、ダンジョン内は時計も使えないし太陽もないから昼夜リズムが崩壊しやすい。さらにモンスターを警戒するストレスにも常に晒されている。往復で最大2泊までって考えてる」
鍾乳洞タイプの外苑前ダンジョンはひとつのフロアがかなり広かった。
……そういえば、俺はまだ迷路のようなダンジョンは経験してないんだな。
俺たちは出現する雑魚モンスターを倒しつつ階段を見つけては下のフロアへと降りていった。
たしかに話に聞いていた通りどのフロアにもクズ魔石すらなく、中型モンスターの死骸の一部が残されていた……だけどもっと強力なモンスターの死骸が欲しい。
「なんじゃ、こりゃ!?」
「黒い骨……ね。あくまで大きさだけ見れば、ドラゴン系かも」
博物館で見たクジラの骨と似ているかもしれないそれは、9階層にあった。
巨大な生物の胴体部分のものと思われる骨が二体分、そのまま残されている。
「これはいいかもしれない。じゃあこの骨を素材に……そうだな、剣と鎧がかなり傷だらけなのが気になってた五郎のを作ってみよう」
《妖器賜与》
二体分の骨は光る粒子となってから、黒い両手剣と黒い鎧に変化した。
五郎はさっそく鎧を身につけ、剣を握った。
「おおっ! なんかイカついな! それと見た目よりはずっと軽いぞ!」
《妖器賜与》で武器や防具を作るときは頭の中で具体的にデザインをイメージするというよりは、AIのプロンプトを入力する感覚に近い。
「両手剣 無骨なデザイン 鈍く光る黒鉄 タフネス重視」や「プレートアーマー 肩のシルエット強調 オーバースペック 動きやすさ」のような感じだ。
なので出来上がりはどうしてもガチャ的な要素がある。
五郎のために作った剣と鎧がどれほどの強さで、どんな特殊効果があるのかはまだ不明だけど、見た目は黒の狂剣士というか暗黒騎士というか……なんだか全身真っ黒で禍々しいな。
他のギルドによる到達記録がある11階層には、そのギルドが倒したのだろうか幹に恐ろしい顔がついた古代樹系モンスターが立ち枯れたまま残っていた。
木のしなりは弓に最適だろうと考え、真希の弓を新調することに決めた。
真希はできあがったロングボウを構え、とりあえず感触を確かめようと弦を引いた瞬間、何かが“生まれた”ような音がする。
「え……なにこれ……矢はセットしてないのに……」
玉虫色の光が一点に凝縮し、見たことのない矢が出現していた
そして弦を引いた手を離すと、その矢はピューンと風を切ってまっすぐ飛んで行った。
いちいち矢を用意しなくても魔素でできた矢が使えるのか、これは大当たりじゃないか?
新しい弓を見つめる真希の顔も、どこか嬉しそうだった。
喜んでいるみたいだから別にいいんだけど、弓の両端には飢えた小鬼の顔が彫り込まれ、弓の本体にはグロテスクな装飾がびっしりと施されている。
やっぱり魔王が配下に武具を授けるためのスキルだから、そうなってしまうのだろうか?




