15『不完全な霧』
そりゃ「こいつは何を言ってるんだ?」となるだろう。
わざわざ好き好んで“ハズレ穴”にいくヤツなんていないんだから。
「なぜハズレ穴と呼ばれているダンジョンには魔石がないのか? 最近の研究では大型モンスターは霧のように消えて数ヶ月後から数年後に魔石になると言われている。しかしハズレ穴では探窟家に倒されたり自然死した大型モンスターが死骸を一部残す……霧が不完全なせいで魔石にならない」
真希はプシュっと音を立てて缶のコーラを開けた。
そしてゴクリと一口だけ飲むと、いつもの気だるげな表情でつぶやくように言った。
「だからモンスターを研究している学者はハズレ穴にいくのよね」
「そうだ、死骸が消えずに残ってるからな。しかし鍾乳洞タイプでアイテムボックスがなく魔石もないそんなダンジョンは、我らのような探窟家にとっては罰ゲームでしかない」
「でも、勇人はそんなハズレ穴に行きたい……と」
「我々はレア装備が欲しい……だからハズレ穴で作ろうと思うんだ」
「作る…………あっ!」
「なるほどな」
久留里は頭の上に「?」が出たままだが、中野Cダンジョンに一緒に入った五郎と真希は気がついたようだ。
「ハズレ穴には大型モンスターの死骸が残ってる。そして俺にはモンスターを素材にして装備品を作ることができる《妖器賜与》のスキルがある! ハズレ穴の死骸から今持ってるモノより質の高い装備を作るんだよ……俺たちにとってハズレ穴は素晴らしい材料倉庫だ!」
五郎はぷっと吹き出した。
「クズ魔石の次はハズレ穴か……面白いことばかり考えやがるな。俺は社長の案に賛成だぜ。最強に近づけるんなら死骸あさりでもなんでもするさ……真希と久留里は?」
「私も賛成する。高く売れる大きな魔石を目指して深く潜りたいのなら、雑魚をチマチマ倒してゆっくりレベル上げるより、装備品でパーティーを強くしてボスクラスを倒して一気にレベル上げて強くなるのが一番効率がいいと思うわ」
「う〜ん、よくわからないけど、そこなら誰も持ってないドレスとか杖とか手に入るってこと? それだったらいいかも〜! 目立てるしっ!」
3人の目指すところは違うが全員俺の案に賛成してくれたので、次に挑むダンジョンは“ハズレ穴”に決定した。
堅実がモットーの俺は、可能な限りの準備をしていきたい。
──しかし今日も暑いな、俺もコーラ飲むか。




