14『運営方針・2』
それからはクズ魔石回収の日々がスタートした。
作業の流れはお台場Bダンジョンのときとほぼ同じだ。
魔石の結晶体が取り尽くされて権利者への支払い割合が低くなっているダンジョンのリストを近場から回っていった。
──集めては売り、また集めては売りを繰り返し、あっという間に3週間が経過した。昼間はダンジョンに入ってばっかりで今年はあまり日焼けはしなかった。
「みんなお疲れ様。ギルドの認可ライセンス料が上がっても耐えられ、しばらく事務所の家賃も心配しなくていいくらいの資金はプールできた。もちろんみんなにもかなりの臨時報酬は出せる。それで、クズ魔石集めはこれくらいでいったん停止しようと思うんだ」
「つーことは、これからは探窟家らしくダンジョンの深部を目指すってわけだな。岩を殴るのにも飽き飽きしてきたところだ」
「ユッピ-! もう夏休みは2週間ちょっとしか残ってないし! それまでに有名になれる!? フォロワー爆増する?」
「どうすれば探窟家として有名になれると久留里は思う?」
俺から質問された久留里はスマホを置いて「う〜ん」と考えはじめた。
「魔法もスキルもダンジョンの中でしか使えないのに、ダンジョンってカメラもスマホも動かなくなっちゃうから使ってるところ見せられないんだよねー。モンスターは死んじゃうと霧みたいに消えちゃって、倒した証拠が残らないし」
その通りだ。
探窟家の凄さというのは、それを目撃した探窟家にしかわからなかった。
念写スキルを持った“記録員”を同行させるという方法もあるが、それはダンジョンの階層更新を目指すときに雇うものだ。
「だからぁ、わかりやすくダンジョンの外でも話題になるためには、イケてるレア装備を持って帰るのが一番なのかなぁ? 真希ちゃんはどう思うー?」
「私は別に有名にはなりたくないけど……そうかもしれないわね。でもレア装備はどこも取り尽くされていて相当に深い階層にしかないし、そこまでたどり着くには西新宿ギルドの戦力じゃまだ厳しいわ」
「人生オワタ……詰んだ……」
久留里の承認欲求はどうでもよかったが、しかし彼女が有名になるためにダンジョンで手に入れたいものは……俺が考えていた今後の方針と一致していた。
「安心して深い階層に潜るために戦力を上げたいと俺は思ってる。現在のギルドメンバーの武器や防具はコモンではないかもしれないがアンコモンという程度でレアじゃない……もしレアな装備があればかなり戦力アップになるだろう」
五郎は顎髭を触りながら、装備品が置かれているスチールラックを眺めた。
装備品はギルドの資産なので彼は大手ギルドを辞めたときにすべて返却していた。だから西新宿ギルドにあるものは独立してから手に入れたものだけだった。
「だがレア装備が見つかる階層の強モンスターと戦えるレア装備がここにはない。「服屋に服を買いに行く服がない」って状況だな。オークションにも滅多にでねぇしなぁ」
「そこで提案だ。魔石もアイテムボックスもないのに強力なモンスターばかり出るから探窟家からは「ハズレ穴」と呼ばれているダンジョン……俺はそこに行きたいと思ってる」
──全員の頭の上に「?」が見えた。
毎日2話(朝と午後に1話づつ)更新予定です。
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