12『ムクれる雪奈』
「ゆ……雪奈……なんでここに?」
「自分の活動をアピールして異世界を目指す仲間を集めるためにときどきテレビに出てるの。その収録が終わって局を出たら西新宿ギルドの車が見えたのよ。それより、どうして最近メッセージを無視するの?」
「そりゃ、連絡先交換してから「一緒に異世界目指そうよ!」って毎日毎日誘ってくるからだよ! 違う話をしていたと思ってたら結局は異世界の話になったりするし。どこの青汁のCMだよ!」
「だ……だってぇ……」
白いノースリーブにカーキ色のフレアスカートという、装いこそ夏の大人という感じの雪奈だが、その表情は子供のようにムクれていた。
俺たちの会話が止まると目の前にニョキっと金髪の後頭部が現れた。
久留里が割り込んできたのだ。
「三法師雪奈さんですよね! 今居久留里です! アカウント名“くるりん”で活動してまーす!」
「え? はい……はじめまして」
「雪奈さんにすっごい憧れてるんです! 一緒に写真撮ってインスタにアップしてもいいですか〜!?」
おそらく憧れてるのは彼女の強さよりフォロワー数なんだろうとは思うが……快諾した雪奈は久留里の自撮りに一緒におさまった。
雪奈は最高の笑顔だ。写真集を何冊も出している彼女は、さっきまでのムクれた表情から朗らかなスマイルに切り替えるのはお手のものらしい。
「あの、そろそろいいかな? ダンジョンに入るから」
「はーい!」
「そんなわけで雪奈、話はまた今度ということで」
「ううう……勇人くん……」
雪奈はさみしい背中を見せながらどこかへ消え、俺たちはお台場Bダンジョンに入った。
彼女には悪いがこっちも仕事なんだ。
ダンジョンには2タイプある。
ひとつは迷宮という感じの人工的なダンジョンでアイテムボックスがあり、もうひとつは鍾乳洞っぽい自然が作ったようなダンジョンで魔石の採掘ができる。
そしてお台場Bダンジョンは後者のタイプだった。
採掘見込み量と出現するモンスターの強さのバランスを考慮し、今回は地下3階でクズ魔石を集めることになった。
「うぁりぁぁぁぁ!!!」
ガキィィィィン!
大岩を五郎が巨大な鉄のハンマーでぶっ叩く音がダンジョン内に響き渡り、火花がはじける。
魔石が微量に含まれていると思われる大岩が、抱き抱えて運べるくらいのサイズに粉砕されていった。
「はあ……はあ……回復頼む」
「はいは〜い! えいっ!」
消耗した五郎の体力は久留里が魔法で回復させた。
「いた……40メートル先……」
矢が空気を切り裂いて一直線に飛び、その直後に遠くから悲鳴のような鳴き声が聞こえる。
真希にはモンスターの相手をしてもらった。この地下3階にはコウモリタイプのモンスターが出てきたが、彼女の弓はそいつらを一撃で仕留めていった。
そして俺のスキルの出番だ。
まずは《魔獣創造》で身長2メートルくらいのゴーレムを作った。
中野Cダンジョンのときのような巨大ゴーレムを作るとヘトヘトになるが、この程度のサイズなら問題はない。
そのあとは《幻界収蔵》でフラフープくらいの大きさの真っ黒な穴を空中に出す。
ゴーレムに粉砕されたクズ魔石を集めさせ、その穴に放り込ませた。
「ユッピー! もうダメ〜! 魔力残ってないから回復できないよ〜!」
「よし、じゃあ今日はこれで撤収だ!」
さて、集めたクズ魔石がどのくらいの買取額になるのか──楽しみだな。
毎日2話(朝と午後に1話づつ)更新予定です。
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