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第9こん 「バツイチ狐」と「デレ」と「ヤン」

お掘りの野鯉に情熱的に唇を奪われてから数日が経ち、俺は心の平穏を取り戻しつつあった。

何故なら「彼女」からの当たりが和らいだからだ。

許して貰えたのかな?

そして「彼女」について分かった事がいくつかある。


一つ目は「彼女」の『白城曜子(しろじろようこ)』と言う名前は偽名である事。

どうやらこちらの世界に来る際に俺の姉さんから付けて貰った名前との事だ。

狐に「ようこ」って名前を付けるあたりセンスが微妙だぜ姉貴よ…。

本当の名前までは教えてくれなかったが、「彼女」の事が知れて嬉しい。

ニつ目は「彼女」は6年間という期限付きでこちらの世界に来ていると言う事。

所謂(いわゆる)婿探しの為に里の許可を得てこちらに来ているそうだ。

「彼女」曰く、俺が幼い頃に見た『虹と夕焼けのリング』は結婚の証で、狐の里では人間にそれを贈り、永遠の愛を誓うとか何とか。

ちなみに本当はその日のうちに俺を狐の里に連れて行くつもりだったらしい。

だが、俺がそのまま家に帰ってしまい、その後も何となくタイミングを逃し続け、挙句の果てには俺が白山様(はくさんさま)に来なくなってしまった。

その為…まぁ…なんと言うか。


「彼女」はバツイチになってしまったのだ。

人間の世界であれば、


「結婚しまーす」婚姻届おねしゃーす

「いいよー」ハンコぽんっ

「夫婦でーす」キャッキャ

「やーやーわーわー」バキッドカッ

「もうムリー」離婚届おねしゃーす

「いいよー」ハンコぽんっ


って言うのが離婚までのおおよその流れだと思うんだが(合ってるよね?)まぁ相手は狐だ。

あの虹と夕焼けのリングにそんな意味があったとは…知らなかったとは言え「彼女」には悪い事をした…のか?

俺別に悪い事してなくね?


で、これは後で知った事なんだけど、黒い狐には首から背中にかけて十字の模様があるらしい。

もしかしてあの美しい銀髪が黒くなったのって『バツ』イチになって体に十字の模様が体に浮き出たから黒くなったのでは…?

憶測の域を出ない話ではあるが、あり得ない話でもないかも知れない。

それならあの、

「お前のせいじゃダボハゼがー!!」

のセリフもしっくりくる。


と、まぁこんな感じで少し「彼女」に対して詳しくなったわけだ。


その「彼女」はと言うと…。


ん〜ん♪

…と。

俺の首に腕を回し、膝の上に横向きに座っていた。

一応言っておくがここは教室で、授業中ある。


「ねぇ…降りない?」

「降りない」

「左様で…」


んふ〜♪


てな具合だ。


デレてる…デレてるのだが。

悪質なデレ方をしやがる。


赤Tの肉だるま、ナンバティーチャーもタジタジである。

「し、白城(しろじろ)さん?黒板見辛くないのかな?」

恐る恐る尋ねるナンバティーチャーだったが、

「黒板が見えなくてもダーリンが良く見えるので平気です。」

…と。

(あきら)君からも何か言ってくれないかなぁ?なんて…」


ナンバティーチャー…引き下がるなよ…。


「な、なぁ白城(しろじろ)さん、授業中は降りてくれないかなぁ?なんて…」


ギンっ!!


金縛りに遭いそうなくらい睨まれた…。

猿の「アイアイ」って知ってる?

白城(しろじろ)はアイアイの目以上に目を見開いてこう言った。


「なに?ダーリンは私から降りて欲しいの?なんで?私は何時でもダーリンとくっついていたいのにダーリンは違うの?」


「へ?」


「私はダーリンと四六時中くっついていたいのにダーリンは違うんだ?ダーリンに会えなかった時間がどれ程辛かったか分かる?分からないわよね?私がダーリンを想っている時、ダーリンは何してたの?何もしてないわよね?私が辛い夜を何度も越えて涙で枕を濡らしている時、ダーリンは何してたの?よだれ垂らしながら寝てただけでしょう?私が胸が張り裂けそうな位寂しい時ダーリンは隣に居てくれた?居なかったわよね?私が寂しさで食事が喉を通らない時はダーリン、何をしてたの?馬鹿みたいにバカスカ食べてお腹いっぱいになってお昼寝?良いご身分じゃない?私が独り寂しく野原で砂遊びしてる時、ダーリンは何してたの?友達の家で楽しくテレビゲーム?ふざけないでよ!私をまた独りにするんでしょう?いいわ、その時は私はダーリンを道連れに…」


「オーケーハニー愛してるよ!もちろん僕も君を独りにした事を後悔してるさ!もうずっと離さない離してやるものか!俺の腕の中で眠りなベイビー!」


…動悸と目眩がする。


「そう言う事だから肉だるま、授業を続けなさい」


ナンバティーチャーにそう言い放つと白城(しろじろ)はまた俺の首に腕を回しくっついてきた…。


「ひゅ〜お熱いねぇお二人さん!」

と、(きよ)が茶化してくるがクラスの他の面子は「うわぁ…」って感じで俺等を見ていた。


クラス中の視線を二人占めした俺等はその後は大人しく授業を受け続けた。

こんなに眠くならない授業は生まれて初めてだった…。


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