第7こん 「仲直り?」と「姉と兄」と「耳鳴り」
「彼女」に連れられて向かったのは町のやや中心寄りにある神社だった。
家の裏にある白山様とは違い、結構デカい。
神社の周りにはお掘りがあり鯉や鮒、金魚等がいた。
神社の入り口には狐の像が2体見つめ合う形で参拝客を睨みつけている。
神社を隠す様に生い茂る竹は神社の荘厳さをこれでもかと言う位アピールしてくる。
こんな神社の境内に俺らは隣り合わせで座っていた。
「改まって話したい事でもあるんだろ?」
と、神妙な面持ちで俺は膝に肘を付きながら口の前で手を組んだ。
俺、カッコよくね?
「おい、『おもどろ』まずは私に謝れ。」
目は口ほどに物を言う、と言うが目で人を殺しそうな女の子がこの世にいるとは…ゴールデンランスヘッドみたいなやつだ…またちびりそうになったぜ。
「ゴメンなさい」
俺はちゃんとゴメンなさいが出来る男だ。
「は?」
眉間にシワを寄せ先程より顔面での殺傷力が上がっていた。
「すみませんでした、どうか許して下さい。だろ?」
瞬きもせずに俺の目を凝視する。
「すみませんでした!どうか許して下さい!」
一字一句間違えずに言えたぞ!
「土下座を忘れてんじゃねぇのか?あ゛?」
怖いよぅ…
言われるがままに俺は境内から降り、砂利の上で土下座して謝った。
「ていうかなんで謝ってるのか分かってるの?」
「うん…まぁ」
「なら良し」
「許してもらえるのか?」
「彼女」を見上げながらそう問うと、はにかみながら「彼女」はこう答えた。
「許す。けど一つ条件があるの」
「条件?」
「私と番になりなさい」
?
??
???
!!??
「ほぇ~…」
随分とマヌケな顔と返事をしたもんだ。
番、つまりは夫婦って事だろ?
中1の俺に早くも嫁さんが出来るのか。
ってちょっと待てよ?
「番になったら俺はこの世から居なくなるのか?」
俺の姉の様に。
「居なくはならない。ただ、人から認識されなくなる」
…認識されなくなる?
「それと、あなたのお姉さんは生きてる」
「えっ!?」
なんで「彼女」が俺の姉の事を!?
頭が追いつかない。
「あなたのお姉さん、成澤成は私の兄と番になり、人ではなくなった。けど生きてる。そう言ったの」
心臓が張り裂けそうな位鼓動している。
目の焦点も合っていないだろう。
春だというのに滝の様な汗をかき、俺の口は半開きでわなわな震えていた。
「ね、姉さんには会えるのか?」
何とか振り絞って声を出した。
「里に来れば会えるわ」
「里?狐の里って事か?」
「そう、でも里には人間は入れない」
そうか…姉は「人」ではなくなったのか…。
受け入れ難い現実と肉親が生きていた嬉しさの感情が入り混じってカオスな心情だった。
そして俺の初恋はやはり人間ではなかったのか。
見た目は凄く可愛いんだけど、中身が極悪なんだよなぁ…見た目…。
「あ!?」
俺が大声を出すと「彼女」はビクンっとしてこちらを見ている。明らかに驚かせてしまった。
「ご、ゴメン。聞こうと思ってたんだ」
「何かしら?」
「えっと、昔は腰まであった銀髪だったよね?目の色も金色だったと思うんだけど…イメチェン?」
「…」
「……じゃ」
「おん?」
よく聞き取れなかったので耳を「彼女」に近づけたらバカでかい声で罵声を浴びせられた。
「お・ま・え・のっ!・せいじゃダボハゼが〜!!」
キーーーーーーン!!
と耳鳴りが治まらない。
耳がオシャカになっちまった。
顔を真っ赤にして涙目でやんややんや騒いでるが全く聞こえない。
俺のせい?
身に覚えと言えば小さい頃に母さん頬を叩かれ、白山様に行かなくなった事位しか思い当たる節がない。
それと「彼女」の髪と目の色に関係があるのだろうか?
「うーん…」
考え込む俺の横で「彼女」が何やらドギツイ罵声を浴びせている様だが生憎俺の耳はまだ復活していなかったのであった。




