第6こん 「イメチェン」と「毒舌娘」と「お誘い」
衝撃(笑劇)の入学式から数日が経ち、俺のあだ名は
「おもどろ」になってしまった。
もちろん「お漏らしハンカチ泥棒」の略である。
「彼女」の正体をバラすわけにもいかないので甘んじて受け入れた。
「彼女」との関係を根掘り葉掘り聞かれたがテキトーに小さい頃に一緒に遊んだ幼馴染だと伝えておいた。
事実それ以外の関係性がない訳で。
しかし、「彼女」の変わりようときたら度肝を抜かれた。
腰まであった美しい銀髪は真っ黒のショートボブになっていて、眼の色も俺らと同じ黒だった。
普通に考えれば染めたとかカラコンかな?とは思うが出生が不明な「彼女」である。何か秘密があるかも知れない。
そして何より「彼女」が喋っていた事が何より驚きだった。
あの透き通った風鈴の音色の様な声は今となっては俺を誂う矢となって俺の耳に突き刺さっていた訳だが…。
なんというか「彼女」は毒舌のスキル持ちだったのだ。
同級生にも毒を吐いていて入学早々孤立していた。
さらにはすでに5人から告白されていてその全ての男に罵声を浴びせていると噂で聞いた。
「鏡って知ってる?とても便利な道具なんだけど。自分を客観的に見れる道具でね?容姿を整えるのに最適な道具よ」
「ジャガイモに告白された人の気持ち考えたことある?」
「あなたから牛乳拭いた雑巾をドブの水で煮込んだ臭いがするわよ?私の半径65,536メートル以内に近寄らないで。」
とか。
とんでもないポイズン娘である。
俺はと言うと、後の席から消しゴムを千切ったカスだとかシャーペンの芯を折った物を投げつけられたとか陰湿な嫌がらせを受けていた。
が「彼女」にした裏切り?を思うと強く出れていなかった。
「あのぅ…白城さん?消しゴムのカスを投げつけるのは御遠慮頂いても…?」
「あ゛?」
「いえ、お気に召すままに」
「チッ!」
といった具合である。
可愛くねぇー!
いや可愛いんだけど!
キーンコーンカーンコーン
「あいっ!じゃあ今日の授業はここまで!このまま帰りのホームルームやっちゃお!」
テンション高めの肉だるま…もとい、赤Tのナンバー先生の号令の下、ホームルームが開始された。
「皆!クラスの皆とは仲良くなったかな!?入学から初めての週末だ!新しい友達と遊びに行ったりするのかな!?」
ふんふん、と鼻息荒く話すナンバー先生だったがクラスの反応はイマイチだった。
そりゃそうだ。
クラスの空気を汚染している元凶が俺の後の席に鎮座してるからな。
「おやおや!?皆まだ馴染んでないのかい?ダメだよ若いんだからもっとグイグイいかないと!先生の若い頃はなぁ〜」
と長くなりそうな気配をいち早く察知して清が声を上げた。
「せんせー!その話長くなりますかー!?今日爺ちゃんの妻の孫のお母さんの旦那さんの息子が来るんで早く帰らないと!」
それお前本人やんけ。
「おぉそうなのか!スマンスマン!それじゃあ日直さん!号令!」
誤魔化せ…
「後で清君には職員室で話の続きをしてあげるからなっ!」
てなかった。
学校の帰り、俺が自転車置き場でチャリの鍵を外していると白城が寄ってきた。
何となく気まずい。
昔の事とか話したい事いっぱいあった筈なのに、いざ話そうとすると後ろめたさや申し訳無さで言葉が出て来ない。
そんな気持ちを察してか白城から話しかけて来た。
「ねぇ。寄り道して行かない?」
「いいよ、どこ行くの?」
白城はくるっと俺の背後に回り込むと耳に息がかかる距離まで近づいてこう言った。
「い・い・と・こ・ろ♡」
全身に低周波治療器の電撃を受けた様にビクンビクンしてしまった…。
脳が蕩ける…。
「ついて来なさい」
そう言うとまだ完治していない俺を尻目にドンドン先に行ってしまう。
必死に自転車を押しながら「彼女」に追いつこうとしたが何故か内股になっている俺は中々追いつけないでいた。




