第5こん 「赤T」と「反撃」と「邂逅」
いくつかの冬を越え、俺は中学生になった。
とは言え、田舎の中学校だ。1学年150人程度、小学校時代の友達ばっかりだったのであまり変わった感じがしなかった。
違う所と言えば校舎と、制服、通学が自転車になった位か。
我が一年一組はなんと3分の1が同じ小学校出身だった。クラス分けどうなってんだ?ちゃんと混ぜた?
当然初めてのホームルーム時には各小学校毎にグループが出来上がっていてワイワイガヤガヤと担任の先生が来るまで騒いでいた。
ガラッ!
っと勢い良く担任の先生と思わしき中年男性が教室の前方から入ってきた。一同、緊張が高まり、静まり返る教室。
スラックスに赤いTシャツ、くるくるした天パの頭に博士みたいなメガネを掛けた小太りの担任(仮)が出席簿を片手に黒板へ向かった。
カッカカッカッカッカカッカッ!
南波順一
と黒板に自分の名前を書いた瞬間こう言い放った。
「一年一組担任の南波順一だ!
皆!ナンバーワン!吉田松陰の様に元気かな!?」
…決して沸くことのない冷めた教室に恐らく社会科担当の担任、ナンバー…いや、南波順一先生は顔を真っ赤にして「ヤッチマッタ」って顔をしながら固まっている。
ここまで振り切った自己紹介をした人間が救い様が無い位滑ってるのを見るとこの後の自己紹介フェイズのハードルが下がって有り難い。いい奴じゃないか。
しょうがない、お調子者を気取って助け舟だしてやるか。
「せんせー!吉田松陰の様にってどういう意味ですかー!?」
するとさっきまでまるで郵便ポストの様に真っ赤でカチコチに固まっていた我らが担任、南波順一大先生は如何にも
「私は今からいい事言うぞ!」
と言わんばかりの表情で吉田松陰の名言を言い放った。
『かくすれば かくなるものと 知りながら やむにやまれぬ 大和魂』
「こういう言葉があってですな!」
するとお調子者2の小学校からの悪友、清くんが先生の話を遮った。
「せんせー、その話は途中でトイレ休憩挟む位長いですか?しっこ行きてーっす」
クラス中に笑いが起こり南波ティーチャーの今後のクラスでの扱い方が決定された。感謝しろよ?
その後は自己紹介がつつがなく行われ、ついに俺の番になった。
「北栄小学校から来ました、成澤晃です。趣味は特にありませんが、さっき先生を助けた様に人助けは好きです!宜しくお願いします!」
我ながら元気良く自己紹介出来たと思う。
「うん、素晴らしい自己紹介だったぞ!清と晃は後で職員室で話そう!」
俺・清「…」
まさかの反撃に言葉を失ってしまった…やるやん。
「じゃあ次〜」
俺の後の席からカタンっと音がして次の生徒の自己紹介が始まった。
「白城曜子です。」
ドクンっ…
心臓が爆発するかと思った。
(キレー!)
ドクンっ…
何だこの感覚…
(どこの小学校だろー?)
ドクンっ…
この感覚どこかで…
(誰か知ってるー?)
ドクンっ!!
「な〜んだ、今日は漏らさないのね?あなた」
…恐る恐る後を振り向くとそこには「彼女」が俺を見下ろしてクスクスと不敵な笑みを浮かべて立っていた。
あの頃と全く同じではない。
眼の色、髪の色は俺たちと変わらず、身長や身体つきもあの頃より大人に近づいていた。
「逢いに来ちゃった♡お漏らしハンカチ泥棒さん♪」




