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第3こん 「彼女」と「お社」と「母さんの痛み」

前回のおトイレ失敗事件から1週間が経った。

金眼銀髪の少女はあれ以降、口を開こうとはしない。

幼心に深い傷を負った(あきら)少年だったにも関わらず俺は足繁く白山様(はくさんさま)に通っていた。

「ここに来ればあの子に会える」

ただそれだけの理由で。

今日はあの子と何を話そう、何の話なら笑ってくれるかな?とか考えるのがとても楽しかったのだ。

とは言え小学生の知能だ、抱腹絶倒の面白話は出来なかったので専ら思いついた話を大して掘り下げもせずに話していた。

「UFOっているのかな?」

とか、

「学校のプールでゴムのおもちゃ潜って集めるゲームで1位になったよ!」

とか。

彼女は相槌も打たず、首も振らずに俺のどうでもいい話を聞いてくれていた。

ここ最近、家でお昼を食べたらここに来て少女と何の中身もない話をして夕方の町内放送が流れたら家に帰る、そんな毎日を過ごしていた。


ある日の晩御飯時、俺はある事を思った。

「あの子の家ってどこだろう?」と。


田舎の、さらには小さな村にあんなに目立つ見た目だ。

すぐに全員の話のネタになるだろう。

でも一切彼女に対する噂話は聞かなかった。

俺は台所で洗い物をしている母さんに聞いてみた。

「ねぇ、最近この辺に引っ越してきた女の子っている?同い年くらいの」

母さんは水道の水を止めつつ俺に言ってきた。

「居ないけどなして?」

「ん~じゃあ近所の子じゃないのかなぁ」

「なに?女の子の友達出来たの?今度家で一緒ご飯でも誘いなさいよー可愛いの?」


何故か母はウキウキしていた。

そしていきなり家に誘い込もうとする辺り俺はやはり母さんの子だった。

「うーん…」

近所に引っ越してきてないなら自転車が無いのはおかしい。

隣の村まで歩きで20分は掛かるし、炎天下の中子供の、さらには華奢な女の子では限界がある。俺は家の裏手、徒歩3分に白山様(はくさんさま)があるが彼女はどうやってここまで来てるのか…分からん。

「聞いても答えてくれないしなぁ」

俺がぐぬぬと頭を抱えていると母さんが聞いてきた。

「引っ越しは無いけど、もしかしたら親戚の家に来てる子とか帰省とかじゃないの?どんな子?」


なるほど、その線があったか。

伊達に歳食ってないぜ。

「えっと、同い年くらいの女の子でー金色の目でー、銀色のキラキラした髪でー全然喋らないの」


ふーんと母さんは洗い終わった食器を棚に片付けながら話す。

「外国の子じゃない?喋らないんじゃなくて喋れないとか?」

「ちょっとは話できるみたいだったよ、おしっこ臭いって言われた…」

嫌な記憶が鮮明に蘇ってしまった。

「そうなんだ?てかアンタ達何処で遊んでるの?一緒に居るところ見たこと無いけど」

と母さんが聞いてきたので


白山様(はくさんさま)のお社でお話してるよ」


パァァン


頬を叩かれた。

母さんは今までに俺に見せたことのない怒っているような、焦っているような。

悲しみのような、心配しているような目で俺を見ている。

叩かれた頬の痛みはもちろんあったが叩かれた理由が分からずキョトンとしてしまった。

俺が混乱していると母さんは俺を抱き締めた。


「もう…もうあそこには行っちゃダメ。絶対にダメ。連れて行かせないっ(あきら)だけは絶対にダメ…お願いだから…もう絶対あそこには…その子には会いに行かないで」


いつも飄々として楽しそうに家族と話す母さんの姿はそこには無く、いつもと違う母さんの様子に俺は何も言えず、ただジワジワと広がってくる頬の痛みを噛み締めていた。




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