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冒険者登録試験その3

「試験は終了だ。戻るぞ」


「分かりました」

短剣と外套を身につけ、拾い上げた荷物袋を歩きながら背負いつつ、ドランの後に続く。


「クライム、お前さん何かの格闘術でも修めているのか?」

来た道を戻りながら、ドランがくだけた感じで聞いてくる。


「そんな大層なものではないのですが、少しだけ」

笑って答えた。

(とりあえずそういうことにさせてもらおう‥)


「なるほどな。それにしてもとっさにあの反応、あの体さばき。正直驚いたぞ」


「ど、どうも」

(‥自分もそうだとは言えないよなぁ)


「打撃についても『剛体』スキルで防がなければダメージをもらっていたかもしれんな」

顎髭を触りながらドランが言った。


「あの手応え、スキルでしたか」


『剛体』は発動中に敏捷性を犠牲にして被ダメージを減少させるスキルである。

一度発動するとしばらく効果が続くため、その間は命中率と回避率が下がるデメリットもあって、プレイヤー達の間でも、それぞれの戦闘スタイルにより好みが別れていたスキルでもある。


「ああ。戦闘系職業のレベルを上げれば使えるようになるぞ」


「覚えておきます」


エラントの門が見えてきた。

出入りしている者はいないようだ。

日の昇り具合からすると、そろそろ昼ごろだろうか?

ドランは門番の1人に軽く手を挙げた。


「ドランさん、お疲れ様です」

昨日話しかけた門番とは別の男のようだ。


「おう。お疲れさん」

「お疲れ様です」

ドランに続けて軽く会釈して挨拶し、冒険者ギルドへ向かった。


ギルド内は人がまばらになっていた。

ほとんどの冒険者はクエストに出かけたか、もしくは昼食でもとっているのだろう。


こちらに気づいたエリザが受付カウンターから出てくる。

「ギルド長、クライム様、お疲れ様です」


「おう。エリザ、模擬戦の結果は問題なしだ」

ドランがこちらの背を軽く叩きながらニヤリとする。


「かしこまりました。それではクライム様こちらへ」

エリザが手のひらを上に向けた手で、受付カウンターの端の方へ誘導する。


「はい」


誘導された受付カウンターには受付職員残り2名のうちの1人の女性が立っている。

肩までの柔らかそうな赤い髪。丸い眼鏡をかけており、薄いそばかすのある小柄な幼い容姿の女性だった。


「エリン。鑑別機を」

エリザが小柄な女性に指示を出す。


「はい、先輩」

エリンと呼ばれた女性は、カウンター下から何やら金属製の薄い板のような物を取り出した。

四隅が丸く面を取られており、いってしまえば金属製のまな板のようだ。


「クライム様。こちらへ手をかざしていただけますか?」

エリンと呼ばれた女性は見た目同様に声も幼かった。


「こうですか?」


言われた通りにすると、板の上部から1本の光の横線が走査線のように下へ下がり、また上へ戻っていった。


「問題ありませんね」

エリザが笑顔で言った。


「なぁんだ。つまんないのー」

いつの間にかエリンの肩に手をかけて、背伸びしながら金属の板を覗き込むようにしていた女性が、笑いながら手を頭の後ろで組んで背を向ける。


少しくすんだ金髪を肩のあたりまでの長さでおさげにしており、エリンより少し背が高いが、どちらかというと小柄な方だろう。


「はぁ‥全く。サンディ!」

エリザが腰に両手をつけながら、サンディと呼ばれた女性を嗜めた。


エラント冒険者ギルド受付職員3名のうち、最後の1人である彼女は少しお調子もののようだ。


「サンディちゃん、今のは私もあまり良くないと思うよ」

エリンが少し遠慮がちにいった。


「はぁーい」

エリザに加え、エリンからも指摘されて反省する気になったかと思えば、あまり悪びれた様子もなく、少し大きめの口でいたずらっ子のような笑みを浮かべたまま、担当の受付カウンターへと戻って行った。


(2人とも可愛いとは思うけど、俺はやっぱりエリザさん派)


「あの、これって何かの検査だったり?」

気になった事を聞いてみる。


「はい。その通りです。失礼ながら犯罪歴がないかを調べさせていただきました」

エリザが少し申し訳なさそうに答える。


「規則でな。腕っぷしだけで冒険者登録出来た時代にいろいろと問題があって、今はこうなってる」

一部始終を後ろで見ていたドランが言った。


「そうなんですか。すごい機能ですね」

(まあ、ゲームとは違って犯罪者も普通にいるだろうしな)


「まあ、お前さんなら問題ないと思ってたよ。とにかくこれで晴れて冒険者の仲間入りだな」

ドランがニヤリとする。


エリザとエリンは笑顔で胸の前で小さな拍手をした。

サンディの方を見やると、こちらの視線に気づき、先ほどのようないたずらっ子な笑顔のままウインクを飛ばしてきた。


苦笑しつつ、4人の顔を見渡す。

どうやら合格を歓迎してくれているようだ。


「ありがとうございます。これからよろしくお願いします」


軽くお辞儀をして、感謝の言葉を伝えた。

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