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エラント

「それにしても、一撃かぁ」

ウルフ討伐後にステータス画面を開いてみたが、特に変化はなかった。

ゲームと同じならば基本的に職業につかなければモンスターを倒しても成長は出来ない。


ウルフとの戦闘の後は他のモンスターとは遭遇していない。


「死体そのままにしといてよかったかな‥」

ゲームのように消えてくれた方がありがたいと思った。


草原をしばらく進むと、エラントへ続く整備された街道に繋がったため、今はその道を進んでいる。

日もかなり落ちており、薄暗くなってきていた。


「しかし精神力とかにチート補正でもかかってるのかねぇ」


現実で狼に飛びかかってこられたらあそこまで冷静でいられるとは思えない。


モンスターは同じエリア内でも、配置によって個体にレベル差がある。

仮に最低レベル個体のウルフだったとしても、職なし、短剣のみで1回の攻撃で倒せるほどHPは少なくなかった。


それにモンスターとプレイヤーとの間にレベル差があると、ステータスに補正がかかる仕様があり、差があればあるほどダメージが与えにくく、逆にプレイヤーの方がレベルが上であれば楽に倒せるようになっていた。


ゲーム内であれば、今のステータスだとウルフ1匹相手でもかなり苦戦しただろう。

一度アクティブになったモンスターは逃げることもなかったため、2匹相手ならまず、死に戻りコースだった。


「なんかあの感じなら2匹同時でも普通に倒せた気しかしないし、自覚出来てないチート能力絶対あるよコレは」


エラントの外壁が近づいてきた。


ゲーム開始時、始まりの街として指定出来る街は4箇所あり、エラントはヒューマンの街という設定があったため、なんとなく始まりの街として選択した記憶があるが、ゲームをしているうちに自分の故郷のように感じていた街だった。


街は海に隣接しており、港がある。

産業として漁業が特に発展しているが、貿易の街として、さまざまな種族の往来があり、アイテムなどの流通も盛んな街である。



外壁にある門が見えてきた。

門の手前には馬車が停まっており、門番の男が何やら御者と話している。


もう1人の門番へ話しかけることにする。

(どうみてもNPCにはみえないな)


「こんばんは。街に入りたいんですが」 


「冒険者か?そろそろ門を閉じようとしていたところだ。‥‥よし、入っていいぞ」

特に不審な点はなかったのだろう。

多少訝しんだような目で見られたのみで、あっさりと通してくれた。

(言葉も普通に通じるか)


まだ停まったままの馬車を横目に門番に手を挙げつつ門をくぐる。


「おお‥こんなにでかい街だったんだな」


門の先はエラント中心部の大通りへと続いていた。

石畳の舗装された地面。

煉瓦作りのたくさんの建物。

光のクォーツによる街灯。

ところどころ屋台も出ており、道行く人々の活気に溢れている。

基本的にはヒューマンが多いようだが、他の種族も目に入った。


「エルフにドワーフに獣人‥」

初めてみる種族達に少し感動した。


「よぉ、兄ちゃん」

ふと、背後から声をかけられた。


「なんですか?」

振り向きながら応える。

50代くらいだろうか?顎髭を生やし、体格のいいヒューマンの男がそこにいた。


「何だか、物珍し気に見てたからよ。エラントは初めてかい?」


(もしかしてチュートリアルイベント的な?)


ゲームを開始すると、プレイヤーが街に降り立った場面からスタートし、そのイベントの流れの中でNPCからいろいろと説明を受けるシーンがあったのを思い出した。


「さっき到着したんですよ。昔来たことはあるんですけど、ほとんど初めてみたいな感じですね」


「そうか。俺はそこの屋台で1杯引っ掛けてた帰りでな。かけ出し冒険者みたいなナリの兄ちゃんが目に入ったもんで、世話でもやいてやろうかと思ったってわけだ」

後ろの屋台を指して、笑いながら男が言う。


(いろいろ聞きたいけど、腹も減ったしなぁ)


「では、1つ教えていただきたいのですが、冒険者ギルドはたしか住民街区でしたよね?」


「数年前まではそうだったんだが、酒場が夜中までうるさいってんで住民から苦情が出て移転してな。今はホラ、目の前だぜ」

男が指した方向に目を向ける。


通って来た街の入り口の門のから少し先、内壁に沿うような形で煉瓦造りの大きな建物が目に入った。

建物の入り口上部には『エラント冒険者ギルド』の看板が建て付けてある。


(苦情で移転とかリアルすぎ)

内心苦笑する。


「ありがとうございます」

礼を言ってギルドへ足を向ける。

「おう」

男は気さくに言って手を挙げて去っていった。


あたりは街灯に照らされてはいるが、もうかなり暗くなっている。


ギルドの扉前までくると、1階に冒険者酒場もあるためか、喧騒が届いた。


「さて、入ってみますか」


手をかけて、ギルドへの扉を開いた。

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