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職業選択その6

「それじゃ、まずは猟士の特徴の説明からだね!」


「よろしくお願いします」

軽く頭を下げる。


ミルーシャは元気のいい笑顔で続ける。


「猟士は戦闘向きの職業という感じじゃなくて、獣を狩ったり素材採集したりする事が得意な職業なんだ」


「そうなんですね」

(ゲームと同じ感じだな)


猟士には素材系アイテムのドロップ率が上がるスキルがあったため金策にいい職業のひとつだった。


「パーティ戦だといわゆる斥候?みたいな役割りを担うことがおおくて、武器はとくに弓の扱いが得意かな。最大の特徴はなんといっても索敵能力に長けていることで、えっと猟士のレベルを上げていくとサーチというスキルが身につくんだけど、これを使えばなんと!遠くのモンスターを発見する事ができるんだよ!」


「おお、そんなスキルが!」

得意げに語るミルーシャに合わせておく。


「すごいでしょ〜。索敵の範囲はレベルが上がると伸びていくんだけど、レベル35のアタシでだいたい100メートルくらいかな?」


「そんなに。見通しの悪い場所で100メートル先の相手を感知出来るのはかなり有用そうですね」


「ふふふ〜そのとおり!猟士は戦闘向きな職業じゃないって言われてるけど、パーティにいると便利な存在なんだ」


ミルーシャは背負った矢筒から矢を抜き取り、手に取った。


「なんて言ったけど、みてて」


ミルーシャは手に持っていた弓に矢をつがえ、訓練所の丸い木の的に狙いを定める。20メートルほどの距離。

狙いを付けてほとんど間をおかずに、シュッという音と共に放たれた矢は丸い的のど真ん中を撃ち抜いた。


「おお!すごい」


「ふっふっふ〜!」

ミルーシャは両手を腰に当てて少し胸を張った。


「戦闘向きじゃないというのはあくまでも剣とかでの直接攻撃に不向きなだけで、敵に気づかれずに先に矢を当ててしまえば関係ないというわけ。ただ、パーティ戦だと仲間に当てないよう工夫が必要だけどね」


ゲームでは敵に気づかれずに最初の攻撃を当てるとクリティカルヒットとなる仕様で、特に遠隔武器に関してはクリティカルに攻撃力ボーナスが乗るようになっていたため、弱めのモンスターであれば最初の一撃で大きくHPを削れれば近づいてくるまでに矢を当て続けることで攻撃を受ける事なく倒す事が出来たりもした。


「それじゃ適性の確認の意味で、いちど弓を使ってみよ〜」

そういうと、ミルーシャは手に持っていた弓と、矢を1本手渡してきた。


「お借りします」

弓は少し小ぶりのようだ。


(弓はさすがに使った事ないからなあ)


とりあえずミルーシャの真似をして、左手で弓の中心付近の布の巻かれている箇所を掴む。

「えーと、こうかな」


右手は矢羽のあたりをつかみ、弦に矢の切り欠きの部分を引っ掛けてそのまま弦を引く。


「そうそう。そんな感じ」

ミルーシャから見てもとくにおかしな構えではないらしい。


「撃ってみます」

矢尻を的の中心、飛距離を考えて少し上にずらしてから矢を放った。


「さすがのクライムくんも1本目で命中はできなかったかぁ」


放った矢は的に届かず、手前の地面に刺さっていた。


「弱かったか‥」


「狙いは悪くなかったよ!」

ミルーシャはそう言って矢をまた1本渡してくる。


「少し弓を傾けてみて。弓で矢を保持する形にすると楽に撃てるよ。あとは弓がしなるくらい引いて撃ってみて」


「わかりました」

ミルーシャのアドバイス通りに少し傾けた弓に矢をつがえる。


(あー、そういや種族によっては弓のモーションが違ったよな。弓を45度傾けて撃ったり完全に横にして撃ったりもしてたっけ)


少し強めに弦を引き、弓がしなる。

「これくらいかな」


狙いは先ほどと同じにして矢を放った。


勢いよく放たれた矢は的中心から少しずれたものの、今度は命中した。


「お、当たった」

(なんか嬉しい)


「やったね!」

ミルーシャが笑顔で言う。


「はい。ミルーシャさんのアドバイスのおかげです」


「どういたしまして。今日は大丈夫だったけど、天候の影響とか、あとは弓や矢の特性によっても狙いが変わったりもするし、熟練の猟士でも的を外す事もあるくらい弓は難しいんだよ。クライムくんは2回目で命中できたし猟士としての適性も問題ないと思うな」


「ありがとうございました」

ミルーシャに礼を言ったところで、サンドラ達が近づいてきた。


「これで職業の適性確認は終了となりますね」


「はい。ありがとうございました」

サンドラと、他の三人にもにもあらためて礼を言う。


「クライムさんは5つ全ての職業に適性がありましたね。コアソウルに刻むのは最初のご希望の通り、回復魔法士か攻撃魔法士のどちらかになさいますか?」


サンドラが尋ねてくる。


「そうですね‥ちなみに全部の職業に適性ありというのは珍しいことなんでしょうか?」


「ヒューマンであればどの職業にも適性があるという方はたまにいらっしゃいます」


「そうなんですね」

(全部適性ありなのもチート能力に起因してるかと思ったけどそういうわけでもないみたいね)


「そうだ。一つ質問いいでしょうか?」

(これは確認しとかないとだな)

 

「はい。なんでしょう?」


「えーと、職業を複数コアソウルに刻むのはレベルアップの成長を阻害してしまうと聞いたのですが」


「そうですね。複数の職業をコアソウルに刻んだ場合、1つの職業にだけついている状態と比べてモンスターを倒した時に得られる経験値が減少すると言われています」


「やっぱりそうなんですね」


「その辺りの事は俺が説明しよう」

リーグザールが説明役を買って出る。


「俺は剣士としてある程度の経験を積んだ後に攻撃魔法士の職業をコアソウルに刻んだが、そこからは剣士としての成長は想像以上に緩やかになってしまった。当時よく組んでいたパーティメンバーともレベル差が開き始めたことで、噂の通り得られる経験値が大幅に減少しているのを実感したよ。攻撃魔法士についてもレベル1だというのになかなかレベルアップしなかった」


「そうですか。うーん、適性もあると分かりましたし叶うなら5つ全ての職業をと思ったのですが」


「クライムよ、流石にそれはやめといた方がいいとおもうぜ」

ガンドフが少しあきれ顔でたしなめてきた。


「過去、多くの冒険者達が複数の職業をコアソウルに刻んだ結果、一緒に戦ってきた仲間とレベル差が開いちまって戦力外通告を受けたり、他人の2倍、3倍の戦闘をこなさなければレベルアップ出来ない辛さに嫌気がさして冒険者引退したりと、まぁ色んな事があったから今は初心者には特に複数刻むのはすすめないようにしてんだ」


「そうですね‥。わたしもあまりおすすめはいたしません」

ガンドフとサンドラは同意見のようだ。


ミルーシャを見やると、

「そうだなぁ、アタシはクライムくんの好きにしてもいいんじゃないかなと思う。出来る事は間違いなく増えるし。大変だとは思うけどね」

とのことらしい。


「クライム、気持ちはわからんでもない。複数の職業のスキルを使えるようになるということは冒険者としての立ち回りの幅が大きく広がる。だが、俺のように2つの職業までに留めておく方がいいだろう。1度職業をコアソウルに刻んでしまうと後戻りは出来ないからな。冒険者として上を目指すのであれば最初から2つの職業を刻んでしまうと道は険しくなると思った方がいい」


リーグザールも実体験として現在進行形で苦労しているようなので、基本的にはガンドフ達と同意見らしい。


「うーん」

(皆さんの口ぶりからするとやっぱり大変なんだろうか。普通に考えてモンスターを倍倒さないといけないわけだし)


「どうしてもってんならリーグみたくある程度レベルアップしてから2つ目の職業を選ぶ方がいいんじゃねえか?2つの職業のスキルを使えるのは便利だからな。その頃にはそれなりの経験値を得られるモンスターと戦えるようになってるだろ」


「うーん」

(どうするかなあ。ゲームと違ってメイン職業を切り替えたり出来ないうえ、サブ職も低レベルなのになかなか上がらないって話しだし。まあ経験値半減くらいならそこまで大した事なさそうに思えるんだけど)


「大変だという事はなんとなくわかりました。ただ、私はそこまで職業のレベルアップや冒険者のランクアップにこだわらずに自分の出来る範囲でやっていくつもりですので、回復魔法士と攻撃魔法士の2つをコアソウルに刻むことにします」

(やっぱり魔法使いたいもんね。サーチも欲しいとこだけど)


「分かりました。クライムさんがお決めになられたのであれば」


「大変だと思うけど頑張れば大丈夫だよ!」


「まあ、お前さんがそう決めたなら」


「そうか。攻撃魔法士については俺もアドバイスできるかもしれん。何かあれば頼ってくれてかまわない」


「はい。ありがとうございます」


各々基本的には複数の職業につくことを推奨していないようだが、こちらの意見を尊重してくれた様子で、そこまで強く反対される事はなかったようだ。


「それではまずコアソウルに刻むのは回復魔法士からでよろしいでしょうか?」


サンドラが問いかけてくる。

(最初に刻むのがメイン職業になるのかな?というかメイン職とサブ職の概念があるのかどうか‥まあ回復魔法士の方が便利だろうし、メイン職業になったらなったで別にいいか)


「はい。よろしくお願いします」


「わかりました。では始めましょう」


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