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職業選択その4

「それでは、引き続き適正の確認をさせていただきますね。攻撃魔法に興味がおありとのことでしたので、次はリーグザールさんお願いできますか?」


「わかった」

(ついに攻撃魔法キタ)


「攻撃魔法士はその名の通り殺傷力の高い攻撃魔法を得意としている。それから攻撃魔法を防ぐ障壁魔法もだな。回復魔法士同様に物理攻撃は不得手だ」

淡々と説明するリーグザール。


「はい」

(こちらもゲーム通りと)


「攻撃魔法士の特徴としてはこんなところだ。では適性の確認をするとしよう」


リーグザールはそう言うと、手のひらを上にして右手を軽く上げた。


「『ファイア』」


言葉とともに、リーグザールの手のひらから小さい炎が現れる。


「おお・・!」

(マジで魔法だよ!ヒーリングはわかりにくかったからなぁ。ちょっと感動)


「クライム、炎に手を近づけてみてくれ」


「わ、わかりました」


ゆらゆらと揺れる炎にそっと手を近づけてみる。

「・・これ以上は熱くて無理なんですが」


ある程度近づけると、当然ながら熱い。


「では、その熱さが和らぐように意識しながらだとどうだ?もっと近づけることはできるか?」


「やってみますね」

(熱くない熱くない・・ん?熱くなくなってきた?)


炎に近づけた手に感じていた熱さを急速に感じなくなっていくのがわかった。


「クライム。君は攻撃魔法士としても適正があるようだな」


リーグザールの手のひらで揺れていた炎がふっと消失した。


「モンスターとの戦闘において、攻撃魔法は強力な攻撃手段だ。だがモンスターの中にも攻撃魔法を使ってくるやつらがいる」


「はい」


「基本的に魔法を発動する際、術者の周囲にも魔力が放出される。その魔力を感じ取り、どの属性の魔法なのかを見極めることできれば、相手の魔法の発動前に有効な魔法障壁を展開することができる。先ほど炎の熱さを感じづらくなっただろう?炎に相反する水の魔法障壁の展開が出来ていたということだ」


「なるほど‥」

(魔法障壁を展開した実感は全くなかったけど)


「攻撃魔法士として重要な事は属性を見極めることにある。経験を積んでいけば魔力の流れを感じ取り、属性の見極めも次第にできるようになるだろう」


ゲームでも魔法は物理攻撃よりも格段に強力な攻撃手段だった。

当然ながら、モンスターからの攻撃魔法も食らうと危険なため防ぐ必要があった。

それが魔法障壁である。相反する属性の魔法障壁を纏うことで、直撃してもかなりのダメージを軽減できた。

特に強力なボスモンスターとの戦闘では、攻撃魔法士としてのプレイヤースキルの見せ場として、高威力の攻撃魔法を放つよりも、適切な魔法障壁を展開できるかどうかがかなり重要なポイントだった。

プレイヤーの中には魔法障壁を切らすことなく火力も出すような凄腕の者もいたが。


「クライムさん、回復魔法士と攻撃魔法士、ご希望の職業の適性がおありだと判明しましたが他の職業についても適性確認なさいますか?」


サンドラが尋ねてきた。

(せっかくだし全職やってみるか)


「そうですね。他の職業についてもお願いできますか?」


「承知しました。えと、では引き続きリーグザールさんから剣士の適性確認をしていただきましょうか」


「はい。お願いします」

リーグザールの方へと向き直る。


「わかった」

リーグザールはそういうと、腰の剣を抜いた。


「剣士はその名の通り剣で戦う事を得意としている。モンスターを引きつけるスキルが多く、パーティ戦では前衛と盾役を同時にこなせるのが特徴だ。そのため基本的には片手剣と盾のスタイルの者が多いな」


「はい」


「剣士としての適性確認は単純だ。剣をうまく扱えるかどうか、それだけだ」


そういうと、リーグザールは訓練所の木の人形の前に立ち、剣を横薙ぎに払った。


(マジか‥)


力がほとんど込められていないように見えたその一閃は人形の胴体を真っ二つに切り裂いていた。

胴体を切り裂くほどの一撃であればそれなりの衝撃もあるかと思われたが、人形を固定している金属の土台は軋むことすらなかった。


「やってみろ」

そういうとリーグザールは自分の剣を柄をこちらに向けながら渡してきた。


「お、お借りします」

頭を下げながら剣を受け取る。

ゲームでよく見かけるような一般的な両刃のロングソードのようだった。

特に装飾はないが、剣身は曇りもなく、よく手入れされている。剣は重心が先端寄りにあるようで、見た目より重かった。


ゲーム内での剣士の構えを思い出す。

種族によって構えは多少違っていたが、基本は盾を装備した左手を少し上げ、右手は自然と垂らした構えだった。


「盾はないけど、こんな感じだったはず‥」

両足は肩幅よりやや広く、左足は人形へ向け、右足は約45度開いた半身の構え。


(剣なんて振った事ないからなぁ)

空手の先生が持っていた模擬刀を何度か振らせてもらったことがあったが、きちんと振れていなければヒュンという音が出なかった事を思い出す。


(確か刃筋が通るように振るんだよな)


なるべく剣の刃が真っ直ぐに人形に当たるよう意識しながら剣を左から右へと横に払うと同時に右足も踏み出す。

右手に力は極力入れず、剣の重みを活かすように振り抜いた。


「ほう」

リーグザールが感心したように呟く。


剣にほとんど感触はなかったが、人形の胴体は真っ二つとなっていた。


「うおお‥ナニコレ!?スゲー切れ味」

剣の剣身をまじまじと見つめてしまう。


「剣士としても適性十分だな」

リーグザールからお墨付きが出たようだ。


(いやいやこれ剣がすごいんじゃないの)


「はは、自分でもびっくりです。剣ありがとうございました」

頭を下げながら剣を返す。


リーグザールが剣を鞘に納めると、離れて見ていた3人が近づいてきた。


「クライムさんすごいです!」

「クライム!おまえさんが逸材ってのは間違いねぇみてぇだな!」

「すっごい!すごすぎだよー!」


サンドラ、ガンドフ、ミルーシャの3人は少し興奮気味だった。

「そ、そうすかね?」


やはりヒューマンの胴体ほどの厚みのある人形を真っ二つにすることはそれなりにすごいことらしい。


「クライム。私の剣は見た目は簡素だが、それなりの業物だ。素人でも刃筋を通す事が出来れば人形に刃を通す事はさほど難しくない。が、それでも刃を食い込ませる事が出来るかどうかといったところだろうな。それなりの剣士に持たせてみたとて、両断するとなるとそう簡単にはいかないものだ」


表情からは読み取れなかったが、リーグザールも驚いていたようだ。


「えーと、以前刃筋を通すための素振りの修行をしていた事がありまして‥」


「なるほどな。素振りだけでこれならば君は剣士として適性があるどころか、かなり才能があると言ってもいいだろう」


「あ、ありがとうございます」

(素振りは嘘じゃないけど、修行ってほどやってたわけじゃないし、チート能力なんだろうけど一体どういう能力なのやら)


「サンドラ!次は俺の番でいいよな!」

少し興奮気味のガンドフが拳同士を胸の前で撃ち合わせながらサンドラに声をかける。


「‥はい。ではガンドフさん、拳闘士の適性確認よろしくお願いしますね」

サンドラがこちらへ問いかけるような視線を寄越したので軽く頷いておく。


「ガンドフさん、よろしくお願いします」

ガンドフに軽く頭を下げる。


「おうよ!」

がははと笑いながら訓練所中央のロープリングに向かって歩き出したガンドフの後に続いた。





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