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職業選択その2

酒場を出て、2階への階段を上る。


(8号室だったかな)

受け取った銀色の鍵を見ると、8の刻印が目に入った。


「ここね」

8の刻印のある扉に鍵を入れて回す。


部屋の中は6畳ほどの広さで、窓がひとつ。

白いシーツと毛布の置かれたベッド。

四角いテーブル、椅子。


「洗面台もあるのか」

蛇口のついた、鏡付きの洗面台。

洗面台の下には収納があり、タオルと洗面器のような浅い桶が置かれている。


とりあえず荷物を下ろし、洗面器にためた水にタオルを浸す。

服を脱いで、濡れたタオルで全身を軽く拭きあげた。


「ふぅ。タオルで拭くだけでもサッパリするもんだな」


下着のみ身につけた状態で、ベッドに腰掛ける。


明日の昼には職業適性を調べて、冒険者としての第一歩を踏み出すことになる。


(どうするかなぁ)


せっかくの異世界なのだから魔法を使ってみたい。

初めの職業にはまずは、攻撃魔法士を考えていたが、まさか転職にペナルティがあるとは思わなかった。


グルメ旅のためにもソロで問題なく行動出来る程度の強さは得ておきたい。

ゲームではメイン職業レベルが60で、サブ職業に回復魔法士をつけていれば、各所の街へ続くエリアであればそこまでの強敵はいないため、モンスターに襲われてもソロで問題なく行動できた。


「うーむ。ソロ活動なら回復魔法士が無難かねぇ」


(複数の職をコアソウルに刻んだ冒険者が明日来てくれたら話を聞いてみたいとこだけど‥)


「まあ、明日いろいろ聞いてみるしかないな」


窓の外を見る。

夕方あたりだろうか。


満腹のせいか、眠気が出てきた。

少し早いが、眠ることにした。




ーー陽の光を感じて目覚める。


気づくと、陽光が部屋を優しく包んでいた。

思いのほか、ぐっすり眠っていたようだ。


「ふぁ〜あ」

ベッドから起き上がり、少し伸びをして洗面台で顔を洗う。


(何時だろ)


窓から外を覗く。

人の往来がある様子から、早朝というわけでもなさそうだった。


(まあゴロゴロしててもしょうがないから受付に行ってみるか)


シーツと毛布はある程度綺麗な状態に戻しておく。

服を着ながら荷物をまとめつつ、鏡で髪をチェック。


(寝癖はなし)


鍵を閉めて一階へ。


そのまま受付へ向かう。


エリザは冒険者の対応をしているようだ。

エリンとサンディの前はどちらも空いていた。

(部屋の鍵を返すだけだしエリザさんじゃなくてもいいか)


サンディの方が近かったので、サンディに話しかける。


「おはようございます。昨日お借りした部屋の鍵、返却します」


「おはよ〜新人さんのクライムさん。鍵ね。はいは〜い」

軽い調子で鍵を受け取る。


「あの、今日は私の職業適性の確認をしていただけると聞いているのですが、指導者の方からのクエストへの応募状況はどんな感じでしょう?」


「えーっと、もう指導してくれる人は揃ってて‥」


右手の人差し指を頬に当てながらキョロキョロし出すサンディ。 

「あー、いたいた。あの掲示板の前の2人がそうだよ」


クエスト掲示板の方へ目を移す。

(あのエルフとドワーフのコンビか)


「あとの2人は‥いないみたいだね〜」


「ん?指導者の方は4名でしょうか?職業は5つあったはずでは」


「うん。1職業に1人の指導者で募集はかけてたんだけど、リーグザールさん、あ、あのエルフの人なんだけど、剣士と攻撃魔法士の両方を指導出来る人なんだよね」


「そうなんですか」


(ほう。ということはサブ職業もちゃんとレベル上げしてるってことか。いろいろ聞けそうだ)


「そ。とくにあの2人はベテランだからいろいろ勉強させてもらえるかもだよ〜」


「それはありがたいですね。分からないことばかりなので」


「ガンバってね、あ、センパイ」

いたずらっ子な笑みを浮かべつつ右目でウインクしてきたサンディが、後ろの方へと声をかける。


振り向くと、エリザがエルフとドワーフを連れて近くまできていた。


「おはようございます。エリザさん」


「おはようございますクライム様。こちら、本日の職業適性確認の指導者のリーグザール様と、ガンドフ様です」

エリザは手のひらを上に向けた手で、エルフとドワーフをそれぞれ指しながら紹介する。


「クライムといいます。今日はよろしくお願いします」

お辞儀しつつ、2人に名乗る。


「こちらこそ」

「おう。よろしくな!」


(2人ともいい人そうだ)


リーグザールはファンタジーものにはお約束の種族で長い耳とすらっとした身体が特徴的だ。

銀髪を肩まで伸ばしており、かなりの美形。ぱっと見は、冷たそうな印象を受ける。

見た目は20代後半といったところか。

身長は180センチはありそうだ。

薄緑の外套、動きやすそうな革の防具。腰には長剣。

腕の筋肉を見るに、細身ではあるものの痩せているわけではなくしっかりと鍛えられているようにみえる。


ガンドフはドワーフ。

ドワーフの見た目は太っているというわけではないが、横に広い体をしており、腕が少し長く、大きな手も特徴だ。

短く刈った黒髪に、ドワーフお約束の口髭と顎髭。

若そうに見えるが、髭のせいでよく分からない。

身長は170センチ前後だろうか。ドランと同じくかなり鍛えられており、プロレスラーのような体つきをしていた。

リーグザールと同じく動きやすさを重視した革の防具、腕には金属製の鉄甲。職業はおそらく拳闘士だろう。


「リーグザール様には剣士と攻撃魔法士、ガンドフ様には拳闘士の指導を担当していただくことになっております」


エリザが説明する。


「わかりました」


(あとは回復魔法士と猟士か)


「回復魔法士のサンドラ様、猟士のミアーシャ様のお二人の指導者は先ほど訓練場へ向かわれましたので、現地で合流をお願いいたします」


「はい」


リーグザールとガンドフに視線を移す。


2人は頷いた。

「俺たちも行くとしよう」

「そうだな。クライム、準備出来てるか?」


リーグザールに続いてガンドフが聞いてくる。


「はい。大丈夫です。行きましょう」


「いってらっしゃいませ」

「がんばってね〜」

エリザとサンディに見送られながら、2人に続いてギルドの扉へと足を向けた。


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