役所で
役所に着き、早速話が始まる。監視されながらでは気分はよくないがどうしようもないので、嘘はつかずにありそうなことを話していく。
「そうでしたか、人里離れた森の中で生活を」
「はい、逃げながらひっそりと暮らしていました」
嘘ではない、一度目の転移先ではそうだったのだ。迷った挙句にモンスターに追い回されて人里に出るのに5年もかかったし、その後の苦労も絶えなかった。最初の転移で得た多少の身体能力の強化と免疫向上のおかげで泥水啜りながらでも生きられたのだ。
「で、気が付いたらこの地球に帰ってきていたと?」
「はい、つい最近の出来事です。必死に生きていたら帰ってこれました」
帰還方法様々あるらしくそれを利用させてもらう。特に突如帰れたとか、異空間に流されて気が付いたらなども多いらしい。まぁ俺も異世界転移で味わったことだ、酷い目にあったものである。
「異世界先の、スカイランド?でしたっけ?浮島だけの世界と繋がったんですよね?」
「そうですね。まぁ大きめの浮島でもオーストラリア程度はあるらしいので実感ないかもしれませんが」
壊れた浮島世界といったところか、上下が異空間に繋がっており大陸レベルの浮島や島サイズの浮島が多数ある世界だ。宇宙とは違う、次元とかの狭間にある世界だろう。まさしく異世界にふさわしい世界だ。
「偶然繋がって激突ですか、災難に会いましたね」
「そうですよ。しかもスカイランド側がめっぽう強くて核の使用も検討されるほどでした」
本当に偶然かどうかはさておき、スカイランドが強いのは事実だ。あっちにも異能者や魔術使いみたいなものが多くモンスターもいるらしいので、おそらく個人の戦闘力や武器のレベルではあっちの方が上だろう。ただ地球側には核兵器などがあったので、兵器としては地球が優位に立っておりそれが拮抗した結果、和平を結んだようだ。
「お話ありがとうございます。ところでそれは?」
「これはあなたが異能者になったかの検査装置です。これで異能者になっていればより高度な検査を受けてもらいます」
小さな機械をこちらに向けボタンを押す。すると装置が緑に光り、異能者でないと判定された。そりゃそうだろう、この体は転移前を基準に作っているのだ。異能どころか異世界の影響すらないので、力を使うまでは何も出るはずがない。
「なるほど、ご協力ありがとうございました。今回はこれで終わりです」
「こちらこそありがとうございました」
まぁ大体わかったし、ニートできそうなのでよしとしよう、後は家に帰って家族と話して一人暮しに戻れば終わりだな。金はいくらでもあるから、のんびりさせてもらおう、そう思った俺は役所から出て自宅に帰るのだった。