実家に帰ったら
適当に交通機関を使いながら実家に帰ることにした俺は、変わってしまった世界を眺めながら昔の記憶と照らし合わせていた。
「もしかしたら、万が一にも間違ってるかもしれないし」
転移前の地球をすべて知っている訳ではない。あくまで俺が知っている部分が同じだからここに来たのだ。だから間違っているにしろ正しいにしろ証明しようがない訳だが。
「宇宙から見た感じとネットで見る限りは同じなんだよな」
そのままである。異世界と衝突した事以外は。
「実家は変わってないと良いな」
ごく一般的な家庭だ。家には貯金はなかったが、俺や双子の妹に高校に行かせて卒業させられる程度の家庭だ。
「みんなは大丈夫だろうか?」
少し弱そうだが優しい父と、気が強くてしっかり者の母。そして可愛い妹たち。みんな大切な家族だ。例えその中に戻れなくても、確認だけはしておきたい。
「もしいなくなってたら、もし受け入れられなければ……」
バケモノになった俺ではいずれ限界が来る。力以前に生きる時間が違うのだ。星が滅んだって、宇宙から光が消えてなくなったって俺は平気で存在し続ける。だったら最初っから受け入れられないように動いた方がマシだな。
「この体で良かったはずだ」
弱っちい体、力を使えば簡単に自壊するようなものだ。きっとこの世界に合わない肉体だろう。帰還者や才能ある者たちは異能や超人的力を得ている。それで社会で活躍しているのだ。そんな中俺だけは何も持ちえない。期待か安心か、どっちを取るかわからないが、前者なら俺は腫物扱いを受けるだろう。
「まぁやりようはいくらでもあるからいいか」
別に受け入れられようなどとは考えてはない。一緒に住む年でもないし、報告と確認だけすれば後は別のとこで住むつもりだ。事前に日本中から所有者のない落とし物のお金を十億円程度集めて俺のものになるように調整しておいたのでダラダラ生活できるはずである。
「生活に必要なものは全部そろえているし、いざとなれば亜空間から取り出せば解決だな」
自分の力を無暗に使うわけにはいかないので、道具で解決すればいい。幸い3000年の旅で便利道具は色々と手に入れている。まぁ亜空間の中にある大半の物品は、特に戦闘面での道具は各世界で押し付けられた厄介ものだが、それを使わないでいられるように祈っておこう。
「っと、ここか。実家は変わってないみたいだな」
そうして移動すること数時間、一軒家にたどり着いた俺はインターホンを押したのだった。