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家がない

 目の前に広がる景色は、俺の知っている世界じゃなかった。


「何だこれ……?」


 見慣れたはずの街並みが、知らない街に変わっていた。異常に発展したであろう街並みにビルの数々、道行く人々の中には、明らかに人間じゃないやつらが混じっている。


 いや、見た目は人間に似ているが、気配と言うか中身と言うか構造が違う。


 そして――


 『異世界交流区』と書かれた看板。


「……いや、待て。どういうことだ?」


 俺は混乱しながら、自分の家があったであろう近所を散策しだした。


(宇宙から見た限りおかしな点はなかった。じゃあ来る場所を間違えた?いやにしてもなんでこんなに……)


 だがどこをどう見てもそこにあったのは、見覚えのない豪邸だった。何度見ても確認しても同じだ。別に能力なんて使うまでもなく、それが現実だった。


「たった数年で?」


 事前に作っておいたスマホをネットに繋げ調べられるだけの情報を調べる。すると分かった事が、数年前、俺がいなくなったあの時に異世界との衝突があり世界は災害と混乱に包まれたらしい。


「あの転移は異世界との衝突が原因なのか。そんでこんなことに」


 そして俺の住んでいた地域は大きな被害があり、周辺住民は引っ越しを余儀なくされ、出来上がったのがこの「異世界交流区」らしい。


「こういうのが世界各地にあるのか……」


 異世界との空間連結により道が出来て、争いがあって、なんとか和解して、どうにかこうにかうまくやっているのが現状らしい。まぁ色々と問題が多いらしいが


「関わらないように、できるかな?」


 あと俺たちのような転移者は「行方不明者」扱いになっているらしい。つい最近も生存者が見つかったとニュースにも出ているし、数年程度のズレは問題ないだろう。いざとなればそう名乗ればいい。


(いや、今は太平洋の中心に島を作ってそこが主な中継地点……あ~なるほど、人工衛星対策に宇宙からじゃ隠蔽されてたのか。こりゃ魔法的な力だな、地球側もその影響を受けてる)


 太平洋の中心に巨大な島を作れるほどの異世界。技術面もさることながら、特殊な力がるのは確定だった。そして地球もその影響を受けて全体的な技術力や生物としての格が上がっていた。


(一旦戻って、全能で調べようかな?いや止めておこう)


 知りたくもない事まで知ってしまうし、便利な力に頼り過ぎたら精神が腐る。全知ほどじゃないにしても、全能とはそれほど危険な力だ。自我を保ちたいなら、人間でいたいなら制限をかけるしかなかった。


「一応平和みたいだし、急ぐ必要はないか」


 見ての通り街には異世界人がうろつけるぐらいには平和だ。ここだけ特別なんてことはないだろう、少なくとも露骨な対立はしてない。


(……にしても、どうするかな)


 まずは家族に生存報告をしに行かなきゃいけないとは思っているのだが、なんだが嫌な予感がするのだ。ネットで調べている限りでは、引っかかる点がいくつもあると言うか地雷だらけな気がする。


(このまま知らんふりしてもいいのだが、流石に薄情すぎるか?)


 親不孝者にはなりたくはないが、それでも限度がある。身の安全を考えるなら、適当に偽造して社会に紛れるのが最適解だ。と言うか5年分の時間の説明も考えてはいなかった。


「一人暮らしだったし、いやでも連絡一切取ってないからな」


 内定が出てから一人暮らしのために上京して、初出勤日に異世界に飛ばされて、そして今に至る。忙しくて連絡取れなかったって言い訳が通じるか?怪しい、と言うか、無理そう。


「いやまぁ、一応な……」


 様子見は必要だろうとの事で、とりあえず家族の居場所を探す事にするのだった。



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