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帰還者

 とある宇宙戦艦から地球を見る一人の男がいた。


「やっと帰ってこれた」

『観測範囲ではあれが”地球”で間違いないですね。話的にも座標的に一致しています』


 宇宙戦艦のAIと話す男は、あれが間違いなく故郷であることを確信していた。


「三千年経つ前に帰って来れてよかった。異世界転移なんてするもんじゃないな」

『ギリギリですが、まぁそうですね。失敗したら普通に死にますから』


 感慨に耽りながら、過去の事を思い出す。


「異世界に飛ばされて約三千年、いろんな世界で旅をした。剣と魔法の世界から、宇宙に飛び出したSF的な所まで。大変だった。だがそれも今日でお終い!故郷に帰ってじっくりゆったり過ごすんだ!」

『わざわざ時空まで超えて帰ろうとするその執着凄いですね。あ、因みにあの地球は貴方が転移してから5年後の世界ですよ』


 時空を超えて過去に移動し故郷に帰って来た男だったが、その理由がゆっくり過ごして心身共に休むための慰安旅行だ。男が思い浮かべた最も安全で便利で慣れ親しんだ場所”日本”で休むつもりで帰ってきた。


「流石に俺が転移した直後には戻れないか」

『あなたが力を使えばできるかもしれませんが、私では不可能ですね。情報がないので』


 流石の戦艦も情報が無い事には正確な時空跳躍はできない。そして男もそれをする気がない。


「手が滑って地球が壊れたらどうするんだ!それに作り直したら元の良さがなくなるじゃないか!」

『全能なくせにその程度の事に拘ってるんですか?』


 男は全能なのだ。やろうと思えば何でもできる最上位存在なのだが、それをしてしまうと男は全てを理解してしまいつまらなくなってしまうので、力を使うのを嫌がっている。それにミスると太陽系ごと消し飛ぶか、時空の果てかどこかに消えるので絶対に男は力を全力開放する気がない。


「自然なままがいいの!それに治すのだって楽じゃないしな!」

『はいはい、分かりましたよ』


 渋々観測をしながら月辺りに来た戦艦は、そのまま着艦し力場を生成し月面基地を建設し始めた。


「なにしてんの?」

『いえ、太陽系探索兼、地球観測用の基地を建てようかと』


 勝手に進む作業に呆然とする男は、戦艦の目的を思い出す。


「探査用戦艦だったか?お前は」

『そうですよ。宇宙の外側から来た探査用の戦艦です。ですので、これは私の仕事ですので邪魔しないでくださいよ、こっちも別に邪魔も破壊もしないので』


 この戦艦は男が作ったものではない。男が飛ばされた宇宙の果てで出会った相棒である。外宇宙の探査機であり、その技術力は地球どころか銀河すら上回る圧倒的な仕様だ。


「宇宙を超えるのは大変だからな」

『修理を手伝って、情報までくれたあなたには感謝していますよ。だからこうやって付き合ってる訳ですが』


 大破している所に出くわし、修理に協力した結果仲良くなって一緒に旅をしているのだ。


「異世界転移を何百回繰り返しても元の世界に戻れず、挙句の果てには宇宙の果てまで飛ばされるとは想定外だったがな」

『あんな危険な行為を繰りかえすあなたの気が知れませんよ』


 異世界転移は、強制的に異世界に移動する事だ。これをすれば、男のような何の力も才能もない者でも、強力な力が簡単に手に入る。ただし危険は付きものであり、失敗したら事故で死んだり、宇宙や異空間に放り出されて酷い目を見る代物だ。なんせ最悪、不死身などを得て、何もない空間に取り残される事もある。


「都合の良い強化手段とばかり思ってたけど、あんなに危険なものだったとは思わなったからな。力を得てからじゃないと普通に即死してたわ」

『下位存在がよくここまで強くなったものですね』


 何の特異な力も持たない下位存在、異能や魔法を持つ中位存在。神に等しくなった上位存在。そしてそれを超え素で全能に匹敵するのが最上位存在だ。これは銀河規模でも10人もいれば多い方だろう。ちなみに天野川銀河には、男を含め三人の全能者がいる。


「そして長い旅を得てやっと帰ってこれた。擬態も済んだし、早速地球に降りよう。お前は適当に探索でもしといてくれ」

『本当に下位存在にしか見えませんね。別にそこまでしなくていいと思いますけど?』


 地球に降りる為に準備していた擬態をする。それは転移前の体を参考にして作ったものであり、男の力を下位存在まで下げて一般人にするためのものだ。


「多少の心配があるが、まぁどうにかなるだろ。別に戦いに行くわけでもないし厄介事に巻き込まれるつもりもないし、いざとなれば力を使うよ、あんまり好きじゃないけど、あれ」

『そうですか、まぁ気を付けてくださいね。転移が起こった世界は少なからず異常が出ますので。大きく変わってないと良いですね』


 世界を詳しく見ていないので詳細は分からないが、目視では大きな変化はなさそうなので、これでも問題ないだろう、別にダラダラ過ごしに来ただけなのだから、と高を括り実家の座標に転移したのだった。



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