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Ⅱ ー旅人の唄ー Ⅴ章:消失

Ⅴ章―消失―



霧也達が遊園地で遊んでいるころ

アクアは九條 音無とデート(?)の真っ最中だった。

真昼の午後1時。意識界のとあるカフェテラスでほどよい人工の直射日光

にあてられながら紅茶を飲み、楽しい話をしている。


 「九條さんはぁー小説とか読むんですかぁ?」

 「はい。読みますよ?ライトノベルとか・・「ライトノベル!!私もよく読みますっ」」

 「秋野 恵さんのなんかいいですよね。Wonder the worldとか」

 「秋野 恵さんっ!!よく読むんですよねー」


中高生などが交わすライトノベルの会話。

秋野 恵とはライトノベル界では有名中の有名で知らない人はいないほどだ

霧也や美佳も大好きな作者である。


 「秋野 恵さんは、旅をしながら本を書いていたらしいですね。世界を見て回ったためか

説得力もありますし、物語の世界に引き込まれそうな感じがします。」


 「そうですねー。私は難しいことはわかんないんですけど、読んでまずすごいと思いました。自分が物語の中にいるようで楽しいです」


九條とアクアは比較的うまくいっている。

気は合えば話もあうし、なによりお互いを尊重しあっている。

だが、アクアは少し目の前の九條に疑いを宿している。


 「あの、九條さん。前に兵庫であった人工能力者計画を知っていますか?」

 「はい。知っていますよ」

 「その時あなたは人間道におりてきてませんでした?あなたの意識を感じたのですが」


アクアは率直に聞いた。そう、

アクアはあの時の指導者の一人は九條ではないかと疑っている

かつて持っていた好意を捨てて、今は敵かもしれないという疑いで彼とあっている。

悲しいことだと呆れるかもしれないが、ほぼ確実なところまで証拠はつかんでいる。


 「はい、おりていました。」

 「そうですか、変なこと聞いてすみませんでしたぁー」

 「いえいえいいんですよ」


九條の顔が今一瞬陰る。

そもそもその証拠というのは何なのかという話だが

一つに兵庫に、人間道におりてきていた。

二つ。これが重要で美佳が話してくれたことなのだが

指導者の外見的特徴が九條 音無と完全一致していた。

名前は彼女は知らなかったらしいから確実ではないが

そして決定的な3つ目

意識ネットワークで調べたところ

最後の一つに九條 音無と書いてあった。

それを見ようとしたらプロテクトが掛けられおり、どうも怪しいと思ったのだった



 「それでは、私はこれで失礼しますね。用事があるので」

 「はい、お気をつけて」

アクアはそういうとお金を置き、走って家に帰る。

そして霧也にメールを送ろうとしたけど、やめた。

なにも今じゃなくてもいいなと思った。せっかく楽しんでいるんだし。


 「ただいまぁーっとぉ~・・・!!」


少し力が抜けた。霧也が意識エネルギーを使ったのだ。  

 ≪もう、なんで私の使うのよ。てか、遊園地でなんで使うのよ≫

 ≪わりぃわりぃ。ちょっとエキサイティングでさ≫

 ≪もう・・私疲れてるんだからほどほどにしてね≫

 ≪じゃ、私もう寝るからね?使いすぎないでよ?≫

 ≪うん。わかった。ありがとね、おやすみ≫

霧也は礼を言った。

言ったという表現はおかしいが、アクアにはそういう感じに思えるのだ。

 ≪おやすみ。きりや≫

アクアはすぐ寝入った。

時刻は午後6時。

日が傾きつつあるころ。

かなり早い就寝。










そして朝。

午前8時

 「やばいっ寝過したぁっ!!」

今日は霧也との約束。

そこで九條のことを話そうとアクアは考えていた。

 ≪きりや?起きてる?≫

 ≪起きてるよ?何?また遅刻?≫

 ≪ごめんっすぐ行くからぁっ≫


アクアは遅刻常習犯。

それは昔から変わらずだ。

今日も軽く1時間遅刻。

 「さてと~っ!準備ぃー」

アクアは鏡の前に駆け込んだ。

準備には最低10分かかる

 ≪ちょっと~早くしてよ~?みんな待ってるんだからさあー≫

 ≪ごめんごめん。もうすぐおわるからぁっ≫

アクアは準備(まぁ髪を整えたりしているくらいだが)をしながら答える。

 「よし。終わりぃー」

 ≪場所どこだっけ?≫

 ≪家だよ≫

 ≪りょぉ~かいー≫

アクアは意識した。

人間道の霧也の今の家を。

するとアクアは消える。


 「あ、来た来た」

 「遅いよ~アクアちゃん」

 「美佳ちゃんごめん。みんなもごめぇ~ん」

アクアはぺこぺこお辞儀を3回程度しながら誤る。

みんなはいいよいいよとなだめる。

 「で、まずアクアちゃんの話から聞くぜよ~」

 「そうしよう」

 「えっとねぇ~この前っていってもかなり前だけど

人工能力者計画の真の首謀者についてだよ」

霧也と美佳はくいついた。

美佳は若干うつむいて、顔を曇らせている。

 「えっと、美佳ちゃん」

 「あ、うん?」

 「この人に見覚えない?名前は九條 音無」




そういいながら写真を美佳に見せる。

 ≪九條音無ってアクアとよく出かけてた人?≫

 ≪そうだよ…≫

 ≪そっかぁ…≫

 「あぁーっ!!!この人―!!」

 「やっぱりね。間違いなかったんだね…どうする?捕まえる?」

 「アクア…アクアはいいのか?捕まえちゃって」

 「…いいんだよ。そのほうがいい」


アクアは少しうつむいてでも明るい口調で言う。

霧也は「そっか…」とだけ言い、うつむいてしまった。

 「とりあえずこの話は保留にするぜよ~次は霧也の話なぁー」

 「あぁ…うん」

霧也は顔を上げた。

そして、重い口を開けて言う

 「おれはねあれからいろんなことを思い出してさ」

 「そいで?」

 「自分の中にはとんでもない化け物がいるらしい…」

 「ほぅ…化け物…?」




 カッミノは表情を変えた。

美佳はとにかく変な顔をして聞いている。

 「きりや…それって…」

 「アクアの御察しの通りだよ。魔剣っていう意識エネルギーのことさ」

カッミノは立ち上がった。

 「どうしたの?カッミノさん」

美佳はかなり疑問に思っている。

なにもいきなり立ち上がることないのに

 「魔剣…!ようやく見つけたぜよっ!!」

 


カッミノはナイフを構え出す。

美佳は必死に止めようとする。

 「どうしたの!?カッミノさん。コッロさん何か知ってるんですか!?」

 「うちらはねイタリア首相から直々に魔剣を殺してこいと命を受けたの。

今は便利屋を能力者と一緒にやってるからってあんな依頼だしてね

だけど魔剣についての記憶がないみたいだった。だから思い出してから殺すことにしたの」

 「つまり…霧也を殺すって言いたいんですか?」

カッミノは美佳を弾き飛ばした。

 



「美佳!!…カッミノ、殺せるなら殺すがいいさ。だけどおれはまだ死にたくない!」

 (騎士霧也戦闘起動:思考回路を秒速10kmに固定。運動制御解除。運動速度を分速10kmに固定。意識エネルギー放出:魔剣)

最後にいやなワードが出てきたことを霧也は気付かなかった。

知らないうちに魔剣を出していることも。

 「アクア!やるよ!」

 「は、はいっ!」

アクアは剣に変わり、霧也の手に吸い込まれていく。

 「やっとお出ましぜよ、魔剣士!!」

 「おれは魔剣士じゃないっ!!」



霧也はカッミノに向かっていく。

美佳は壁で気を失っている。

コッロはテレポートして霧也の後に回り込む。

それを霧也がみねうちで斬る。

当たった。

 「ぐふ…!」

 「2回連続同じものをテレポートできない。それを忘れていたか?コッロ」


霧也は序々に声のトーンが変わっていく。姿も黒い意識エネルギーに包まれていく。

 「きりや…やめてっ!意識エネルギー放出を止めてっ!!」

 ≪ごめん。無理だ…おれの意思が通じない。もう自分の意思で喋ることも…≫

霧也は完璧に魔剣にのまれた。

そしてアクアが弾き飛ばされる。

霧也…いや魔剣の手には黒い剣が現れる

 ≪きりや…≫

アクアは、元の人間の姿に戻る。

そして、手だけを剣化して霧也に立ち向かう。

 


 「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス…」

 「なんぜよ…こいつ、まるで」

 「まるで化け物ね」

 「この中にはきりやがいます。魔剣だけを剥ぎ取るのはできるのでしょうか?」

 「そうね…やってみないとわからない」

 「そうですね…」

 ≪きりや、今助けるからね!≫



アクアは駈け出す。魔剣は、悠々と構えている。

アクアは魔剣に近づくと、剣化した手を中段で横に薙ぎ払う。

魔剣は、よけることもせずそれを“素手で“はじいた。

アクアは吹き飛ばされる。

カッミノがアクアの移動速度を落としたので、壁に当たっても怪我をしなかった。

カッミノが銃を取り出し、魔剣に向けて撃った。

 「ベクトル:秒速10km」

その刹那、銃弾が在り得ない速度で魔剣の腹を貫く…

はずだったのだが、あっけなくその銃弾は弾かれる。

 コッロはマルチスキルを駆使して必死の闘争を繰り広げる。が、虚しく左腕を斬り裂かれた。

地面に倒れ伏す。

 「こんなものか。」

 「きりや…っ」

魔剣は皆に背を向け、立ち去ろうとした。

そのとき…

家のドアが開く音がした。

開く。といっても、それは乱暴で、ドアを壊してしまいそうな勢いであった。

ドアの方を見やると、そこには“例の”市谷 宗が立っていた。

大きな大きな剣を携えて、ただ魔剣を睨みつけている。

 「っちぃ…っ遅かったか…」

 「祐一…さん?」

祐一はそれだけ言うと、剣を構えた。

そして、魔剣に一直線に飛びかかる。

 (騎士宗戦闘起動。脳内回路を秒速15kmに固定。運動制御解除。運動速度を秒速10kmに固定。意識エネルギー放出。)

目に見えない速さで魔剣に飛びかかる祐一。

まともに見えるのはアクアだけだろう。

宗の尋常じゃないほど素早い動きに呼応するように魔剣もだんだん速度を上げる。

宗赤黒い意識エネルギーを垂れ流し、それらを大いに活用して戦っている。

が、この狭さじゃなかなか意識エネルギーを使えない。

家が壊れてしまうからだ。



といっても、もう十分に壊れているのだが…

だけれどここはアパートメントなので、意識術を使ってしまえばアパートごと粉砕してしまうだろう。

そうなると被害は甚大だ。

だから宗は剣とその動きだけでこの魔剣という化け物と渡り合わなければならないのだ。

右から左から前から上から後ろからと四方八方から飛んでくる剣撃を宗はなんなく弾き、つばぜり合いになったときには、赤黒い意識エネルギーを相手に流す。

人間の脳は自分と違う異質な意識エネルギーを感知すると、脳がパニック症状を起こしてフリーズしてしまう。

だが、騎士の脳にはそれに対抗するプログラミングが施されているので、一瞬フリーズするだけだ。

だけれど、騎士の戦いにおいてそのほんの一瞬が命取りになるのだ。

宗はその隙を狙って、魔剣の腕を一刺しにした。

今はこんな化け物だが、中には霧也がいる。

だから急所を外し、戦闘が不可能な状態にしようと思ったのだ。



 「…っ…腕が…腕がぁぁぁ…っ!」

 「…これでもう剣は握れまい。…はぁ、はぁ…観念…する…んだな。」

 ≪おぉいおぉぃ、宗ぃ大丈夫かよぉ。息、上がってるぜ≫

 ≪大丈夫だ。久々に戦闘起動したから、疲れているだけだ。≫

 「痛いぃ…痛いぃぃいぃぃぃぃぃぃいぃぃぃっぃ!」

 「なんだ?」

急に魔剣がうなりだした。

先ほど斬られた腕を押さえているのでなく、胸を押さえている。

 「あぁあぁあぁぁっぁぁぁあああぁぁ…」

 「なに…なんなの?」

 「あぁぁああああぁぁっぁああぁぁ…もう、もう痛いのは嫌だ。あぁあぁあああぁっぁぁあぁぁっぁああああああ!!」

魔剣は胸を押さえたまま、翼を広げてどこかへ飛び去って行った。

残された4人は何が起こったのか分からない様子で魔剣が飛び去って行った後をぼんやりと眺めている。

ただ、この時同時に霧也が…どこかに消えた。

魔剣の消失と共に…


復活です


いやー、共同だったから

相方いなくなると大変ですね

でも大丈夫です

ちゃんと終わらせます


主人公、どこかに消えちゃいましたね

ここからが本番です

やっと本番。

楽しみにしててくださいね



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