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079 宝島~ブレドウィナー③~

 「残りのピラーは何だと思う?」

 

 澄狐は誰ともなくそう問いかける。

 

「どこになるのだろうな。『どこの海なのか』ってのは今回全然問われていない気がする。」

 

 誠は誠なりに考えているようである。

 

「ただ、ズレているんだよな。どうしてもここがムー大陸であると思えない。ムー大陸にあるはずのないルーン文字。そして7つの海が仮に、仮にだよ? 現代ではなく中世の海を示しているのだとしたら……ムー大陸説は完全に覆る。」

 

 シゲにとってはどうしても合点がいかない点の方が多い。

 

「そこまで真剣に読み込む必要があるのかな? ゲームなんだから寄せ集めても不思議じゃないよね?」

 

 ハナはやはりどこか楽天的に物事をとらえる。

 

「今一度基本に立ち返っちゃどうだ?」

 

 俊也が話をいったん切る。

 

「基本とは?」

 

 ペインが俊也へと確認をする。

 

「そりゃ、『た〇しの挑戦状』だよ。元々はそこからだっただろう?」

 

 俊也は当たり前という風に言ってのける。そしてシゲはすっかり忘れていた。そう、全ての始まりはシゲが始めた宝島の地図がスタートなのだ。

 何ともインチキ臭い、誰も信用しない、一見するとゴミクエスト。

 そこから始めた宝島の捜索だったのではないかと。

 そう考えるとどんな出鱈目も、どんなインチキも許されてしまう。

 何しろ元ネタは『世紀のバカゲー』なのだから。

 

 ここまで考えてのクエスト設計だったとしたら、LAO制作陣は間違いなく天才である。

 このクエストの神髄は『矛盾を受け入れろ』という事に他ならない。

 そこでようやくシゲは腑に落ちたような気がする。

 

 8人はそのまま、一番近くのピラーへと近づく。

 まっすぐにピラーを見る者、周囲に注意を払う者、普段通りのリラックスした者。

 バラバラのスタンスこそがこのメンバーの強みである。

 そしてその時は急に訪れる。

 

 ゴゴゴゴゴゴという地鳴りにも似た音が鳴り響くとピラーの前に突如として三体の怪物が現れる。

 一体は巨大なウミヘビの様な姿を持ち、二体目は巨大なイカの様な姿を持つ、そして三体目は上半身は女性で下半身は魚類のような姿を持つ。

 ボスラッシュとはよく言ったものでここにきて大型モンスターがそろい踏みである。

 

「リヴァイアサンにクラーケン、あと一体は……人魚か?」

 

 誠は剣を構えて問いかける。

 

「人魚よりセイレーンかな。歌声には注意が必要だ。各個撃破が望ましいが、いっぺんに相手をするしかなさそうだ。」

 

「じゃ、歌声対決と行きましょうかね。」

 

 そういってハナはセイレーンへとターゲットを絞る。

 

「女の姿は殴りにくいじゃろうて。ワシもセイレーンを担当するかな。」

 

 澄狐もターゲットをセイレーンへと決めた。

 

「俺はクラーケンかな。」

 

 誠はクラーケンへと対峙する。

 

「俺も。」「ボクも。」

 

 俊也とステファもクラーケンを相手にするようである。

 

「俺達はリヴァイアサンか。」「そうね。」

 

「では俺はいつもの通り、多角支援を。」

 

 全員がこくりと頷くと一斉に自分の担当するモンスターへと襲い掛かる。

 

「ウィンドアロー!」

 

 シゲは全ての敵に対して基礎魔法で弾幕を張ってだれがどのモンスターへと向かうのか攪乱させる。

 基礎魔法はダメージを与えるよりも、弾幕として使用したほうが効率がいい。

 基礎魔法を一極集中するのであれば単純な削りともして使用可能だが、今はチームで動き時である。

 各アタッカーの初撃は確実に与えておきたい。

 

 セイレーンはシゲの弾幕の中、奇声ともとれる高音の歌を歌う。

 その音は耳をつんざき、思わずハナと澄狐は耳を塞いでしまう。

 

 一方で誠と俊也は奇襲に成功し、クラーケンの足に向かって切りつける。

 的確なダメージが入ったかといえば疑問だが、少なくとも刀傷を与えることはできている。

 

「ちいっ、切り落とせるかと思ったんだが。」

 

 誠はその大剣を使って足の一本を切り落とすつもりで攻撃していたのに、刃は表面を切るだけで終わってしまった。

 

 そしてルカは即座にドラゴンの姿へと変身すると、並走して走っていたペインはひらりとその背に乗る。

 そしてそのまま上昇すると、シゲの弾幕に続いてリヴァイアサンへと突撃していく。

 ルカは火炎を吐き、リヴァイアサンを怯ませるとペインはすれ違いざまにランスを目にもとまらぬ速さで何度も突く。

 リヴァイアサンはその攻撃を受けると大きく吠える。

 そしてどこからともなく大きな波を発生させて大水を呼びこんでくる。ルカは寸前のところで大水の波を避けて上空へと飛びあがる。

 後ろにいたシゲはルナの足に捕まり、ルナはうんうんと唸りながらシゲをなんとか上空へと引き上げる。

 

「おとーさん、無理だって。重いって。」

 

「俺は軽いほうだぞ。」

 

「そうじゃなくてええええ。私の羽根はルカさんのとは違うのおおおおお。」

 

 波が小さくなると、シゲは手を放して地上へと舞い戻る。

 ようやく軽くなったルナはブンブンと羽音を鳴らして快適に飛び回る。

 シゲは常に全体を見渡す。誰が、どんな攻撃を仕掛けようとしているのか。

 どこで、モンスターはどんな攻撃をしてくるのか。

 必要な補助は何か、必要な声掛けは何か。

 シゲはいつもの煙草を咥えて火をつける。

 

 そしてまず支援が必要なのはハナと澄狐だと判断する。

 シゲはアイスランスをセイレーンに向かって何発も飛ばす。

 セイレーンは空中を泳ぐようにアイスランスを避けていく。

 ハナはその間にバフをかける。攻撃力上昇、移動速度上昇。

 澄狐はフットワークを使いながらセイレーンへと向かって距離を詰める。

 

 シゲのアイスランスはセイレーンの移動方向を限定するのに効果的である。

 なにもダメージを与えるだけが魔法ではない。魔法とはもっと自由で、もっと遊ぶべきものであり、同時に畏怖しなければならないものである。

 阿吽の呼吸で距離を詰めた澄狐はセイレーンへと拳を叩き込む。

 澄狐のパンチは決して軽くない。打ち出しは軽いがインパクトの瞬間にしっかりと力を入れる為、確実にダメージが入る。

 そんなパンチを秒間に何発も打ち込む。しかしセイレーンは怯まない。ダメージが入っている感じがしない。

 スライムでも殴っているかのような実感のなさが、拳から伝わってくる。

 

 澄狐は即座にパンチの連打から切り替えてセイレーンの腕を取りに行く。

 関節技や投げ技へとつなげる為である。

 しかし、ぬるっとした感触だけが残りセイレーンは澄狐に捕まれることなく脱出する。

 

 だが、連携はここで途切れない。

 今度はバフを入れ終わったハナが両手にシミターを持って迎え撃つ。

 セイレーンへと一度、二度、三度と斬りつける。

 そこでようやくダメージらしいダメージがセイレーンへと入る。

 セイレーンは怯むかわりに息を吸い込み、また奇声をあげる準備をする。

 

 ハナは「わっ!」と大きな声を出すことでセイレーンの声を打ち消そうとする。

 完全に打ち消すことはできなくとも、多少の効果はあった。

 

 三匹同時のボスクラスのモンスター攻略は始まったばかりだった。

 

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