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077 宝島~ブレドウィナー①~

 「なぁ、封印って解いたんだよな?」

 

 そう語りかけるのは誠である。

 ハナも上を見上げたままぽかんと口を開けている。

 

「解いたはずなんだがな。」

 

 そう答えるのはペインだった。

 

 ピラーの封印を解いてブレドウィナーへと向かってきたはずである。

 しかし肝心のブレドウィナーは周囲に三角形を描くように三本のピラーによってバリアのようなものが張り巡らされている。

 しかし今までの様に、ピラーの前に石碑はない。どうすればピラーを攻略できるのかがわからない。

 

「お茶にしませんか? ステファさん程、美味しいものは用意できませんが。」

 

「そうしよう。ついでに昼寝もしたい。」

 

 ルカは敷物を床に用意し、アイテムボックスからランチバスケットと紅茶セットを取り出す。

 ハナと誠も諦めたようでルカの用意した敷物に腰を下ろす。

 ランチバスケットの中身は色とりどりのサンドイッチ。チーズにハム、ポテトサラダ。そしてきちんとレタスもみずみずしいまま保たれている。

 4人は思い思いにサンドイッチをとり、食べる。そして紅茶を飲んでのんびりする。

 

 ペインは食べ終わるとあっさり横になり寝始める。誠も少し目を閉じる。

 ルカは片づけを始めているし、ハナはふんふんと鼻歌を歌いながら空(?)を見上げている。

 のんびりとした時間が流れる中、それぞれ束の間の休息をとる。

 1時間も経過したころであろうか、遠くでピラーが解放された音が聞こえる。

 するとブレドウィナ―を守護するかのように立っていた3本のピラーの前にそれぞれ石碑がせり上がってくる。

 

「ペインちゃん、動きあったよ?」

 

 ルカは優しくペインを起こす。一方でハナは誠を足の先でつんつんと突くだけである。

 誠はそれだけで起きるが、ペインはむにゃむにゃと起きる気配がなかなかない。

 それでもルカは献身的にペインを優しくおこし続ける。

 

「蹴っ飛ばして放っておけばいいのに。」

 

 ハナは無碍もなく言い放つ。

 

「ペインちゃん、可愛いじゃないですか。庇護欲を満たされるっているか。本当に戦う事しか能がなくて……。それも一人じゃ朝起きれないし、クエストもちゃんととってこれないし、現場に行ってもなかなかやる気にならないし。ほんっとーに手がかかって、可愛いです。」

 

「本当に私の血縁なのか疑うわ。」

 

「でもシゲさんも結構抜けてたりしません? 実生活はポンコツというか。」

 

「シゲはそんなことないよ!」

 

 ハナは激しく否定するがルカは続けてハナに質問する。

 

「でも、潜水艦生活暫くしてましたけど、シゲさん朝弱いじゃないですか?」

 

「て、低血圧なんだって言ってた……。」

 

「へー。なんか年取ると血圧って高い人多いじゃないですか。本当に低血圧なんですかね? ってかLAOの世界に血圧って関係します?」

 

「……シゲは夜型だし。」

 

「LAOの、しかも閉鎖された潜水艦の中で夜中にすることなんて……なにかあります?」

 

「うーん。なにか新スキルのMOD開発とか。」

 

「それはそうと、ハナさんちゃんと原稿書いてます? 編集さんから私に連絡来るんですけど?」

 

「うっ……。」

 

「意外とこのギルド、ちゃんとした人がいないというか。結構ダメな大人揃ってますよね。」

 

「ま、その辺ちゃんとした大人なら『廃人』なんて呼ばれたりはしないわな。」

 

 誠は目を開けて立ち上がり伸びをしながらルカの素朴な疑問に答える。

 

「結局、『廃人』って何なのです?」

 

 伸びをし終わった誠がルカに説明を始める。

 

「昔々、インターネット黎明期のあるところに吐きだまりとも言えるような匿名掲示板がありました。」

 

「あー。しってます。5chでしたっけ? なんJ民とかなんとか。」

 

「それよりもずっと前。2chだった頃だな。そこにオンラインゲーム板っていう掲示板があって各MMORPGのスレッドが立ってたんだよ。」

 

「へー。匿名掲示板ってそんな昔からあるんですね。」

 

「で、その中に『偉人・廃人スレ』ってのがあったんだよ。とにかくLvが高いとかプレイヤースキルがやばいとか、誰も持ってないレアの装備を持っているとか。」

 

「今の匿名掲示板とそんなに変わらないですね。」

 

「ひがみ、やっかみは人間の業だよ。なくなることはない。その中でギルドメンバー全員の名前が出たのが、うちのギルドってわけ。プレイヤースキルが高いってのもあったけど、一番はログイン時間が長かったからなぁ。」

 

「皆さん、大学生とかですよね?」

 

「ああ、みんな留年した《ダブった》よ。」

 

「そんなにゲームしてたんですか!?」

 

「してたねぇ。医学部なんて留年して《ダブって》なんぼだよ。元々難しいから。」

 

「いや、ペインちゃん。今の時代はAI使うからそんなに医学部だって留年しないよ?」

 

「時代が違うんだよな。ジェネレーションギャップって案外あるよな。」

 

 ペインは身体を起こして首をコキコキと鳴らす。

 

「で、誰が一番の廃人だったんですか?」

 

「へ?」 「え?」 「なに?」

 

「いや、一番の廃人は誰だったのかなーって。」

 

「そういや、ランキングとかあった気もするな。」

 

「50年も昔の事、覚えてないよ。」

 

「瞬間最大風速というか、ツボに入るようなイベントの時はシゲがとにかくずっとログインしてたよな。」

 

「平均的にログイン時間が長かったのって案外ハナじゃないか?」

 

「まぁ、私は足もアレだったし。ログイン時間長かったとは思うけど、廃人かなぁ。」

 

「それはそれとして、3本のピラー攻略ってどうします?」

 

「それは。」 「ねぇ。」 「待ち一択だろ。」

 

 ハナ、誠、ペインは三人の顔をそれぞれ見合わせて同じことを言う。

 

「シゲも俊也もいないんじゃなぁ。」

 

「あ、やっぱり俊也さんかシゲさんいないと謎解きとかダメな感じですか?」

 

「ダメではないんだろうけど、まず宝箱は開けられん。あとは今回ステファのルーン文字も必要だっただろ。」

 

「そういえば、確かに。」

 

「シゲは逆に『違和感がある』とか言ってそう。」

 

「あーわかるわかる。シゲって深読みしすぎる時あるよね。」

 

 なぜかこの話は4人全員がうんうんと頷く。

 

 結局、選択は待ち。そのうち残りの4人もここに集う。何も焦る必要はない。

 ペインは再び横になるとあっという間に眠りに入り、誠は覚醒してしまったためか大剣を振り回している。

 逆にハナはこっくりこっくりと舟をこぎ始める。

 

 何と自由な事かと、ルカは少し呆れ気味になりながらも

 こんなメンツが自分と同世代にいたら別の人生もあったのかもしれないと少しだけ思う。

 人間関係で羨ましいと思ったことは今までなかったが、こんな気持ちは初めてかもしれない。

 そんなことを考えながらルカも静かに目を閉じるのであった。

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