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075 宝島~澄弧&シゲ②~

 「シゲよ、小手装備を作成してもらえんか?」

 

 澄弧が唐突にシゲへと武器なのか防具なのかわからないものの作成を要望した。

 

「小手? 攻撃用かい? 防御用かい?」

 

「どちらも満たせるのが望ましい。ただ、目的はどちらかといえば防御じゃな。特に左手の前腕に大きくなくてよいからラウンドシールドを付けて欲しい。」

 

「ラウンドシールド? 丸盾かい?」

 

「あぁ。指先はオープンフィンガーでなくては困る。むしろ手の甲までの長さがあればいい。」

 

「それだと拳を痛めるぞ?」

 

「いいんじゃ。防御を優先したい。」

 

「合気道の神髄は相手の攻撃を利用する事だろう? 盾で防いでちゃ意味がないだろ。」

 

「いや、まぁ。そうなんじゃがの……。」

 

「まさか……。師範代、『観た』のか?」

 

 初めてシゲが澄弧の家を訪れた時、本当にたったひと言放っただけ。まさか本当に観るとは思わなかった。

 ただ、澄弧の好みであろうとは思っていた。元々澄弧はルパン三世では次元が好きだと公言していたし強くて渋いキャラに惹かれる傾向はある。

 

 聖闘士星矢のドラゴン紫龍。

 髪は長く、友情に熱く、敵に対してだけではなく自分に対しての強さを併せ持つ。

 ドラゴン紫龍の聖闘衣《クロス》には左上腕部にラウンドシールドがあるのが特徴となっている。

 澄弧は控えめに下を向きながら話を続ける。

 

「パチンコやパチスロになっているのは知っておった。ただ、原作の漫画の絵がどうにも受け入れにくくてな。話がわからん台は手が出しにくかった。」

 

「パチンコ台は全部コケたんだったかな。スロットの方は人気になった機種がいくつかあったと思うが。」

 

「その頃はもう、ほとんどやっておらんかった。」

 

「5号機以降はもう『遊戯』の範囲を超えていたからね。」

 

「まさかドラゴンがあんなに格好いいとは思わんかったんじゃ……。」

 

「だから『青龍』の話をしてきたのか。」

 

「それもある。」

 

 シゲはふうと一息つくと足を止めて隣にいる澄弧に向き直る。澄弧は一歩進んだところで振り返る。

 

「隠すことではないから先に言っておく。俺の使う『陰陽師』のスキルは非常に危うい。ルナは初めから『式神』として用意されたNPCでありAIだ。これは西洋における基礎魔法が、日本における基礎魔法に置き換わった場合陰陽師が基礎であり、基本であるという事を示している。更に陰陽道についても安倍晴明を祖とするものと、芦屋道満を祖とするもので微妙な違いがある。これはカトリックとプロテスタントみたいなもので相いれない一方で、物語なんかではよく対立構造にされる。しかし、個人的には『陰陽道』という単語自体が主語としては大きいのが原因だと考えている。」

 

「ふむ。」

 

「そしてこれはハナには伝えてあるが、四神を降ろす為には俺との契約が必要になる。これは『従属』の契約だ。決して破られることのない契約。俺が死ねば解放されるだろうが、そのくらい四神を降ろすという行為は術者との密接性を求められる。式神に使う呪符だって俺の血を混ぜて書いている。案外、陰陽道というのは面倒くさいんだよ。」

 

「ハナは喜んで『従属』契約したじゃろ。」

 

「散々注意はしたのだがな……。」

 

「50年の片思いじゃ。従属契約なんぞ飛びつく理由にしかならん。」

 

「俺は……。」

 

「知っておる。シゲは生粋のゲーマーじゃ。そしてゲーム馬鹿じゃ。スマホゲームの時代は辛かったじゃろう。努力ではなく課金で強くなれる。しかも確率でのガチャを回して強キャラを引けるか引けないか。更に言えばアニメや漫画とのコラボばかり。その度に限定のガチャが出てきては消えていく。そこに在るのはサービスが終了すれば藻屑となる脆弱な、刹那的な暇つぶし。」

 

「ファンタシースターオンラインはよかったよ。」

 

「だが、それすらも仕事で忙殺され離れざるを得なかった。」

 

「否定はしない。」

 

「今はどう? LAOはシゲにとってどうなんじゃ?」

 

「楽しんで……いると思う。」

 

「じゃあ、必要な事はわかるじゃろ?」

 

「それとこれとは話が別だ。」

 

「一緒じゃよ。ワシも力を望み、シゲも力を得る。そこに誰も損はない。」

 

「それは『従属』を甘く見過ぎだ。」

 

「別に生娘という訳でもあるまいし、夜の相手くらいは勤めても構わん。」

 

「そうことじゃない。そもそも俺はアダルトMODを入れていない。」

 

「入れてしまったほうが楽になるのではないか? ハナも喜ぶじゃろうに。」

 

「違う。俺はゲームにそんなことを求めているんじゃない。」

 

「エロゲソムリエを名乗っていた者が何を言う。」

 

「それはそれだ。これは違う。」

 

「何が違う? 同じゲームじゃ。」

 

「これは仮想であり現実なんだ。」

 

「どっちにしてもゲームじゃよ。」

 

「俺達はチームだ。サークルじゃない。遊びじゃないんだ。」

 

「サークルじゃよ。遊びじゃ。面白おかしく余生を送っている最中じゃ。」

 

「くっ……。考えて……おく……。」

 

「今はそれで十分じゃ。」

 

 そして二人は再び歩きだし、程なくしてピラーの根元へと辿り着く。

 澄弧はシゲとの問答の後、少し怒っていた。いや、かなり怒っていた。

 ハナは許容されて、自分が許容されないことに。自分に四神の力を与えないシゲに対して。

 

 澄弧は乱暴に石碑のくぼみに手を当て、メッセージも読むことなく拳を構える。

 現れたのは石の牛。それも巨大な牛である。

 石の巨牛は闘牛のように前足を何度か床で掻くと澄弧に向かって突進する。

 澄弧はそんな石の巨牛の角を真正面から掴むと、そのままバックドロップの要領で投げ飛ばす。

 ドシンと巨大な音が立ち、粉塵が巻き上げられ、世界が揺れる。

 

 そんな粉塵に澄弧は単独で突っ込むと態勢の整わない石の巨牛にむかって拳をぶつけ続ける。

 目にもとまらぬ速さで純然たる暴力を石の巨牛へと叩きこむ。そこに慈悲はなく圧倒的な力でただひたすらに打ち込んでいく。

 

「師範代!」

 

 シゲがそう叫ぶと澄弧はジャンプして大きく後ろへと引く。

 シゲはルナの背中へと五芒星を描き呪文を唱える。

 

「元柱固具、八隅八気、五陽五神、陽動二衝厳神、害気を攘払し、四柱神を鎮護し、五神開衢、悪鬼を逐い、奇動霊光四隅に衝徹し、元柱固具、安鎮を得んことを、慎みて五陽霊神に願い奉る 青龍!」

 

 ルナは水を纏った龍となり石の巨牛へとまっすぐに飛んでいきその強靭な顎で巨牛へと噛みつく。

 そしてそのまま青龍は空中へと登り、空中で姿勢を変えると地上に向かって勢いよく降りてくる。

 地上で待ち受ける澄弧は両足で地面をしっかりと踏みしめて、青龍の勢いをそのままに拳を突きあげて石の巨牛を真っ二つに割る。

 それはものの見事に、左右がぱっくりと分かれ石の巨牛は地面へと転がった。

 ルナは青龍から姿を戻し、シゲの横に立つ。

 

 ふうと澄弧は一息つくと石の巨牛を軽く蹴とばす。

 こんなものかという感情と、怒りの感情を吐き捨てるのだった。

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― 新着の感想 ―
唐突で恐縮ですが、最近の気になりポイント。 師範代のお名前は、澄弧?澄狐? うろ覚えな記憶なのですが… 前に、名前のとおりに狐面つけてるって読んだ覚えがあったような、気のせいのような…(-ω- ?)
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