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072 宝島~ルカ&ペイン②~

 「これでようやくピラーの根元か。」

 

「たっぷりと一時間以上散歩させられたけどね。」

 

 ルカはのんびりと歩いたことを皮肉っぽく言う。

 ペインの移動速度は遅い。これは重装備が故である。

 7人の中で一番移動速度が遅い。全身鎧《メタルプレート》にランス、盾を持ち歩けばどんなに筋力があろうと移動速度に影響が出る。

 一応スキルで『突撃』が存在するので、それを使えば十数メートルではあるがランスを構えて素早く動くことができる。

 とはいえ、連続してスキルを使用することはできないし、スキルの発動中は攻撃態勢にはなるものの防御はできない。

 結局周囲を警戒しながら歩くとなると、ペインはガシャガシャと音を立てて歩き、ルカはのんびりと散歩するペースになる。

 

「しかし見どころがない場所よね。」

 

 そう漏らすのも無理はない。ピラーに向かってくる道は石畳で一直線。道の傍らに草花が生えているようなことはないし景色が変わり映えすることもない。

 ただ、遠くに見えていたピラーがどんどんと大きくなっていくだけである。

 そしてピラーの周りに何があるかといえば、石碑のようなものが一つあるだけである。

 ペインは石碑に近づき、石碑に記された文章を読む。

 

『恐れを知らぬ冒険者よ、頑丈なる騎乗者に挑まん。』

 

 そして手のひらを合わせる窪みがある。ペインは迷うことなく手をかざす。

 ゴゴゴゴゴという音がどこからともなく鳴り響くと、石の馬に騎乗した巨大な石像が現れる。特徴は顎から長いひげを生やしている事であろうか。

 その姿はまるで三国志の関羽 雲長を思わせるような姿である。装備しているのは石の巨大な長刀。

 ペインはルカの前に回り込むと盾をかざして相手の攻撃を待つ。

 ペインは基本的にカウンターによる攻撃を得意としている。まず守る。そして攻撃へと転じるのである。

 先制して攻撃を行っても良いのだが、それだと相手が格上の場合想定外のダメージを負う可能性が残ってしまう。

 ペインの優先事項は回復術師《ヒーラー》であるルカを守ることにある。ルカが動けなくなるようなダメージを負っていなければ自分の事は回復してくれる。

 つまり、動き続けられる。戦い続けられる。それは即ちコツコツと攻撃を当てさえすれば相手は倒せる。

 ペインが基本に忠実といわれる所以はここにあるのである。

 

 石の関羽はその高さとリーチの長さを生かしてペインへと執拗に長刀で攻撃してくる。

 ペインはその攻撃を盾で受け流す。石の関羽の攻撃は上下左右、的確に攻撃をしてくる。

 ペインはその軌道を読みながら盾で防いでいく。石の馬がいななくように前足をあげてその勢いと共に石の関羽は大きく長刀を振り下ろす。

 ペインはそれさえも軽々と盾で受けきり、馬へとランスへ突き刺すように攻撃を行う。

 一度突いたくらいでは石の馬はびくともせず、石の関羽は一度ペインとルカから距離をとる。

 

「石の関羽とはね。」

 

「馬は赤兎馬かしら?」

 

「お、三国志語れるほうだっけ?」

 

「横山三国志程度は。」

 

「令和生まれで横山三国志を語れるのは立派だよ。」

 

「一度しか読んでないからほとんど忘れちゃってるけどね。」

 

「それでもだよ。全60巻はなかなか手を出せるものではない。」

 

「ふふふふっ。電子書籍だから巻数知らなかったのよ。」

 

「さて、それじゃそろそろ頼もうかな。乗せてくれるかい?」

 

「そうね。それじゃ全力で行きましょうか。」

 

 ルカがそういうと全身が光り輝き、レッドドラゴンへと姿を変える。

 ペインはルカの背にひらりと乗ると、ルカは空へ向かって火炎を大きく吐き出す。

 気合十分。いざ鎌倉と言わんばかりにルカは羽ばたくと3メートルほど浮き上がる。

 大きさは違えど、これでようやく石の関羽とペインの目の高さが合うというのだからなかなかに戦いにくい。

 まずは小手調べ。ルカとペインは小細工なしにまっすぐ石の関羽へと突っ込んでいく。石の関羽も赤兎馬の腹を一度蹴るとルカとペインに向かって走り出す。

 ルカは赤兎馬と交錯する際には火炎を、石の関羽とペインは交錯する際に互いに武器を合わせて攻撃を仕掛ける。

 ガキン! とペインの鎧の肩部分へと石の関羽は攻撃を当てる。一方でペインのランスは的確に石の関羽の胸を貫いた。

 互いに駆け抜け反転すると、再び相まみえる。

 確かに貫いたはずの石の関羽の胸の傷は自動的に修復される。

 

「またコアか?」

 

「どうだろう? 赤兎馬と関羽、両方にコアがあるの?」

 

「コアは一点集中で攻撃するしかないし、場所がわからないと何ともしがたいな。」

 

「全部燃やしちゃう?」

 

「石に火炎って効果あるのか?」

 

「まあ、やってみましょう。」

 

 ルカは更に上空へと羽ばたくと、石の関羽へと向かって巨大な火の玉を吐き出す。

 赤兎馬と石の関羽は炎に包まれ爆炎をあげる。

 ペインとルカは炎が収まるのを上空でホバリングしながら状況を見極める。

 しかしその炎がかすかに動くと、赤兎馬は上空へと飛びあがり石の関羽は長刀で攻撃を仕掛けてきた。

 とっさの事でルカは回避行動をとれず、ペインが石の関羽からの攻撃を盾で防ぎルカを守る。

 とはいえ、強力に振り下ろされた長刀の攻撃はルカを地上へと叩きつけるには十分な威力を持っていた。

 ペインはルカが石畳に打ち付けられることがないよう、ランスを突き立てて衝撃を和らげる。

 

「ルカっ!」

 

「大丈夫! ありがとう!」

 

 空中に飛んだ赤兎馬もドシン! という重厚な音と共に石畳へと着地する。

 火炎によるダメージは全くといっていいほど認められない。

 

「ダメね……。」

 

「そのようで。」

 

 戦闘中ほどペインは饒舌になる。これはペインが外科医師だったからという事もあるのであろう。

 外科の手術というのはチームワークが大切である。自分がこれから実施する事、注意する事、してほしい事。

 それらを適切に指示、確認しながら自らの手を動かして手術を実施するのである。

 だからこそペインは普段は必要最低限の事しか喋らない。いわゆる親切な医者というより腕のいい医者というのがペインのリアルでの評価だった。

 

 あえてペインはルカから一度降り、スキル『突撃』を使用して着地したばかりの赤兎馬に向けてランスを前にして突っ込む。

 ペインのランスは赤兎馬の横腹を貫通し、赤兎馬はそのまま横に倒れる。石の関羽はひらりと倒れ行く赤兎馬から降りる。

 そこからはペインと石の関羽はランスと長刀で攻撃に次ぐ攻撃を行う。

 ペインがスキル『連続突き』を放つと石の関羽は長刀の柄を使ってすべての攻撃を逸らし、くるりと回りながら長刀で攻撃をしてくる。

 長刀の攻撃は盾で防ぎ今度はカウンターでランスを突き出す。

 

 互いが互いを敵として認識して互角の攻防を繰り返す。

 ルカはドラゴンの姿のまま一度上空へと飛び立ち、まるで鷹が獲物を狙うかのように一気に急降下し、爪で赤兎馬をがっちりと掴むと再び上空へと飛び立つ。

 そして赤兎馬を前面に出しながらピラーに向けて真っ直ぐに突っ込む。

 ガシャン! と音を立ててピラーと赤兎馬は激突すると、赤兎馬は粉々に砕け散る。一方でピラーには傷ひとつついていない。

 粉々になった赤兎馬の中から赤く発光するコアらしきものを見つけたルカは急降下してそれを咥え、強力な顎で簡単にかみ砕いて赤兎馬を無きものとした。

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