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071 宝島~ルカ&ペイン①~

 ペインはだらだら歩いている。

 それに従うようにルカも歩いている。

 二人はどこまで行ってもマイペース。

 マイペースとはよく言えばの話ではあるが、ペインのやる気のなさを示している。

 

 ペインとはずいぶん長い間一緒にいるが、どのタイミングでスイッチが入るのか計りかねている。

 敵を目の前にした時にスイッチが入るようにも思えるが、実はそうではない。

 LAOをゲームとして楽しんでいるのである。ただ、積極性に欠けるだけである。

 先頭に立って謎を解き、戦いをこなし、レベルアップに精を出す。そんなトッププレイヤーとは違う。

 適切な言葉が見つからないが、空気を楽しむ、雰囲気を愉しむといった感じなのである。

 だからそこにやる気は感じられない。自然体なのである。そしてその真価は戦闘において『後衛を守る』といった際に発揮される。

 50年の時を経た信頼。それが彼らにはあってルカにはないものである。

 

 もっと早くこの人達に会いたかったという思いがルカにはある。

 大叔母と会話をするようになったのも最近の話である。

 ゲームが好きでラノベ作家という大叔母の話は聞いていた。しかし下半身不随で、自宅から出歩くことはないと聞いていた。

 ルカの母親は成績が優秀だったため、大学進学を機に東京へと移り住みそのまま東京へと定住した。

 東京で出会った男と結婚しルカが生まれた。だからルカは本当に近年になるまで大叔母と実際に会ったことがなかった。

 大叔母は伴侶も、子供もいないことから親戚の子供の誕生日やクリスマスには必ず贈り物としてくれた。

 

 それは大きなぬいぐるみの事もあったし、百科事典をシリーズで揃えでくれることもあった。

 成長するにつれて、高級なゲーム機やゲームソフトがプレゼントの場合もあったし、周辺機器のキーボードやヘッドセット、マウスであることもあった。

 それらのプレゼントは高校を卒業するまでずっと続けられていた。

 子供のうちは本当にサンタからのプレゼントなのではないかと信じていた。

 なぜならば両親ですら、今年のクリスマスプレゼントとして何が届くか全く知らなかったからである。

 どうやって大叔母は自分たちの欲しいもの、自分たちが喜ぶものを知り得ているのか全く分からなかった。

 

 今になってみればわかる。

 この元廃人達は誰よりも子供なのである。

 仕事はする。納税もする。そして親となり子を育てることをする人もいる。

 しかし、根本がずっと子供のままなのである。本気で遊ぶ。

 どれだけ斜に構えていようと、どれだけ平静を装っていようと、全力なのである。

 だからこそ子供の欲しがるものがわかる。子供が喜ぶものがわかる。

 童心といえばありきたりだが、それを持ち続けるという事は困難を極める。

 大人になるということは、それだけ何かを諦めねばならないことがたくさんある。

 自分もこんな大人になれるのだろうか。自分もこんな年の取り方ができるのだろうか。

 

 そんなことを考えていると、地震のような地の揺れが発生する。

 そんなに大きなものではない。震度で言うならば震度2程度の軽い揺れ。

 上空から見ていればわかっただろうが、二人の足元に黒い影が近づいてくる。

 嫌な気配を感じたペインは、どんとルカを突き放す。それと同時に地面から急に石のサメが大口を開けて飛び出してくる。

 ペインはサメの口をラウンドシールドで塞ぎ攻撃を防御する。しかしペインは真下からの攻撃を受け、上空へと飛ばされる。

 ペインは空中で器用に態勢を整えると、そのまま真下にむかってランスを向けて反撃する。

 しかし石のサメはペインの攻撃を受ける前に、石畳の中へと消えていく。

 ペインのランスは石畳へと穴をあけるほどの威力を持っていたが、当たらなければ効果はない。

 

 そんな一瞬の攻防をルカは見ている事しかできなかった。

 しかし我に返り、素早く立ち上がるとルカも臨戦態勢へと移行して構える。

 今度はルカの真下に黒い影が現れる。

 

「ルカッ!」

 

 ペインが声を出すと、ルカは素早く後ろへとバックステップで避ける。

 それと同時にペインは飛び出してきた石のサメの顔面へと横からランスで一気に貫く。

 

「お見事。」

 

 ルカはそう言ってペインを褒め称える。

 ゆっくりとペインは貫いたランスを引き抜く。

 

「ゲエエエエエエエエエエエエッ!」

 

 石のサメは声にならない叫び声をあげ、何事もなかったように再び動き始める。

 ランスで貫かれた箇所は破片が集まり修復され、石のサメは再び地中へと潜っていく。

 

「手応えはあったと思ったのだがな。」

 

「急所が違うのかも。」

 

「そうか、では次はもう少し広範囲に攻撃しよう。」

 

 石のサメの影は二人を中心に周囲をぐるぐると回りながら機をうかがっているようである。

 今までは真下から大口を開けて攻撃をしてきたのに対して、今度は二人に向かって飛び掛かってくる。

 ペインはサメの大口に向かってまっすぐにランスを突きつけて串刺しにする。

 石のサメはランスの攻撃を受けて真っ二つになってそのまま地中へと潜る。

 すると今度は二つの影がぐるぐると二人の周囲をまわる。

 

「分裂したってのか?」

 

「なんでもありね……。」

 

「どっちかがアタリだと思うか?」

 

「普通は同時に倒せというわよね。」

 

「龍化は?」

 

「ピラーやブレドウィナーでの戦闘の事を考えるとここで龍化するのは得策ではないわね。」

 

「武器はあるか?」

 

「俊さんから貰ったものがいくつか。」

 

「決まりだな。」

 

 再び石のサメは二人の左右から同時に大口をあけて攻撃を仕掛けてくる。

 とはいえ、一匹の時よりも体積が半分になっている。ペインは一歩引くとラウンドシールドで二匹の攻撃を受けきる。

 ルカは石のサメの横に回ると、いつの間にか装備していたオートボウガンを二頭に向かって乱射する。

 石のサメはボウガンの矢を受け、一瞬動きが停止する。その隙にルカはボウガンから次の武器へと装備を変更する。

 次なる装備は槌。巨大なハンマーである。それをサメの横っ面に向けて振り回してぶん殴る。

 

 たまらず分裂していたサメは再び1頭のサメになるとペインはこれを好機とみてサメの全身に向けてランスをめった刺しにする。

 連続に、執拗に、全身くまなく突き、突き、突き、突く。

 するとサメのちょうど心臓部分に突きが当たった際に違う感触があった。

 ランスの先には丸く赤いコアが貫いており、それと同時に石のサメは静かに砂になって消えていく。

 

 下手な鉄砲でも数撃てば当たる。

 まさしくそれを体現した格好で、石のサメを二人は撃退した。

 そして何もなかったかのようにピラーへ向けて再び歩き始める。ダラダラのんびりと。

 

 

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