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052 宝島~準備編~

 『宝の地図クエストを受注しますか?』

 

 全員の目の前にコンソールが開き、新クエストの受注確認が行われる。

 ただし、YES/NOが押せるのはパーティのリーダーであるシゲのみである。

 シゲは黙って『YES』を押してクエストを受注する。

 

「なあ……どこまで(・・・・)偏っていると思う?」

 

 そう問いかけるのは俊也である。

 た〇しの挑戦状が元ネタとなっているのであれば、この宝島探索というのは間違いなく地雷だらけのクソゲー仕様である。

 元々のゲームの仕様であれば以下のようなことが必須になる。

 

 ・とにかく後にも先にもまず離婚

 ・会社を辞める必要がある(そして退職金を貰う)

 ・語学研修で『ひんたぼ語』を習得

 ・ハンググライダーの免許取得

 ・三味線を習う(一応)

 ・パチンコ屋で敵を倒して三味線に交換(一応)

 ・飲み屋でカラオケを歌う

 ・カラオケにいちゃもんを付けてきた敵を倒す

 ・宝の地図を貰う

 ・宝の地図をくれた爺さんを倒す

 ・南国行きのチケットを購入する

 

 少なくとも日本にいる間はこれだけのことをする必要がある。

 ではLAOでは何をする必要があるのだろうか。

 

「で、宝の地図を売ってくれた古書屋は殺したのだろうな?」

 

「NPCを殺しちゃこんなところにはいれないさ。」

 

「だよなー。NPCへの攻撃は重罪だもんな。」

 

 LAOにおいてPKは認められている。しかし一方でNPCに対する攻撃は厳正な粛清が待っている。

 それはデスペナルティよりも重く一切の街への入場、あらゆるNPCからの買い物、NPCに対しての不用品の販売ができなくなる。

 唯一例外があるとすれば、ステファとシゲが介入した戦争状態の国への従軍であろうか。

 一か月とペナルティ期限はあるものの、内容的には十分すぎるペナルティである。

 

「た〇しの挑戦状だとすべてソロだが、今回はパーティで受注している。と、いうことは片っ端からそれぞれが免許とか語学とか習得すればいいんじゃないのか?」

 

 数の暴力で攻略してしまおうというのは誠の意見。

 確かにそれも一興だが、ゲームを数の暴力で攻略してしまっては面白みに欠ける。

 

「いや、情報収集をしよう。まず、この地図がどこを指し示しているのかがわからない。」

 

「いいね、いいね。ちゃんとゲームしてる。」

 

「調査、分析、実行。それをサボらないから俺達は過去の栄光がある。」

 

「じゃあさ、せめて組み分けしない?」

 

 そう言いだしたのはハナである。

 

「組み分けか……。ソロであれこれ悩むよりはいいかもしれんな。」

 

「私はペインちゃんと一緒よ?」

 

 そう言ったのはルカである。いまやルカもすっかりパーティになじんでいる。

 

「じゃあペインとルカ以外の組み合わせを決めようか。」

 

「ちょっと待った。あと3組のペアを決めればいいんだよな?」

 

 待ったをかけたのは誠である。

 

「そうだが? ぐー、ちょっ、ぱーでいいだろう。」

 

「せめて、せめて男女をペアにしよう。」

 

 誠は悲痛な訴えをする。

 

「えー。」「それはなんか……。」「阿呆。」

 

 女性陣からは不服の声が上がる。調査だけならば特に気にしなくても良いと思うのだが。

 

「し、シゲと組める可能性が3分の1にまで確率が上がるぞっ!」

 

「なるほど。」「それは確かに。」「阿呆。」

 

 結局男性陣と女性陣はそれぞれが別々にぐー、ちょっ、ぱーで分かれて答え合わせをすることになった。

 

「グーの人!」

 

 誠は意気揚々と拳をあげる。

 

「はぁ……。私。」

 

 誠とペアになるのはハナに決定した。

 

「チョキだ。」

 

 俊也は至って普通にチョキを出す。

 

「私だ。」

 

 俊也のペアはステファに決まった。

 

「じゃ、残りという事で。」

 

「わしじゃな。」

 

 残りのパーはシゲと澄弧がペアになった。

 

「じゃあ、このペアで調査をしよう。期間は一週間もあればいいかな。」

 

「妥当なラインじゃな。」

 

「集合は『ゴシックロリータ』としても、この情報って匿名掲示板とかに無いの?」

 

 ハナの疑問は最もである。誰かが攻略してくれているならばその情報に乗っかるのが一番早い。

 

「俺が確認した限りで、宝の地図に関する情報はなかった。と、いうか『宝の地図』という白紙を売り付けられるというダメクエとして扱われてたな。」

 

「そりゃ、た〇しの挑戦状なんて普通は考えないよな。特に若い奴なんかは。」

 

 俊也のいう事は至極まっとうな意見。

 

「ファミコン世代ってそもそもLAOしているの?」

 

 ステファも疑問をもつ。

 

「俺達より上の世代は素直に墓場にいっちまったし、俺達より下の世代はスーパーファミコンからだろうし。」

 

 誠が世代によってゲームハードを分けようとする。

 

「まて、メガドライブは……。」

 

 シゲがSEGAについて語ろうとするときは危険である。

 

「はいはい。ゲハ(ゲームハード)の話はそこまで。SEGAが混ざると面倒くさいからね。」

 

「ぬっ……。今回は引くか。」

 

 シゲがSEGA愛を語る前に話は終わらせられた。

 

「それじゃ、ペアに分かれて……。」

 

 早速動こうとするのは澄弧、ステファ、シゲの三名。

 

「いやいやいやいや。今日はバカンスでしょ。お休みでしょ。明日からで良くないか?」

 

 誠は必死に真面目組を止めようとする。

 

「まぁまぁ。今日ぐらいは。」

 

 ようやく口を開いたのはペインである。

 本人がダラダラしたいだけというのは見え隠れしているのだが三人は素直に従う。

 

 日も暮れて、誠は大量の花火を取り出してみんなに配る。

 

「やっぱ締めは花火っしょ。」

 

 50年前、同じくMMORPGでも花火が実装されたときは街中で散々花火を撃ち散らかし

 その度にドットの2Dキャラだというのにわーきゃー言いながら大騒ぎして遊んだことを思い出す。

 

 思い思いに花火を持っては振り回し、円を描き、花火を堪能して遊ぶ。

 

「こんな風景、みれるんだね。」

 

 そういってシゲの横で花火に火をつけるのはハナである。

 

「時代の進化だな。」

 

「そういう意味じゃないよ。50年前にあんなに馬鹿みたいにMMOをやったメンツがまた集まって馬鹿になれるんだなって。」

 

「言葉を紡ぎ、呪となりて、魔法となる。」

 

「これも魔法?」

 

「かもな。」

 

「50年前に、もう私達は魔法にかけられていたのかー。」

 

「一人や二人は欠ける可能性もあったとは思うけどな。」

 

「なんかね、70歳近くなった時にみんなシゲの言葉を思い出したんだって。澄ちゃんもステファも誠もペインも俊也も。」

 

「ハナは違うのか?」

 

「私は『50年後!』って壁に貼ってた。」

 

 ふふっとシゲは笑う。

 

「笑うのは酷くない?」

 

「いや、部屋の壁にそんなもの貼ってあったら知らない人から見たら異常だなって。」

 

「『東大合格!』とか『1日12時間勉強!』とか貼ってあるじゃん。」

 

「めっちゃ昭和だな。今じゃ家族写真すら飾らないというのに。」

 

「風情ってそういうもんじゃないの?」

 

「デジタル化、DX化、AI化、仮想化。まぁ風情はないわな。短歌の季語にもなれん。」

 

 そういって二人はくっくっくと笑う。

 

「おーい! 蛇花火するぞー!」

 

 俊也が手持ちの花火をほぼ使い終わり、花火の締めともいえる蛇花火を始めると声をかける。

 蛇花火を見ながら、のんびり線香花火をする。

 そしてただただ下品な蛇花火の動きを見てゲラゲラ笑う一同だった。

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