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044 基礎の呪い~木編①~

「みんな頑張ってるなー。」

 

 素直な俊也の感想である。

 そろそろ自分の番なのだろうと予測はしている。

 なぜならば残った陰陽五行では『木』が最後になるからである。

 陰と陽についてはあの二人ならば問題ないだろうと楽観している。

 

 ここで一人だけ負けるわけにはいかないのである。

 とはいえ、基礎盗賊のスキルレベル上げに真剣に取り組んでしまった結果

 基本的にスニーキングで歩くし、足音はほぼ無音で歩く癖がついてしまった。

 よって歩行速度はゆっくりなのである。

 ただ、LAOは案外ゲーム然としている節があり、他のメンバーを見る限りいきなり横からトラップが仕掛けられていたりする事がなさそうである。

 

 と、思っていたのもつかの間

 明らかに怪しい通路。見ただけでわかる。罠があるのが肌で感じられる。

 各個解除か、走り抜けるか。

 足元をよく見ると細い線が張られている。俊也は慎重にその糸の先を追う。

 岩に隠れた糸の先にあったものは……

 

「おいおいおいおい。まてまてまてまて。C4か? C4だよな? 正気か?」

 

 LAOを甘く見ていた。

 中世ヨーロッパを舞台としているから、その分罠も甘いだろうと。

 例えば落とし穴や、刃物が飛び出してくる壁。

 そんなものを想定していたのに目の前にあるのは近代武器であるプラスチック爆弾のC4。

 爆弾解除スキルはないものの、『宝箱開錠』スキルを代用するとあっさりと『トラップ解除』として新スキルが登録される。

 

「俺だけこんな感じなのか……?」

 

 ここから先は注意をいくら払ってもいいレベルである。

 床、壁、天井に至るまでどこに何が仕掛けられているかわからない。

 少し進むと壁には無数の槍が出てくる箇所があり、まずは小石を拾って対象の床へ投げ込むとジャキッと音がして左右の壁から無数の槍が飛び出してくる。

 範囲は広く、槍と槍の隙間もほとんどないため躱せない。

 

 俊也は致し方なく助走をつけると、床ではなく壁を走ることでそのゾーンを超える。

 そうするとあっさりと『軽業』のスキルを手に入れる。

 

「俺だけ違うじゃないか……。」

 

 なんとも俊也は歯がゆい。

 他の仲間が苦労し、考え、試行し辿り着く先が新スキルであるのに対して

 俊也の場合は道中をクリアするだけで新スキルが入手出来てしまっている。

 そのお手軽さになんともやるせなさを感じているのである。

 

 そして次にあるのはあからさまな魔方陣が床に描かれている。

 何ともちぐはぐな世界観。

 罠の類ではなく、どうも純粋な転移装置のようであるが流石に魔方陣を読み取る能力は俊也にはない。

 ただ、魔方陣の周囲に罠が出てくる要素がないというのがわかるだけだった。

 

「まぁ、ここまで来たら退くこともできんしな。」

 

 そう呟くと俊也は素直に魔方陣の真ん中へと歩みを進める。

 魔方陣は俊也を感知するとまばゆく光り、俊也を転移させる。

 そのまばゆい光が消え、俊也は自分が立っている場所を認識する。

 

 そこは真っ白な通路。幅2メートルほどのただの通路。

 10数メートル先にドアがあるのがわかる。

 自分の背後は壁。逃げ場所はない。まっすぐ進んでドアを開けるのが正解だというのはわかる。

 ただ、俊也は動けない。一歩も動くことができない。

 動けば即座に罠が発動することを知っているからである。

 

 2000年代の映画でよくあった、レーザーが迫りくる部屋そのものなのである。

 視認できるほどの強力なレーザーは無数に迫り、一瞬の判断ミスで俊也を八つ裂きにしてしまうであろう。

 もし仮に……あの有名ゾンビゲームと同一ならば……。

 そんな甘い考えが脳裏をよぎる。

 

 LAOは時に残酷である。

 それはリアルと仮想の境界線を曖昧にし細かい機微にも対応してくる。

 俊也の額から汗が本当に一滴、ぽとりと床に落ちるとビーッという警報音が鳴り始まってしまう。

 

 迫りくるのは一本のレーザー。高さは1メートルほどの高さであろうか。

 この程度であればジャンプで避けるのも、下をくぐるのも問題はない。

 レーザの迫りくる速度はさほどではないため、余裕があると感じしていた俊也に対して、この罠は容赦なく牙をむく。

 俊也まであと1メートルと行ったところまで迫った瞬間、急にX字へとレーザーの形態が変化したのである。

 俊也はギリギリで下をスライディングで抜けて最初のレーザーを逃れる。

 

「なるほど。変化まであるわけね。」

 

 これほど大掛かりな罠が、たった一回で終わるわけがない。

 壁の端まで行ったレーザーはすぐに折り返し、俊也の背後へと迫る。

 俊也はレーザーを背中に感じながら出口方向へと一気に走る。

 振り返りながら確認すると、今回は地上から50センチほどの高さと、1メートルほどの高さで二本のレーザー。

 俊也はレーザーとほぼ同じ速度で出口まで走ると、出口の壁を蹴って背中を逸らしながら棒高跳びの要領で二本のレーザーを超える。

 

 今度は一気に入り口まで走り切りレーザーを迎え撃つ。

 一度目は変化アリ、二度目は変化ナシ。さあ三度目はどう来る?

 高さ1メートルでまっすぐ来るレーザーが一本……いや、等間隔に後ろに二本。合計三本。

 もし罠を作ったやつの性格が、自分と同じだとすれば……。

 

 やはりレーザーは俊也の1メートル手前で変化する。

 最初のレーザーはX字に変化。二本目はY字に変化。三本目はZに変化する。

 俊也はX字は前回同様下を抜ける。続いて二本目は右下に寄って避ける。

 そしてそのまま、右の壁を蹴ってジャンプして壁に張り付くようにZ字の左隙間を超えていく。

 Y字からZ字まで右下待機がよさそうなものであるが、小さくジャンプするというのは案外難しい。

 さらにZ字の場合は上にもレーザーがあるのでその隙間をかいくぐるのは大変である。

 結果として右壁から左壁へ勢いをつけて一気にジャンプしてしまったほうが効率的なのである。

 

 レーザーをかいくぐると、ガシャンと音がして出口のロックが解除されたことがわかる。

 俊也は出口に近づき、罠がないことを確認するとレバーハンドルを用いて重いドアを開ける。

 その先にはようやく広い広間があり床には無数の宝箱が並んでいる。

 

「やあ、よく来たね。基礎盗賊の試練を始めようか。」

 

 そういってひときわ巨大な宝箱の上で寝ていた人物がむっくりと起き上がる。

 至ってどこにでもいそうな普通のおじさん。

 それが俊也の第一印象だった。特別な偉人や英雄であるようには見えなかった。

 

「俺ぁ……。いや、俺のことはいいか。語るのも面倒くせぇ。」

 

「で、宝箱使うのか?」

 

「まぁその辺は実況と解説に仕事させてやろうや。」

 

 そういっておっさんは不敵な笑みを浮かべる。

 

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