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一話 皇子の選択 その二

他サイトに掲載したものを改稿して連載しております。毎日8:00、21:00の二回更新!

 洛都 宮廷


「皇子、これは一体……!」


 李陵国は重たい体を揺らしながら前を行く男に声をかけた。手に握っているのは陛下直々の勅命だ。目の前のすっと背の高い男が振り返った。


「どうした、陛下の命が不満とでも」


 振り返ったのは第二皇子景だ。その目は相変わらず静かだが、わずかに口元に笑みが浮かんでいる。李陵国は、心の中でぎりぎりと歯噛みしながらも、なんとか冷静を保つ。


「この勅命、それがしには到底無理です、皇女の身代わりになどなれるはずがありません」


 景が李陵国に向き直り、その姿を見下ろす。


「そなたの用意した輿入れの行列が途中で戻ってきた、今度はそなたが輿入れの馬車に乗って最後まで見届けよというだけの話、それの何がおかしい?」


「しかし、前回はそれがしのせいではございません、あれは賊が!」


「ならば今度は警備を厳重にしよう、わたくしが知る限りの精鋭で守る……前回とは違ってな」


 今度こそ第二皇子景ははっきりと微笑んだ。侮蔑の笑みだ。


 それでは囚人車ではないか……


 しかし李陵国はもう何も言えなかった。


 こやつを皇太子にと考えたのは間違いだった……


 もうここには戦場で肩を震わせていた青年の姿はない。武力に勝るものは宮廷で力を発揮できないことがある。もちろんその逆もある。第二皇子景はまさにそれであった。


「ははっありがたき幸せ」


 李陵国はそう言ってひざまずくしかない。しかし、その顔にふと笑顔が浮かんだ。


 ならばこちらもそれなりの手を打とうではないか……


 李陵国は立ち上がると、ある場所と急いだ。


 *


 そのすこし後のことである。


 第二皇子景はまた障子越しに話をしていた。相手は皇帝付きの宦官高賢である。


「やはり、李陵国は我が后のもとに来たか」


『はい、李宰相はお妃様の叔父でまた宦官、わたくしには止めることは……』


 景はため息をついた。


 后選びなどあの頃は気にする暇などなかったからな……


 景は息子祥の顔を思い浮かべる。まだ七歳、だが十分に李陵国の駒になる。ふと息子祥の顔に幼い時の淑の顔が重なる。


 かわいそうなことだ……あの年で政争に巻き込まれるとは……


 しかし、それが宮廷というものなのだ。景は心を鎮め、目の前のことに集中する。


「あるものからふたりが無事との知らせが入った。どうやら峠を超えるらしい、その先は天涼だ」


『それは!』


 高賢が喜びとも驚きともつかぬ声をあげる。


「わかっている、あの峠はかなり厳しい、しかしあのものなら大丈夫だろう」


 高賢がうなずくのを感じる。


「それについてはあるお方にまかせる、お前には調べて欲しいことがある」


『ははっ……』


 李陵国の息の根を一気に止める何かを……


 景はひとりうなずいた。

次回は21:00更新!

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