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後宮もふもふ事件手帖  作者: 高岩 唯丑
珊瑚の宝石

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チーヒ様に返してほしい

 中を進んで行き牢屋の前に立つと、中にぐったりとしたチュンジャオがいた。かなり衰弱しているらしく、心の臓の鼓動が弱くなってきている気もする。それなりの歳だから、牢の中で過ごすのは精神的にも身体的にも堪えるのだろう。


「チュンジャオさん」


 カイレンが心配そうに声をかけた。それでやっと、私達の存在に気づいた様に顔をあげる。


「カイレン様」


 声もかすれて、か細い。一応笑顔は浮かべているが、明らかに無理をしているのが分かる微笑みだった。ろくに審議せずに有罪ですぐに片付けられてしまう恐れがあった訳だが、そうではなくても持ちこたえられそうにない気がする。急がなければいけない。


「聞きたい事があります」


「……何でしょう?」


「シーリウデンの柿を取った時、その柿の木の実は、取った物を含めてどんな状態でしたか?」


 チュンジャオは不思議そうな表情を浮かべた。何度も言っているのにどうしてだろう、という感情だろうか。だが確認したかった。可能性を潰すために。


「全てしっかり熟していましたが」


「全てですか?」


 念を押すように問いかけると、チュンジャオは深く頷いて返してくる。自信があるという感じだ。もちろん嘘の匂いもしない。


「そう、ですか」


 やはり受け答えに問題は無い気がする。到底、精神を病んでいるようには見えない。


 実際に実っていた柿の木はすべて青かった。シーリウデンの者たちも、何も言っていなかったという事は、ずっと青い柿がなっていたという事だ。熟していた物が、最近急に青い柿に変わったと言う様な事は起こっていない。


 ソンジュン達はチュンジャオが青い柿を出したらしいと聞いた。しかし、チュンジャオは熟した柿を取り、熟した柿をだしたと言っている。前回牢に来た時のチュンジャオの言葉が蘇る。


「確かにあの柿は赤くなっていたのに、どうして帝とチーヒ様は」


 あの時は意味が分からなかったが、もしかしたら。


「もう一つ質問です、柿を出した時、赤かった柿が青くなったのを見ましたか?」


「? ずっと赤かったですが」


「……ありがとうございます」


 これで可能性が高くなった。だが、ただまだ決め手に欠けている。柿に何かの仕掛けがされていた可能性は、まだ捨てきれていない。


 しかし、仕掛けをしたのであれば、大変な作業だ。柿の木は隠れている場所ではない。作業なんてしていれば、確実に誰かが見ていただろう。


「あの」


 考え込んでいた所にチュンジャオの声が聞こえる。辛そうに腕を持ち上げ、懐から何かを取り出した。それにカイレンが反応する。


「これを、この珊瑚の宝石をチーヒ様に返していただけますか?」


「宝石、ですか」


 受け取るか迷ったのか、戸惑いの混じった声をあげたカイレン。もう死を覚悟している様な行動だと感じたのだろう。ややあって宝石を受けとる。


「これが、珊瑚ですか?」


 宝石に目をやったカイレンが戸惑の声をあげた。

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