歓迎
小さく頭を上げながら屋敷の方に向かっていくソンシャン。それに続いて、ジュシャンとメイシャンも歩き出した。
とりあえず、何か手掛かりがあるかもしれないと思い、庭園の中をうろつく事にする。でも結局この辺りに関係あるものは無い様だ。当たり前といえば当たり前である。やはり問題の柿の木を見ない事には始まらないだろう。
そうしていると、遠くの方で私の名前を叫んで疾走している人がいる事に気付いた。こっちに向かってきている。チーヒの声だと思う。
「シャオグー! 来てくれたのか! 嬉しいのじゃ!」
目の前まで走ってきたチーヒが、私の両手を握り締めて上下に振る。すごい興奮している様だった。
「信じておったのじゃ! あの腹黒泥棒猫なんかの所から、妾の所に来てくれることを!」
なんか侍女の職をこちらに移したような言い方をする。
「調査に来ただけですから」
調査の部分を一応強調しておく。あんな人だが、メイユーの事を信頼している。彼女の侍女をやめる気はない。
「チーヒ様、はしたないです」
遅れてやってきたソンシャン達が、息を切らしながら追いついてきた。体力がある侍女よりも体力があるらしい。確かに屋敷の中で大人しくしている印象はチーヒにはない。山の中を駆け回って遊んでいそうだ。
「何を言っておるのじゃ! チュンジャオの一大事なのじゃ! そんな事を気にしていられないのじゃ!」
対面を気にしない物言い。普段からこうなのか、一大事だから取り乱しているのか、どちらか分からない。少なくともチュンジャオを助けたいという気持ちは本物らしい。
「柿の木を見に来たのじゃな! こっちじゃ! ついて来るがいい!」
チーヒは私の右手を握りしめ直すと、ぐいぐいと引っ張る様に歩き始める。
「チーヒ様、シャオグー様のご迷惑に」
ソンシャン達のたしなめる声に、聞く耳を持つ様子もない。これは諦めた方が良さそうだ。
「大丈夫ですよ、このまま行きましょう」
ソンシャン達に苦笑を見せて、チーヒの後に続く。チュンジャオを心配する心に免じて、文句は言わないでおこう。
しばらく敷地内を進んで行くと、柿の木がある場所までやってきた。庭園の中にあるのではなく、中庭の方に柿の木はあった。屋敷の渡り廊下に面していて、屋敷からも眺める事もできるだろう。誰かが細工や仕掛けをしていれば、確実にバレてしまう位置だ。もっと見え辛い位置にあると思っていた。
それからもう一つ、予想外の事があった。




