ヨウズデンは自由人の集まり
怪しい人物がいたかもしれないと自覚したからだろう、ある程度明るくなっていた三人の表情が少し暗くなる。
「それからもう一つ、シーリウデンに植えられている柿を見せてもらう事は出来ますか?」
「はい、チーヒ様にお伺いしなければいけませんが、おそらくは」
頼んできておいてダメという事は無いだろう。
「出来れば手伝いが終わった後に、シーリウデンについて行ってもよいですか?」
「はい」
「では、準備に集中しましょう、あまりおしゃべりばかりしていられません」
そこまで言うと、私はチラリと視線を横に流す。見知らぬ宦官が怪訝な表情でこちらを見ている。それに気づいた三人が「そうですね」と苦笑した。
「疲れた」
今日のお勤めが終わり、約束通りシーリウデンに向かっている。その最中にそんな事をもらしてしまった。最近こればかり言っている気がする。そして、ソンシャンを含めて三人は苦笑するだけだった。一緒に愚痴を言う気はない様だ。
「シャオグー様は自由ですね」
「自由?」
自由といわれて、ミンズーやユンを思い浮かべる。あんな風に見えているのだろうか。
「侍女服ではないですし、疲れたなんて口にされて」
「疲れたものは疲れたのですから、そう言っただけです」
「……侍女が疲れたなんて言えば怒られてしまいます……疲れていてもそれを見せないようにするべきだと教わりました」
それで自由か。私もヨウズデンの自由さに染まってきているらしい。ああはなるまいと決めていたのに、すこしショックだった。改める気はないのだが。
「その心構えを教えてくれたのは、チュンジャオ様ですか?」
「はい、でも厳しくではなく優しくですよ? 他の側妃様の侍女でしたら、折檻が普通ですので」
そんなに恐ろしい事がまかり通っているのか。メイユーとチーヒはかなり優しいという事だ。折檻される事などない。
そんな話をしているうちに、シーリウデンにたどり着いた。初めて他の側妃の住まいに入る。と言っても大きく変わるところはない様だ。シーリウデンの建物や今見える範囲の庭園は、ヨウズデンと同じ物である。しかし、主によって趣は変わるのだろう。シーリウデンには煌びやかさがない気がする。
「えぇっと」
敷地に入ってソンシャンが迷っているらしい声をあげる。おそらく客室に通すべきか、迷っているのだろう。チーヒの助っ人という事は客人扱いでもいいだろうし、一介の侍女にその対応でよいかという疑問もある。少なくとも三人とチーヒは偏見はなさそうだが、獣憑きを嫌がる者もいるだろう。
「客室でなくともいいですよ、さすがにですし……ここら辺にいるので」
私の言葉にソンシャンが少し安心した声で返してくる。
「それでは、すぐに戻ってきますので、しばしお待ちを」




