助けたい理由
「良かったのじゃ! ありがとう! シャオグー!」
何かを言おうとしていたメイユーを遮るように、チーヒが飛びついてくる。別にチーヒの為にやってる訳ではない。いや、カイレンの為ではない。断じて。
「気になるから、です……あくまで」
顔を胸にうずめてくるチーヒの両肩を押し返しながら、そう声をあげる。勘違いされても困るから、ちゃんと否定しなければ。そう思い言葉を重ねようとした所に、メイユーの少し低い声が響く。
「……忙しいのよ、ヨウズデンは、シャオグー」
「さっきからグチグチうるさいのじゃ! 腹黒泥棒猫!」
さっきまで私の胸に顔をうずめていたチーヒが、そんな事を言いながら私を自分の背中に隠すように立つ。
「は?! なによ! 腹黒泥棒猫って!」
チーヒにすごい勢いで言い返すメイユー。それから立ち上がって、チーヒの元にずんずんと進んでくる。それに応戦するようにチーヒも私から離れて対峙した。ギャーギャーと二人で何かを言い合うのをしり目に、カイレンの側に移動する。
「外へ」
「わかった」
ここでは話をするのは難しいので、カイレンを連れ出して部屋の外に出た。
「シャオグー、ありがとう」
「いえ……でもカイレン様がどうして」
正直な所、侍女頭などカイレンからしたら助ける義理などないはずだ。だが先ほどの表情は、助けを懇願する思いがにじみ出ているような、そんな感じがした。
「チーヒ様の侍女頭、春嬌さんには世話になりっぱなしなのだ」
世話になった。真面目なカイレンは、それだけで助けようとする理由には十分という事だ。でも自分では何が何だか分からなかった。そんな所だろうか。
「……助ける義理なんてない、とかメイユー様は言っていましたが、何と冷たい人なんでしょうか」
つい顔を左右に振ってしまった。本当に冷たい人だ。信じられない。
「ただ世話になったから助けたい、という人の為に、なぜ動けないのでしょうね、ああはなりたくないです」
「……シャオグーも助けてくれたメイユー様の為に働いている、同じ様に考えてくれると思っていた」
「グッ」
なんの曇りもない瞳と言葉。ちょっと心が痛いのは、どうしてだろう。
「どうした?」
「いえ、なんでもありません」
「……それにメイユー様は冷たくはない」
少し微笑んだカイレンがそう口にする。まぁ、ヨウズデンの仲間の負担を、ひいては私の負担を一番に考えてくれたのだろう。部屋から聞こえてくる「あんたの事が気に入らないから断るって言ってんのよ」というメイユーの言葉を聞かない様にして、頷いて見せた。
「早く調査を始めなければ、忙しい合間に何とかしなければいけないので、ゆっくりやってられません」
「……そうだな」




