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後宮もふもふ事件手帖  作者: 高岩 唯丑
珊瑚の宝石

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74/90

助けたい理由

「良かったのじゃ! ありがとう! シャオグー!」


 何かを言おうとしていたメイユーを遮るように、チーヒが飛びついてくる。別にチーヒの為にやってる訳ではない。いや、カイレンの為ではない。断じて。


「気になるから、です……あくまで」


 顔を胸にうずめてくるチーヒの両肩を押し返しながら、そう声をあげる。勘違いされても困るから、ちゃんと否定しなければ。そう思い言葉を重ねようとした所に、メイユーの少し低い声が響く。


「……忙しいのよ、ヨウズデンは、シャオグー」


「さっきからグチグチうるさいのじゃ! 腹黒泥棒猫!」


 さっきまで私の胸に顔をうずめていたチーヒが、そんな事を言いながら私を自分の背中に隠すように立つ。


「は?! なによ! 腹黒泥棒猫って!」


 チーヒにすごい勢いで言い返すメイユー。それから立ち上がって、チーヒの元にずんずんと進んでくる。それに応戦するようにチーヒも私から離れて対峙した。ギャーギャーと二人で何かを言い合うのをしり目に、カイレンの側に移動する。


「外へ」


「わかった」


 ここでは話をするのは難しいので、カイレンを連れ出して部屋の外に出た。



「シャオグー、ありがとう」


「いえ……でもカイレン様がどうして」


 正直な所、侍女頭などカイレンからしたら助ける義理などないはずだ。だが先ほどの表情は、助けを懇願する思いがにじみ出ているような、そんな感じがした。


「チーヒ様の侍女頭、春嬌チュンジャオさんには世話になりっぱなしなのだ」


 世話になった。真面目なカイレンは、それだけで助けようとする理由には十分という事だ。でも自分では何が何だか分からなかった。そんな所だろうか。


「……助ける義理なんてない、とかメイユー様は言っていましたが、何と冷たい人なんでしょうか」


 つい顔を左右に振ってしまった。本当に冷たい人だ。信じられない。


「ただ世話になったから助けたい、という人の為に、なぜ動けないのでしょうね、ああはなりたくないです」


「……シャオグーも助けてくれたメイユー様の為に働いている、同じ様に考えてくれると思っていた」


「グッ」


 なんの曇りもない瞳と言葉。ちょっと心が痛いのは、どうしてだろう。


「どうした?」


「いえ、なんでもありません」


「……それにメイユー様は冷たくはない」


 少し微笑んだカイレンがそう口にする。まぁ、ヨウズデンの仲間の負担を、ひいては私の負担を一番に考えてくれたのだろう。部屋から聞こえてくる「あんたの事が気に入らないから断るって言ってんのよ」というメイユーの言葉を聞かない様にして、頷いて見せた。


「早く調査を始めなければ、忙しい合間に何とかしなければいけないので、ゆっくりやってられません」


「……そうだな」

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