カイレンの為ではないもん
「シャオグー」
突然声をかけられて、少し驚いてしまう。メイユーの声だ。なぜか小声で声をかけてきている。おそらく私かミンズーくらいしか聞こえないだろう。そして、こちらからは声をかけられない。
「チーヒと帝は子供の頃から両想いなのよ、だからお願いを聞いてもらえるの」
少し不機嫌そうな声だった。それにしても、そういう事だったか。しかも子供の頃からの仲という事は、チーヒは身分が高いのかもしれない。第三側妃という立場も何か理由があるのだろうか。いろいろ考えていると、メイユーが話を続ける。
「断っていいわよ、私達に助けてやる義理はないわ」
同じ意見だ。私も同じ事を考えていた。メイユーの後押しがあれば心置きなく断れる。私はお断りしようお、チーヒに体を向ける。そうして言葉を発しようとしたその時、それをカイレンに遮られた。
「大変だと思うが」
今まで黙っていたカイレンは、こちらに顔を向けていた。真剣な顔つき。
「やってもらえないだろうか、シャオグー」
なぜカイレンが、そんな風に頼むのか。分からない。いや、どうせ断るのだからそれを知っても意味は無いだろう。私はもう一度口を開こうとする。
「頼む、シャオグー」
またカイレンの言葉で遮られた。そんな真剣な顔で頼むのは卑怯である。卑怯者め。ばーか。
「……わかりました、やりましょう」
私の方がばかだった。なぜ抗えないのか。いや、抗うってなんだ。別にカイレンの為にとかじゃない。そんなんじゃないもん。
「ちょ、シャオグーなんでよ?」
予想外だったのだろうか。私の言葉を受け入れられないという感じで、メイユーが立ちあがって抗議の声をあげた。自分でも受け入れられていない。私はこんなにバカな子だったのか。
「べっ、別にカイレン様の為とかそういう事ではないですが?!」
聞かれてもいないのに、余計なことを口走ってしまった気がする。
「もしかして、カイレンに頼まれたから」
「だから、違いますが!」
メイユーの言葉を即座に否定する。このままではマズイ。もっともらしい事を言わなければ。それから失敗を取り返すために思考を巡らせて、声をあげる。
「ふ、普通に考えたら、青い柿を出すなんておかしいですから、気になって」
帝にそんな事をしたらマズイ事になるのは、正常な判断能力があればわかるはずだ。気に入らないなら、もっと判りづらい方法や、陰口にしておくだろう。自分の命を守るために。
毒殺をするつもりだったなら、お粗末すぎる。青い柿で人は死なないし、死ぬとしてもそもそも食べさせるのは至難の技過ぎる。




