助けてほしいのじゃ!
乗り込んできたチーヒを何とかなだめると、客室に押し込むように移動させる。こんな風に鼻息を荒くして、カイレンがいるにしてもお供も連れずに乗り込んでくるとは。これはよほどの事があったという事だろうか。誰か殺されでもしたかもしれない。それぐらいの剣幕と勢いだ。
メイユーとチーヒが対面に座る。チーヒは私に用事があるらしいが、さすがに私が対面に座る訳にもいかない。そんなわけで代わりにメイユーが話を聞くという形に落ち着いた。
「申し訳ありません」
なぜかカイレンが申し訳なさそうに謝罪の言葉をあげる。おそらく止められなかった事を謝ったのだろう。チーヒがその言葉に反応して、メイユーに怒鳴る様に声をあげる。
「カイレンを怒るでないぞ! ファンヒよ! 妾が悪いのじゃ!」
自分が悪いという事は、ちゃんと自覚しているらしかった。それならまだ良い方である。それからメイユーが口を開こうとした瞬間「それより!」とチーヒが言葉を重ねた。言葉を遮られたメイユーが少し不機嫌そうに眉をひそめる。
「シャオグー! 妾の侍女頭を助けてほしいのじゃ!」
この人は一呼吸置くという行動ができないのか。それともそれだけ焦っているのか。
「……侍女頭ですか」
その侍女頭を助けたくて、気持ちが先行してしまっているという事らしい。侍女頭の為にここまでするとは、少しメイユーと通じるところがありそうである。
「助けてほしいのじゃ! 頼むのじゃ!」
そこまで言って、チーヒは机に頭を打ち付けるのでは、と思うほどの勢いで頭を下げた。
「ちょっ、待ってください、状況が全く分かりません、まずは状況を説明してもらえませんか?」
礼を尽くしている暇もなく、捲し立ててくるチーヒに少し乱暴に問いかける。助けられるか分からない。相手が相手なだけに、安請け合いをして助けられなかった場合、マズイ事になりかねない。
「まぁまずは落ち着いて、チーヒ様、お茶でも飲んでください」
メイユーがお茶を勧めると、目の前のお茶を一気に飲み干す。落ち着きを取り戻すどころか、鼻息が荒くなっている気がする。お茶程度で落ち着いていればここに来るまでに、冷静になれただろう。
これはどうにもならないと思ったのか、メイユーはカイレンに視線を送った。カイレンもそれに頷いて返した後、チーヒに問いかける。
「チーヒ様、もしよろしければ、私が事情を説明申し上げてよろしいでしょうか?」
「わかったのじゃ!」
自分がまともに事情の説明をできない、と理解しているらしい。チーヒの了解を得たカイレンが、現在の状況を説明してくれた。




