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後宮もふもふ事件手帖  作者: 高岩 唯丑
ユンの希望

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守る理由

「少し気になったんですが」


「ん? なんだ?」


 少し元気がない感じがする。さすがに良い思いではない事を話すのは、誰だって堪えるものだ。


「どうして、メイユー様を守ると決めてるんですか? ユンなら獣憑きになったとしても、危ない目に合う事もなかったでしょう……助けられたという事では無いのなら恩も感じてないはず」


 私の言葉を聞いてユンが面白そうに笑い始める。そんな面白い事を言ったつもりはないが。ひとしきり笑うと、ユンが話し始めた。


「確かに何も危ないことはなかったよ、腑抜けばかりだったな、睨みつけてきたりしたけど、こっちが睨み返してやるとすぐ小さくなってどっか行っちまう」


 また少し笑うユン。笑える状況ではと思うが、ユンにとっては大したことではなかったのだろうな。


「だからシャオグー達みたいに、危険な所を助けられたとかはないな」


「ではどうして?」


 問いかけに対して、少し悩むようにするユン。どう言ったらいいか思案しているだったが、黙っていても仕方がないという感じで探り探り口を開く。


「……メイユー様に後宮に連れてこられて、最初はなんとなく過ごしてたんだよ、恩なんてもちろん感じてなかったさ……でもなぁ」


 そこまで言うと、突然私の頭を少し乱暴に撫でる。


「ちょっ、なんです急に!」


「いや、よく考えればお前たちのおかげだなって」


 何とかユンの手を掴んで抜け出す。それから乱れた髪を直しながら言葉を返した。


「私達のおかげ?」


「あぁ、メイユー様をみんなが慕ってるだろ? それこそ命をかけようとするくらい」


 思い当たる節がある。チュウが熱を出した時に、そういう事を誓った。ミンズーも然りだろう。毒見役という命がけの仕事に名乗り出た。匂いで判別できるとしても、万が一という事がある。命を懸けているのだ。


「その顔は心当たりがあるな、ははっ」


「……まぁ」


 珍しく鋭い。


「みんながそうやってメイユー様を慕ってるのを見てな、この人はみんなに必要な人なんだと思った、今まで出会った人だけじゃなくて、これから出会う人のためにも、この人はいなくなっちゃいけない人だって、何としても守らないとってな」


 だからユンはメイユーに仕えているのか。忠誠心とかそういう物ではないが、それに劣らない物を抱いて側にいるのだ。


「あぁ、もう暗くなり始めたな」


 照れ隠しをするようにユンが空の方に視線を向ける。確かに暗くなってきている。


「そろそろ行かなければ」


 少し休憩しすぎてしまった。急いで立ち上がると、ユンも一緒に立ちあがった。


「じゃあ、アタシもそろそろ終わりにするか」


 剣舞の練習を許されているが、侍女の仕事を完全にしなくていいという訳ではない。


「では行きましょうか」


 二人は少し早足で屋敷に向かった。

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