決まり
カイレンが黙ってしまったのを見て、待っている間の話題のつもりなのかメイユーがユンに問いかける。
「というか、剣舞なんてできるの? 初耳だわ」
ただのケンカが強い人というイメージしか、ユンには抱いていなかった。剣舞についてよくわからないが、技術がいる事ができるのは少し驚きだ。
「まぁ、そこまでできるか分からないんだけどな、この機会に挑戦が、してみたい、んです」
ユンが真剣なまなざしをメイユーに向ける。今まで見た事がない表情だった。それを受けてメイユーは少し目を見開いた後、チュウの方に顔を向ける。
「チュウさん? 一人侍女が抜けるのは問題ないかしら?」
「え? えぇ大丈夫ですが」
ユンが抜けるなど、何の問題もない。基本的に仕事を増やしているのだから、むしろ居ない方が良いとまで言える。真面目に働いているユンに、それを言うのはさすがに可哀相だが、今回は口実がある。お人好しのチュウは、それを喜ぶような人間じゃないから微妙な表情を浮かべていた。
チュウの言葉を聞いて、メイユーがユンに方に視線を戻した。その顔には笑みが浮かべられている。嬉しそうな笑みだ。
「いいわ、挑戦してみなさいな」
「本当か! あっ、本当ですか……ありがとう、ございます」
嬉しそうに声をあげるユン。敬語を織り交ぜているのと喜びで、なんか変な感じの言葉使いになっている。
「いや、待ってくれ」
話が進んでしまいそうになったところを、カイレンが待ったをかけた。
「勝手に話を進められては困る」
「なに? ダメなのかしら?」
不満そうな表情で、メイユーが文句を言った。剣舞という舞の性質に気付いていない様だ。カイレンはそれに気付いている様だった。
「ダメという訳では」
カイレンは少し歯切れの悪い返事をする。まだ考えがまとまっていないのか、結論が出せていないのか、どちらかだろう。助け舟を出すわけではないが、カイレンが引っかかっている事を代わりに口にする。
「剣舞となると、危険があるかもしれないという事です、襲撃をする可能性があるとか、剣が危ないとか」
「?! 襲撃なんて」
ユンの言葉を、すかさずカイレンが遮った。
「それは、分かっている」
それを聞いてユンは黙り込んだ。さすがにカイレンがユンを疑っているという事ではない。ただ剣を使う以上、危険を考えなければいけないし、銃撃の可能性をどうしても疑ってしまう。客観的に考えて、という事だ。
その場に沈黙が流れた。こればかりはどうしようもない気がする。
「……いえ、大丈夫、私がどうにかするわ」
メイユーが笑顔でそう声をあげた。何か考えがあるという顔だ。
「……本当か?」
「えぇ、大丈夫、私に任せて、ユンは準備を始めなさい」
今にも飛び上がりそうにするのをこらえる様に、ユンが両手の拳を握り締める。
メイユーがどうにかすると言った以上、カイレンはもう何も言わなかった。ヨウズデンはユンが剣舞を踊る事に決定したという事だ。




