ユンの希望
「……それは大変ですね」
これは忙しくなる予感しかしない。チュウがいなければ、乗り切れる気がしない。
「今年はヨウズデンの担当なのよ……まぁ外部の芸人を呼ぼうかなって思ってるけど」
そんな事を言いながら、メイユーが大きくため息をつく。苦労が伝わってくるかのようだ。
「外部の芸人ですか……自分達でやらなくてよいのですか?」
メイユーがそう言っているのだから大丈夫なんだろうか。いや、メイユーの事だから素知らぬ顔で外部の芸人をヨウズデンの人間と言って使いそうな気がしなくもない。カイレンに視線を送ると「問題ない」と頷いた。
「舞を踊るのが定番だが、誰でもできる物ではないのでな」
自分たちでやらなくても良いらしい。
「というか皇后と各上級側妃から手伝いを出すから、そこに舞の練習までやってられないのよ、本当に……」
メイユーが頬杖をつきながら不満そうに呟いた。確かにそれなら外部の芸人を呼ぶのが無難かもしれない。手伝いに舞の練習なんて、倒れてしまう。
「あの……いいか」
なんとなく話が終わりそうな雰囲気になった時、ユンが声をあげた。ユンを見ると少し険しい顔をしている。いや、険しいというより何かを決意した表情の方が適切かもしれない。
「どうしたのかしら?」
メイユーが少し驚いた様子で問いかけた。ユンが話し合いに割って入ってくることは珍しい。大体が皆の言う事に従うという事が多かった。それは流されるというよりも、その度量の広さでなんでも良しとしてしまうといった感じだ。だからこそ驚いたのだろう。それに加えて何かを決意したような表情。なんだろうか。
「それなら……アタシに剣舞をやらせてくれないか……くれませんか?」
ユンは使い慣れない敬語を使う。それだけ真剣という事だろうか。それにしても剣舞か。あまり良い想像ができない。カイレンに視線を向けると、やはり少し渋い顔を浮かべた。
「剣舞……か」
手で顎を撫でるカイレン。やっぱり私と同じような事を考えたらしかった。それに対して、ユンが少し不安そうに言葉を重ねる。
「やっぱりダメか? 神事用の舞じゃないし」
話をよく分かっていなかったのか、ユンが少し明後日の方向の話をする。娯楽的な物でいいのなら剣舞でも良いはずだ。それよりも、問題はそこじゃないと思う。
「……いや、そこは問題ない、娯楽的という観点からしたら、剣舞は最適だろう、問題はそこではない」
カイレンが黙り込む。何かを考えている素振り。同じ事をおそらく考えている。




