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後宮もふもふ事件手帖  作者: 高岩 唯丑
ユンの希望

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息ぴったり

「しょしゅおしょしょうがないからですよ」


 カイレンからの返事はない。しかもすでに手を伸ばしてきている。表情は少し硬い。こういう時くらい笑顔になれないのか。


 別にどうでもいいが、一応耳を倒しておく。もしかしたら、邪魔になってしまうかもしれない。いや、どうでもいいのだが。尻尾も少し持ち上げておこうか。いや、何を考えているのだ。撫でやすい様にしてやる義理はない。というかどれだけ勿体ぶるつもりだ。カイレンの手が本当にゆっくり進んでくる。早く撫でれ。あっ、いや違う。パパッと済ませたかった。


「待たせたわね、カイレン」


「ふわぁっふ」


 突然メイユーの声が聞こえて、体が強張り変な声が出てしまった。全然足音が聞こえなかった。心の臓の音がうるさかった気がする。それのせいで足音が聞こえなかった。接近に気付けなかった。


 私が固まっていると、離れた所から声が聞こえてくる。カイレンの声だ。


「いえ、待ってなどおりません」


 聞こえてきた声の位置が離れていた。瞬間移動でもしたのか。そちらの方に顔を向けると、カイレンは椅子に座り机に両肘をついて口の前で両手を組んでいる。視線だけメイユーに向けていた。何澄ました顔しているんだ。


「ん? どうしたのシャオグー?」


「な、なにがですか?」


「いつも澄ました顔してるのに、今日は少し顔が火照ってる様に見えるわ、それに」


 そこまで言うとメイユーは少し体を傾ける。私の背中側を覗き込むような形だ。


「なんか、尻尾が逆立ってるわよ」


 落ち着け私。深く深呼吸をする。尻尾の逆立ちもこれで治まる。いつも通りの澄ました顔を浮かべた。


「なんでもありません」


「……それにカイレンも、どうしてそんな顔を隠すような座り方を?」


 確かに顔が半分見れない。動揺しているという事か。


「いえ、なんでもありません」


 というか隠そうとすると、いかがわしい事をしていた様ではないか。ただのご褒美なんでしょうが。それともいかがわしい事に、分類されているのかカイレンの中では。いや体の一部を触らせるのは、いかがわしい事なのだろうか。


「シャオグー、また尻尾が逆立ってきたわよ」


 変な事を考えたら、また逆立ってしまったらしい。急いで深呼吸をする。治まれ私。


「やっぱり……二人とも何か変よ?」


「なんでもありません!」


 私が声をあげると、カイレンも全く同じ事を同時に口走っていた。息ぴったり過ぎて、嫌になる。


「あらぁ、息ぴったりねぇ」


 メイユーがニヤニヤと顔を緩ませた。しかもそれ以上何も問う事なく、カイレンの対面の席に座った。それ以上何もしてこないのがまた嫌だ。

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