家畜の様な扱い
「でも家族のだれも悲しむ事がなくて、その日も変わらずみんなで笑って団らんを過ごしていたわ……私はそれが気持ち悪くて、同じ人間が亡くなったのに」
確かに気持ち悪いかもしれない。心に傷を負ってしまってもおかしくない事かもしれない。
「……刑罰や戦争捕虜の奴隷だった可能性は?」
それならまだ理解はできる。ただ一緒に笑う事は私にはできないが。しかしメイユーは顔を横に振った。
「ちがうわ、一般人だったはずよ、本人もそう言っていたわ」
本当に家畜と同じような扱いだったという事だ。家畜と思い込んでいたという事だ。獣憑きになってしまっただけで、刑罰や捕虜が奴隷に落とされるのと同じ様に扱われる。亡くなっても気にも留められない。理不尽だった。
ついため息が漏れてしまう。胸に気持ち悪い何かが溜まっているようで、それを吐き出したかった。だがそんな事をしても、スッキリする事は無かった。
「……それでね、世の中を変えるなんてできなくても、手が届く範囲だけでも助けられたらって」
それで身分を求めてここまで昇ってきたのか。帝の弱みを握るなんて危険を冒してまで。もしかしたら、その場で斬られていてもおかしくなかった身分の出だったのに。そこまでして私を、獣憑きを助けてくれているのか。
私は自然と跪いてメイユーに頭を下げていた。ごく自然に。この人を信頼し、全てを捧げたいとさえ思う。それを言葉に、態度に示したかった。
「今一度、誓わせてください……私はあなたの為に、この身を捧げたい、私を存分に使ってください」
「まって、やめてよ、そんな事、頭を上げて」
メイユーの困った声が聞こえてくる。困らせたいわけではなかった。すぐに私は体を起こして、立ち上がる。
「すみません」
「……いいのよ、まぁそう言ってくれるのは嬉しいわ、あなたを物のように扱う気はないけど」
少し困ったように微笑んで、メイユーが私の頭を撫でる。何だか申し訳ないことをしたかもしれない。それにらしくなかった気がする。急に顔が熱くなってきてしまった。それをごまかす様に、言葉を絞り出す。
「そういえばっ……チュウさんを侍女として使うのはおこがましいと言っていましたが、どうしてです? メイユー様は下級と言っても貴族ですし」
その質問に、メイユーの表情が明るくなる。というより面白そうにクスクスと微笑み始めた。何か勘違いしていたのだろうか。そこまで考えて思いつく事がある。もしかしてチュウの身分は。




