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後宮もふもふ事件手帖  作者: 高岩 唯丑
プロローグ
5/90

宦官カイレンと働く意思

 美しい顔立ち。と言っても女性に見間違えるような、そんな美しさではない。男性として美しい。カイレンと呼ばれ姿を現した男性はそんな人物だった。


「え?! いつから居たの?!」


 姿を見せたカイレンに驚いてメイユーが声をあげる。


「私が話し始めた辺りですね」


 たぶんそれくらいだった。一応ミンズーの方に視線を移すと、頷いているのが見える。自分でもまだ獣憑きの能力に自信が無かったから、それで自信が持てた。


「ふむ……やはり獣憑きの能力は目を見張るものがある、それに加えて賢い……メイユー様、良い人材を拾いましたな」


 カイレンが部屋の中に入ってくる。ユンとミンズーが何故か少し身構えた。


「人材って、ここで働くかはこの子次第よ」


「……働く?」


 メイユーの発した言葉が信じられなくて、つい聞き返してしまう。それに対してメイユーが微笑みながらこちらに顔を向けた。


「えぇ、ここで侍女になってくれるなら嬉しいし、そうでなくても安全な場所に家も用意してあるわ、そこには何人か獣憑きの人たちがいる、その人たちの様にそこで過ごすのもいいわ……シャオグー、あなたの希望に可能な限り沿うつもりよ」


「そこまで、してもらえるんですか」


 もしかしたらと期待はしていた。でもそれはさすがにと、勝手に諦めていた。


 メイユーの言葉に嘘はない様に感じる。騙されてどこかに売られる事も無いだろう。ミンズーやユンを見ているとここで嫌な思いをしながら働いているという事もない様に思う。本当にこの人は、メイユーは。


「……働きたいです、メイユー様のお役に立ちたい」


 自然とそんな言葉が出ていた。メイユーに恩を返したい。この人の為に何かしたい。そんな思いが心の中に満ちている。


「ありがとう、うれしいわ」


 メイユーがそう言って頭を撫でてくれる。それからふわりと微笑んだ。


「ようこそ、柚子殿ヨウズデンへ、私達はあなたを歓迎するわ」


 そう言ったメイユーに続いて、チュウとメンズ―、ユンが思い思いの声をあげる。うれしい。なんだかお腹の辺りが暖かく感じる。下働きをしていた時に感じた事がない、仲間という感覚が実感をおびる。


「ありがとうございます」


 私は自分が出来る精一杯の笑顔を作った。でも、そこに水を差す様に声が横から入り込んでくる。


「……私も歓迎しよう」


 カイレンの声だった。ツンとした表情。少し冷たささえ感じる。


「私は懐仁カイレン、宦官だ……拾ってもらったのだ、きちんと励め」


 カイレンにかけられた言葉、それに態度。それらのおかげで、ミンズーとユンがカイレンにあまり良い顔をしていない理由がハッキリわかった気がした。

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