愛さえあれば
チンインがグイファに微笑みかける。グイファもそれに応える様に微笑んだ。本当に愛し合っているそれだった。いろいろあったけど、これは良い結末ではないだろうか。
「……これに挫けず、グイファとの子供を妊娠してみせます!」
良い結末だと思った私の気持ちを返してほしい。
「……反省してます?」
嘘をついている事も無い。つまり全く反省していない。というか女同士は子供ができない。なぜそれが理解できないのかこのバカは。
「すみません……ちゃんと言って聞かせるので」
私の少し怒りを含んだ視線に気づいたのか、グイファがそう声をあげる。でも顔が少し嬉しそうだった。それに嘘の匂いがする。そんなつもり無いじゃないか。一緒になってこんなバカな妄想を信じているのか。
「女同士で子供なんて、どうやったらそんな突飛な事を信じれるのか」
さすがに呆れるしかない。ここまで来ると頭が悪いとかそういう事ではない気がする。
「あれ? ……誰かに、愛さえあれば絶対できるって」
突然思い出したようにそんな事を零すチンイン。さすがにそう言われたからって、自然の摂理を乗り越える様な勘違いをするのか。どれだけその人物に陶酔していたんだ。いや、陶酔していたら誰かなんて言い方はしないか。
チンインが突然こちらをじっと見つめてくる。共通点を探っているような、そんな探る様な視線。
「なんです?」
「何だかその人も、耳があったような……獣憑き?」
チンインが疑問を投げかけてくる様にそう口にする。私に聞かれても。
「まぁいいわ、とにかく私はグイファとの子を授かる! 愛さえあればできるはず!」
決意を新たにするように、チンインが両方の拳を胸の前でギュッと握り締める。
「チンイン……」
グイファに至っては、のぼせる様にチンインに熱い視線を送った。その光景を見て、呆れて頭を軽く振ってしまう。
「まぁまぁ」
メイユーが立ちあがると、私の頭に手を置いた。邪魔にならない様に耳を少し倒す。なんだろうメイユーが少しイタズラっぽく笑っていた。
「カイレンが責任を問われなかったんだから、いいじゃない」
「そ、そんな事、気にしてませんでしたが」
カイレンの事なんて気にしていなかった。本当である。でもその言葉を信じていない様でメイユーはよりイタズラっぽく笑う。
「またまた、そんな風に言って、安心したんでしょう?」
「し、してませんから!」
誰も侵入してなかったし、脱走もしていなかったから、カイレンは責任を問われる事は無かった。だがその事に安心する要素はない。
「そろそろ素直になって、撫でてもらえばいいのに」
「あったとしても、撫でさせてあげるだけです、言葉を正しく使ってください」
もう何も言われないようにするために、メイユーから離れた私は部屋と扉まで走る。
「チンイン、グイファ、バカな事を言ってないで、仕事に戻りますよ!」
それだけ言うと、部屋を出る。メイユーはきっとニヤニヤしてるから見ない様にしたかった。
カイレンがどうなろうと知った事ではなかった。安心なんてしていない。断じて。……でも、撫でさせてあげるくらいは、考えてあげなくもない。いついなくなるか分からない訳だし。それぐらいは。




