チンインとグイファ
「私はグイファと恋仲でした、遊びではなく本気です」
「私も遊びのつもりはありません」
二人は恋仲として、体を重ねた。そしてチンインはその度重なる行為でついに妊娠したと信じたのだ。
お互いの気持ちを確かめ合う言葉を聞いて、二人は一度だけ見つめ合った後、こちらに視線を戻す。
「ですが、私達下働きとて帝の物です、いくら同性だとしても帝の物に手を出したグイファはただでは済まないと思いました」
「それであの時、沈黙を貫いたんですね」
「……はい」
しかし、グイファの方は穏やかではいられなかった。妊娠それすなわち男との情事。そんな普通の認識を持っていたグイファは想像した。
自分と恋仲にあるのに他の男とその様な事はしないと信じていた。しかも常に一緒にいるのだから、チンインが後宮をこっそり出ているというのは、時間的に無理がある。だとすれば、帝か、忍び込んだ男に乱暴されたのだと結論付けた。
ちなみに男が苦手というのはグイファの勝手な想像だった。同性の自分と恋仲になったのだから男が苦手なのだと思い込んでいたらしい。グイファに嘘について、それから隠していた事を追及する事でいろいろ分ったのだ。
実際は妊娠していないのだが、まさか自分との行為によって妊娠した、とは思わないだろう。ある意味グイファは被害者だ。そして、チンインは本当に思い込みが激しい。同性で子供ができるはずがないのに、愛があればできると信じ、思い込み妊娠までしたのだ。恋は盲目。愛は盲目。
「……それだけ愛していたのね」
寂しそうな表情でメイユーがそんな事を呟く。帝には何人も女がいて、政治的な思惑もある。愛というのは期待できないだろう。口では愛していると言っていても、内心ではメイユー自身も帝に愛を抱いているか怪しい所である。
「話はわかった」
カイレンがそう口にすると、席から立ち上がる。
「いろいろお願いね」
メイユーの言葉にカイレンが頷くと、部屋を出て行く。チンインとグイファの騒動を上手く収めてくれるだろう。
「分ってると思うけど、これからもここで働いてもらうわよ」
メイユーがチンインとグイファに微笑みかける。ご愁傷様だ。メイユーに捕まったらもう逃げられない。この人腹黒いから。と言っても、メイユーは優しい。獣憑きに嫌な態度や無視をするような事をしなければ、普通の侍女としてここにいられるだろう。
「ありがとうございます……グイファも一緒でよかった」
「別々にされるか、どちらかが罪に問われてどこかに流されるかと」
そういう事もありえたが、きっとメイユーが何かしたのだろう。




