罰をあたえるべきなんです
「うむ」
カイレンが姿勢を変える事なく、それだけ返した。
「シャオグーと申します」
私は小さく頭を下げて自己紹介をする。身分的にはたいして変わらない相手だ。挨拶を返さないのは良くない。
挨拶を終えたのを確認すると「それで」と口を開く。
「何か用か?」
「……はい」
言い辛そうに身をよじるグイファ。催促するのも気が進まず言葉を待っていると、ややあって呟く様に続ける。
「チンインの子供の父親は帝なのですか?」
この後宮において女が妊娠したのだ。そう考えるのが自然な流れだった。おそらく後宮全体にその話は広まっているだろう。ただはっきり否定するだけの証拠もまだない。どうすればいいかと顔を見ると、カイレンが何も気にする風もなく言い放った。
「違う、帝の子ではない」
嘘ではないけど、ここまで堂々と言い切れるとは。何というか、いろいろ潜り抜けてその地位にのぼってきただけの事があると改めて思う。
あるいは堂々と言いきれば、後宮での噂の歯止めになるかもしれない。カイレンほどの高官がそう言ったのだ。その効果は絶大かもしれない。
と言っても、興味本位で聞いてきたのとはどうも違う。グイファの方に視線を戻すと、少し安心した後、険しい顔をして口を開いた。
「……私が殺すので、誰か分かったら教えてもらえませんか?」
「ころ……」
予想外の物騒な話が飛び出してきた。殺すって。少し安心したように見えたのは、帝を殺す発言はさすがにマズイという事を、理解しているからだろう。一応は気が触れているような事は無さそうだ。そうなると、どういう意図の発言なのか気になるところである。
「私刑は認められない、もし罰をあたえるのであれば、然るべき部署で判断を行う」
「罰をあたえるべきなんです」
カイレンの言葉に、グイファは即座に言葉を重ねる。
この言い分を聞く限り、グイファは男が後宮に侵入したと決めつけて話をしているように思う。チンインが後宮を抜け出して妊娠して帰ってきたのであれば、男が罪に問われるいわれはない。理不尽すぎる。少なくともグイファが男に怒っている意味が分からない。チンインに怒っているならまだしも。
「グイファさんは、どうして男を罰するべきだとお考えで?」
「それは……」
何かを考える様にして一度黙ると、ややあって言葉を選ぶように口を開いた。
「チンインはきっと後宮に忍び込んできた男に乱暴されたんです」
「乱暴……同意のない行為だったと」
「はい、きっとそうです」
グイファには自信がある、という感じの勢いだった。だがしかし、違和感がある言葉使いだ。




