自分を卑下するな
「あなたらしいわね……いいわ、知恵を貸してあげて」
「……はい」
仕方がないのでメイユーに向かって、頭を下げて返事をする。メイユーの頼みだ、仕方がない。それからカイレンの方に体を向けて同じようにして見せる。
「私の様な者がお力になれるか、分かりませんが」
本当にそう思ったからだったが、カイレンが眉をひそめる。
「あまり自分を卑下するな」
卑下というか、冷静な分析だったんだが。それにこれまで誰かに知恵を貸すなんてした事がない。単純にやった事がないのだ。
私が何も言えないでいると、カイレンが一度ため息をついてから言葉を続ける。
「まぁいい……ありがとう、よろしく頼む」
カイレンが、こちらに体を向けて軽く頭を下げた。本当に真面目な人だ。私の様な卑しい身分の者に、頭を下げるとは。私を撫でようとしてくる時も、そうしてくれれば。まぁ、撫でさせてあげないけど。
そんな時に、チュウがお茶の用意をして部屋にやってきた。
「失礼いたします」
「ありがとう……カイレンにお茶を出してあげて」
準備を進めるチュウにメイユーがそう促すと、席を立ちあがった。
「? メイユー様は?」
戸惑いの声をあげるチュウに、メイユーが返す。
「カイレンはシャオグーに用事らしいわ」
「あぁ、そういう」
少し残念そうに呟くチュウ。今日のお茶は自信作なのかもしれない。とてもいい匂いがする。これは飲まなければ勿体ない。それに気づいた訳ではないだろうが、カイレンが口を開く。
「お時間が許すのであれば、メイユー様も聞いていただけますか? 確認したい事がありますので」
「確認したい事?」
「はい、詳しい事は話の後で」
メイユーは頷いて、もう一度椅子に座り直す。
それにしても、知恵を貸してほしいという事は事件でも起こったのだろうか。それにメイユーに確認したいとはなんだろう。
ミンズーの毒見が終わった後、メイユーとカイレンの前にお茶が並べられる。とりあえずこれで話を始める準備が整った。話しやすくするためか唇を湿らす様に、カイレンが一口お茶を飲んだ。それから少し表情を暗くして、語り始める。何か良くない事が起こった。そんな感じだ。
「まずは結論から申し上げます……下働きの女が一人、妊娠したとの事です」
その場にいる者が、息を呑むのが聞こえた。
後宮内において、あるいは出入りしている者の中で、生殖能力を有しているのは帝のみだ。この事実がある上で、後宮内で女が妊娠したという事は、つまりそういう事に他ならない。




