決着
「ミンズー、おかしいと思わないですか? メイユー様はどうして普段お香を焚かないのに、今日に限って焚いたのか」
ミンズーがハッとする。気付いたようだ。このお香は甘い香り。余計月餅の匂いをわかり辛くしている。
「メイユー様がこのお香を焚いたんですか?」
誰が焚いたのか考えもしてなかったらしい。まぁ普通に考えれば私達侍女が焚くわけないのだから、メイユーなんだが。
「そうね……そういう気分だったお香を焚いたのよ」
ミンズーに問われたメイユーは、余裕そうに笑みをうかべてそう返した。やっぱりお香の件は、そうやって言い逃れできてしまう。いつもと違う行動は疑う要素になっても、犯行の証明にはならない。メイユーもその事を理解しての余裕の態度だろう。匂いが分かれば、これが嘘だという事が分かるのに。でも外に連れ出せば、私まで危うくなってしまう。
「そういう気分……ですか」
ミンズーが諦めた様に呟く。何とかミンズーを操って、メイユーだけを外に連れ出させて匂いを確認させれば、まだ勝機がある。
「ミンズー、あの……いい方法があります」
遠慮がちな声が聞こえる。そちらを見ると、チュウが小さく手を挙げていた。
「二人を、部屋の外に連れ出して、匂いを確認すればいいんです」
気付かれてしまった。時間をかけすぎて、考える余地を与えてしまった。私もメイユーも犯行の証明はできないが、態度が怪しすぎたのだ。勘の良いチュウにとって、十分すぎる証拠になってしまった。
「問題ありませんよね? 二人とも」
黒い笑みをうかべるチュウ。だいぶ怒っている様に見える。罪を擦り付けようとしていた事まで悟ってしまったかもしれない。
「お、落ち着きましょう」
「ももももう犯人捜しはやめましょうよ、ね、ね! ミンズー!」
私とメイユーはミンズーに掴まれ、部屋から引きずり出される。何とか抵抗しようとしたところで、ユンが私の後ろに回り込んできて背中を押してきた。メイユーの方にはチュウが行った様だ。
「二人だけ逃れようだなんて、許しませんからね」
チュウの恨み節が聞こえてきて、背筋が凍る。見た訳ではないが黒い笑顔を浮かべているのだろう。
抵抗は虚しく、私達はミンズーによって部屋の外に連れ出される。守ってくれるはずのお香の匂いが、虚しく体から消えていくのが分かった。
ミンズーが顔を近づけてくる。それからすぐにメイユーにも同じようにした。それから怒ったようにして、私たち二人をポカポカと叩いてくる。
「ごめんなさい! 我慢できなくて!」
「つい、食べてしまったんです、ごめんなさい」




