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お祖母ちゃんに伝えたいこと

作者: 森川めだか

お祖母ちゃんに伝えたいこと


 僕には、お祖母ちゃんという人が分かるような気がします。

お母さんからお祖母ちゃんの悪口を散々聞かされました。色々聞かされたけど、一番代表的なものを一つ挙げるとしたら、うどんを作ってくれなかったことでしょう。

キヨシさんが風邪の時、お母さんには卵うどんを作ってあげなかったんだって? お母さんも子供だったから「欲しくなるじゃん」ねだったそうだけど、「ヨシコは風邪じゃないでしょ!」って怒られたらしい。あの時のことをお母さんは今も恨んでるよ。

それじゃなくても、お祖母ちゃんとお祖父ちゃんはキヨシさんのことばっかりでお母さんは何度も泣いたって。

未熟児だったとかそのために心臓が悪いとかでお母さんが言い返せるようになった頃には、お祖母ちゃんは「お酒飲んで、死んでやる。私は心臓が弱いんだからね」と言ったそうですね。だけど、今でも元気に生きている。今は施設住まいだけど。

これもまたお母さんから聞いた話だけど、お祖母ちゃんは親族の人から若い頃から「蛇蝎の如く」嫌われていて、何かの法事の時にハンドバッグを取り上げられて、「今日は帰しませんよ」って言われたそうだね。

だけどしばらくして「帰ってきちゃったわよ」ってお祖母ちゃんは帰ってきたんだってね。

そんなこんなの話をお母さんから聞かされても、お母さんはお祖母ちゃんをいかに悪者に見せるかで苦心していたようだけど、でも、僕にはどうしてもお祖母ちゃんが悪い人に思えないのです。あんなにお祖父ちゃんに愛された人がいたでしょうか?

お祖父ちゃんはお母さんに「お母さんが良ければいいんだ」と言って、お母さんは怒っていたよ。

親族の誰よりもシンパシイを感じてました。

お母さんは家の中ではお祖母ちゃんのことをわざと「カズエさん」と呼んでいるけど、自分勝手に生きて、何が悪いのでしょうか?


僕も年を取ってだんだん自分勝手になってきました。

自分勝手な人は、自分勝手な人も許すのですね。

僕はお祖母ちゃんが好きです。お祖母ちゃんの生き方が好きです。

もしかしたら、僕の目指すところにお祖母ちゃんはいたんじゃないか。そう思えます。

何々にならねばならないとか、そうせねばならないと思わない、「楽な生き方」。


お祖父ちゃんが死にそうになった時も「食べなさいよ」とは言ったものの手元には運ばなかったそうですね。お祖母ちゃんはそれの何が悪いのか分からないんだもんね。

お祖父ちゃんが死んだ時に、面会に来たお母さんとキヨシさんに「気づかなかったのよ、気づかなかったのよ」と繰り返したそうですね。

お祖母ちゃんはお祖母ちゃんなりに愛情もあったし後悔していたんだよね。それが他人にどう受け取られようと、僕にはお祖母ちゃんの深い心の底が分かる気がします。

僕の人生は休んだ事がありませんでした。


お祖母ちゃんは若い頃、外国人のように綺麗だったそうですね。その写真を見てみたいものだけど、お祖母ちゃんが亡くなった時に見させてもらえるかどうかかな。

僕もお祖母ちゃんに似ているかちょっと見てみたいんだけど。

僕はだんだん年を取ってきてお祖母ちゃんに似ている気がしてきたよ。小さい頃はただお祖母ちゃんとしか見ていなかったけど、お母さんからある事をきっかけにお祖母ちゃんにまつわる愚痴を散々聞かされている内に、お母さんの思惑通りにではなしに、あ、これも分かる、それも分かる、と僕はお祖母ちゃんの理解者に近づいてきたような気がします。それもお母さんから愚痴を聞かされたからだから、皮肉な話だね。

今度、久しぶりにお見舞いに行くからさ。何年ぶりになるだろう、十何年ぶりかな。

今も言ったけど、僕の人生は休みなしだったんだ。だから、こんなに行くのが遅くなった。

口からはそういう訳で伝えられないけど、似た者同士で会ったら分かるかな? それともお祖母ちゃんのことだからつれないのかなあ?

自分勝手に生きてきたって、人から後ろ指をさされることはない。

誰にも、悪口を言われる筋合いはない。

お祖母ちゃんはそれを誰よりも分かっているでしょう。

これでお祖母ちゃんへの思いは終わりでしょうか? きっとこれを伝えるまで終わらないでしょう。

最後に一つ、愛してるよお祖母ちゃん。


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